脊椎脊髄病学 第3版

脊椎脊髄病学を網羅。新知見を加え、第2版から6年ぶりの改訂。

著 者 岩崎 幹季
定 価 16,500円
(15,000円+税)
発行日 2022/04/20
ISBN 978-4-307-25165-5

B5判・520頁・図数:411枚・カラー図数:7枚

在庫状況 あり

初版・第2版を踏襲し、診断・治療選択における多様性を重視した。総論では脊椎脊髄病に関する普遍的な要点を把握できるように、各論では疾患ごとの理解が深まるよう構成し、頚椎人工椎間板置換術やコンドリアーゼを用いた椎間板内酵素注入療法など、新知見・新症例を多数追加した。脊椎脊髄病学のすべてがこれ一冊で理解でき、脊椎脊髄外科専門医のブラッシュアップのみならず、研修医や興味がある学生にも役立つこと間違いなし。
序章
The Clinical Approach to the Patient
扶氏醫戒之略
はじめに
患者に接するときの留意点
インフォームド・コンセント
脊椎・脊髄病における研修項目
病棟主治医のDo’s & Don’ts

I 総論
1 術前評価
1-1.合併症チェック
1-2.問診
1-3.診察
1-4.評価・検査
 1.頚椎疾患のX 線評価
 2.腰椎疾患の評価
 3.脊柱変形の評価
 4.靱帯骨化症の評価
 5.リウマチ頚椎の評価
 6.膀胱機能の評価
 7.骨粗鬆症の評価
1-5.一般的注意
1-6.神経学的検査
 1.筋トーヌス
 2.筋力評価
 3.深部腱反射
 4.表在反射
 5.病的反射
 6.感覚障害の診かた
 7.冠名徴候
1-7.造影検査・ブロック注射
 1.硬膜外ステロイド注射
 2.脊髄造影
 3.腰椎神経根造影・ブロック
 4.頚椎神経根ブロック
 5.椎間板造影・椎間板穿刺
付.公費負担医療制度に関して
2 脊椎・脊髄疾患の局在診断
2-1.高位診断
 1.高位診断の概要
 2.高位診断の実際
2-2.横位診断
 1.横位診断の概要
 2.横位診断の実際
3 術前準備
3-1.合併症再確認
3-2.貯血準備
3-3.病歴整理
3-4.手術準備
4 術後管理
4-1.術後疼痛管理
4-2.術後感染予防
4-3.術後全身管理
4-4.術後神経症状のチェック
4-5.術後血腫の処置
4-6.術後髄液漏の処置
4-7.胸腔ドレーンの管理
4-8.halo vestの管理
4-9.脊髄浮腫の予防・治療
4-10.糖尿病患者の周術期管理
CONTENTS
4-11.術後せん妄への対応
4-12.静脈血栓塞栓症の診断・治療
5 退院・M & M カンファレンス
5-1.退院時にするべきこと
5-2.退院サマリー
5-3.退院後の経過観察
5-4.M&M カンファレンス
6 術後感染症対策
6-1.術後感染予防
6-2.MRSA 感染症
 1.MRSA 感染症の治療薬
 2.MRSA 感染症治療の具体例
6-3.褥創処置の基本
7 痛み関連の症状に対する薬物療法
7-1.NSAIDs の副作用
 1.NSAIDs 潰瘍の予防と対策
 2.その他の副作用・併用注意
7-2.オピオイドと鎮痛補助薬
 1.オピオイド
 2.鎮痛補助薬
7-3.難治性疼痛
 1. neuropathic pain:神経障害性疼痛
 2.psycogenic pain:心因性疼痛
8 神経内科的疾患概要
8-1.運動ニューロン疾患
 1. 運動ニューロン疾患と脊椎疾患の鑑別
 2.筋萎縮性側索硬化症
 3.脊髄性筋萎縮症
 4.球脊髄性筋萎縮症
8-2.家族性痙性対麻痺
8-3.多発ニューロパチー
 1.Charcot-Marie-Tooth 病
 2.Guilllain-Barre 症候群,急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
 3.慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
 4.その他のニューロパチー
8-4.多発性硬化症
8-5.パーキンソン病
8-6.多発筋炎
8-7.リウマチ性多発筋痛症
8-8.進行性筋ジストロフィー
8-9.周期性四肢麻痺
8-10.神経痛性筋萎縮症
8-11.急性横断性脊髄炎
8-12.急性散在性脳脊髄炎
8-13.脊髄サルコイドーシス
8-14.脊髄梗塞
8-15.脊髄出血
8-16.亜急性連合性脊髄変性症
8-17.HAM
8-18.正常圧水頭症
8-19.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
8-20.めまいの鑑別診断
8-21.延髄部病変の症候
 1. 延髄外側症候群(Wallenberg 症候群)
 2. 延髄頚髄移行部・延髄交叉部の障害
9 脊椎手術の基本と実際
9-1.脊椎手術の基本
9-2.脊椎前方アプローチ
 1.頚椎前方
 2.頚胸椎移行部
 3.上位胸椎
 4.中下位胸椎
 5.胸腰椎移行部
 6.腰椎
 7.腰仙椎移行部
9-3.術式別の概要
 1.頚椎前方固定術
 2.頚椎人工椎間板置換術
 3.椎弓形成術(脊柱管拡大術)
 4.腰椎後方手術(PLIF,髄核摘出術,開窓術など)
 5.腰椎前方固定術
 6.胸椎後方手術(椎弓切除術,後方固定術など)
 7.胸椎前方固定術(人工椎体を含む)
 8.短縮矯正骨切り術
9-4.脊椎インストゥルメンテーション
 1.頚椎インストゥルメンテーション
 2.胸椎〜腰仙椎・骨盤インストゥルメンテーション
 3.anterior screw
9-5.骨移植
 1.骨癒合を期待しない脊椎固定
 2.脊椎外科で通常利用する採骨部位
9-6.術式別の術後管理・術後安静度
 1.頚椎前方固定術
 2.椎弓形成術・脊柱管拡大術
 3.腰椎後方手術(PLIF or PLF,髄核摘出術,開窓術など)
 4.腰椎前方固定術
 5.胸椎後方手術(椎弓切除術,後方固定術,側弯矯正手術など)
 6.胸椎前方固定術(人工椎体を含む)
10 緊急手術と術後合併症による再手術
10-1.脊椎変性疾患に伴う緊急手術
 1.緊急手術の適応
 2.術式選択とその考え方
 3.急性麻痺の画像診断
 4.急性麻痺の鑑別診断
10-2.脊椎疾患術後合併症による緊急再手術
 1.術後合併症による再手術の適応と対策
 2.術後麻痺の画像診断
 3.術後麻痺の鑑別診断
 4.脊椎レベルに応じた各論

II 各論
1 脊椎の発生と頭蓋頚椎移行部奇形
1-1.脊椎の発生
1-2.頭蓋頚椎移行部奇形
 1.頭蓋環椎癒合症
 2.環椎形成不全症
 3.頭蓋陥入症
 4.歯突起骨
 5.Klippel-Feil症候群
1-3.ダウン症候群における頭蓋頚椎移行部異常
 1.環軸椎不安定性
 2.後頭骨・環椎間不安定性
 3.歯突起および環椎の奇形
 4.手術療法
1-4.特殊な疾患による上位頚椎病変
 1.脊椎骨端骨異形成症
 2.Morquio 症候群
 3.I-cell 病(mucolipidosis ?)
 4.Marshall-Smith 症候群
2 頚椎後弯症・頚椎変形
2-1.定義・概念
 1.先天性の頚椎後弯症
 2.神経線維腫症
 3.頚椎後方除圧術後の頚椎後弯症
 4.思春期特発性の頚椎後弯症
 5.原因不明の頚椎後弯症(いわゆる“首下がり”)
2-2.症状
2-3.検査
 1.X線
 2.CT
 3.MRI
 4.内分泌検査
2-4.後弯変形の進行予測
 1.先天性の頚椎後弯変形
 2.外傷性の頚椎後弯変
 3.頚椎後方除圧術後の頚椎後弯変形
 4.思春期および成人の頚椎後弯変形
2-5.後弯変形の予防
2-6.治療
 1.保存療法
 2.手術療法
2-7.合併症と予後
3 頚部脊髄症(頚髄症)
3-1.疾患の概説
3-2.病態
 1.頚部脊髄症の発生機序
 2.頚部脊髄症の症状・所見
3-3.診察
 1.問診上のポイント
 2.理学所見上のポイント
 3.錐体路障害としてのmyelopathy hand
3-4.診断
 1.頚部脊髄症の高位診断
 2.画像診断のポイント
3-5.保存療法
 1.保存療法の適応と限界
 2.頚部脊髄症の自然経過
 3.一般的に選択される保存療法
3-6.手術療法
 1.手術適応
 2.脊柱管拡大術(椎弓形成術)
 3.脊柱管拡大術(椎弓形成術)の限界
 4.前方除圧固定術
 5.頚椎人工椎間板置換術
 6.脊柱管拡大術と前方除圧固定術の比較検討
 7.頚椎アライメントと椎弓形成術
3-7.頚部脊髄症の予後因子
3-8.頚部脊髄症の客観的評価
4 頚椎神経根症
4-1.疾患の概説
4-2.病態
4-3.症状
4-4.診断
 1.鑑別診断
 2.筋力テストと腱反射
 3.画像診断のポイント
4-5.保存療法
 1.保存療法の適応とプロトコール
 2.一般的に選択される保存療法
4-6.手術療法
4-7.椎間板ヘルニアの退縮
5 頚椎後縦靱帯骨化症・脊柱靱帯骨化症
5-1.疾患の概説
5-2.疫学
 1.頚椎OPLL のX 線学的形態分類
 2.CT 画像による頚椎OPLL の新しい分類
 3.病理・病態
 4.OPLL の病因
5-3.症状
5-4.診断
 1.補助的画像診断
 2.頚椎OPLL の自然経過
5-5.頚椎OPLL の治療
 1.保存療法
 2.手術療法
 3.治療成績に影響する因子
 4.術後患者の満足度調査
5-6.頚椎OPLL の手術合併症
5-7.頚椎OPLL の骨化進展
5-8.胸椎OPLL
5-9.黄色靱帯骨化症
付.びまん性特発性骨増殖症
 1.疾患概念
 2.診断
 3.疫学
 4.症状
 5.鑑別
 6.合併
6 腰椎椎間板ヘルニア
6-1.疾患の概説
6-2.病態
6-3.症状
6-4.診察・診断
 1.診察のポイント
 2.診断手順
 3.画像診断のポイント
6-5.治療選択
 1.腰椎椎間板ヘルニアの自然経過
 2.腰椎椎間板ヘルニアの消退
6-6.一般的に選択される保存療法
 1.安静
 2.装具療法
 3.薬物療法
 4.神経ブロック
 5.牽引療法
 6.運動療法
 7.物理療法
 8.生活指導
6-7.手術療法
 1.髄核摘出術(椎間板切除術)
 2.椎間板内酵素注入療法
 3.固定術
6-8.腰椎椎間板ヘルニアに対する手術療法と保存療法との比較検討
付. くも膜嚢腫,髄膜嚢腫,仙骨嚢腫 
 1.定義
 2.分類
 3.診断・治療
 4.症例
7 腰部脊柱管狭窄症・腰椎すべり症
7-A.腰部脊柱管狭窄症
7-A-1.疾患の概説
7-A-2.病態
 1.静的因子
 2.動的因子
7-A-3.分類
 1.Kirkaldy-Willis らの分類
 2.Arnoldi らによる国際分類
 3.症状・所見からみた分類
7-A-4.症状
 1.腰痛
 2.下肢の痛み・しびれ
 3.間欠跛行
7-A-5.診断
 1.問診のポイント
 2.他覚所見
 3.画像診断
 4.鑑別診断
 5.自然経過
7-A-6.保存療法
 1.牽引療法
 2.薬物療法
 3.装具療法
 4.神経ブロック
7-A-7.手術療法
 1.適応
 2.術式選択
7-A-8.脊柱管内嚢腫性病変
7-A-9.今後の課題
7-B.腰椎すべり症
7-B-1.疾患の概説
 1.画像評価
 2.手術療法
7-B-2.分離症・分離すべり症
 1.病態・頻度
 2.自然経過
 3.治療法
7-B-3.変性すべり症
 1.病態・頻度
 2.自然経過
 3.症状・所見
 4.手術療法
8 骨粗鬆症性椎体骨折・椎体圧潰
8-1.疾患の概説
8-2.診断
8-3.保存療法
8-4.手術療法
9 脊椎・脊髄損傷
9-1.治療の概説
9-2.部位別各論
 1.頚椎損傷
 2.胸腰椎損傷
 3.仙骨骨折
9-3.麻痺に関して
9-4.脊椎・脊髄損傷の診断
 1.神経学的診断
 2.画像診断
9-5.脊椎・脊髄損傷の治療
 1.全身管理
 2.損傷脊椎に対する治療
 3.損傷脊髄に対する治療
 4.損傷脊髄に対する手術療法
9-6.脊髄損傷患者における注意すべき合併症
 1.早期合併症
 2.その他の合併症
9-7.リハビリテーション
 1.呼吸器リハビリテーション
 2.拘縮予防
9-8.外傷後脊柱変形
9-9.外傷性脊髄空洞症
9-10.Charcot spine
9-11.非骨傷性脊髄損傷
 1.疾患の概説
 2.神経症候
 3.画像診断
 4.治療
9-12.胸腰椎移行部の破裂骨折
 1.分類
 2.評価
 3.治療
 4.合併症
10 関節リウマチに伴う頚椎病変
10-1.病態
 1.環軸関節亜脱臼(AAS)
 2.軸椎垂直亜脱臼(VS)
 3.軸椎下亜脱臼(SS)
10-2.X 線計測法
 1.AAS の評価
 2.VS の評価
 3.SS の評価
10-3.自然経過
 1.上位頚椎病変
 2.中下位頚椎病変
10-4.症状
 1.局所症状
 2.神経症状
 3.椎骨動脈不全症状
 4.関節症状
 5.全身症状
10-5.画像検査
 1.X 線
 2.MRI
 3.CT(MPR)
10-6.治療
 1.保存療法
 2.手術療法
10-7.治療成績
10-8.合併症
 1.全身合併症
 2.隣接椎間障害
 3.開口障害・嚥下障害
11 脊柱変形・側弯症
11-A.総論
11-A-1.疾患の概説
11-A-2.形態解剖・分類
11-A-3.用語の解説
11-A-4.診断
 1. 側弯症の初期診断における腹壁反射の重要性
 2.除外診断
11-A-5.各種計測
 1.肋骨隆起あるいは腰部隆起の計測
 2.側弯症のX 線計測
 3.側弯の程度(重症度)
 4.骨成熟の評価
 5.頂椎回旋の評価
 6.冠状面評価
 7.矢状面評価
11-A-6.骨盤の前傾・後傾・仙骨傾斜角と脊柱アライメント
11-A-7.MRI 検査の意義
11-B.特発性側弯症
11-B-1.病態・病因
11-B-2.乳幼児側弯症
 1.進行の予測
 2.治療
11-B-3.学童期側弯症
 1.進行の予測
 2.脊柱および胸郭の成長
11-B-4.early-onset scoliosis の手術療法
 1.成長抑制
 2.骨移植なしの脊椎固定術
 3.脊椎固定術
11-B-5.特発性側弯症(胸椎部側弯)のKing 分類
 1.King type ?
 2.King type ?
 3.King type ?
 4.King type ?
 5.King type ?
11-B-6.Lenkeによる特発性側弯症の新しい分類法
 1.Lenke type 1
 2.Lenke type 2
 3.Lenke type 3
 4.Lenke type 4
 5.Lenke type 5
 6.Lenke type 6
11-B-7.側弯症の進行予測
11-B-8.側弯症の基本的治療方針
 1.装具療法
 2.手術適応
11-C.先天性側弯症・先天性後側弯症
11-C-1.先天性側弯症
 1.分類
 2.理学所見のポイント
 3.画像検査のポイント
 4.進行予測
 5.装具療法
 6.手術適応
11-C-2.先天性後側弯症
 1.先天性後側弯症の分類
 2.先天性後弯症の手術適応
11-D.症候性側弯
11-D-1.神経線維腫症
 1.NF-1 の診断基準
 2.病態
 3.治療
 4.症例
11-D-2.Marfan 症候群
 1.診断
 2.治療
 3.症例
11-D-3.Ehlers-Danlos 症候群
 1.臨床症状
 2.治療
 3.症例
11-D-4.神経・筋原性側弯症
 1.病態
 2.症例
11-D-5.デュシェンヌ型筋ジストロフィー
 1.病態・臨床症状
 2.治療
 3.症例
11-D-6.キアリ奇形・脊髄空洞症
 1.診断
 2.症状・所見(?型)
 3.治療
 4.症例
11-E.成人脊柱変形
11-E-1.病態と分
11-E-2.評価
 1.立位・歩行バランス
 2.股関節の屈曲拘縮・伸展筋力低下の有無
 3.X 線評価
 4.その他の評価
11-E-3.疫学と進行予測
11-E-4.装具療法
11-E-5.パーキンソン病に伴う脊柱変形
11-E-6.手術療法
 1.手術の基本方針
 2.術式選択
12 脊椎腫瘍
12-1.原発性脊椎腫瘍
 1.疾患の概説
 2.画像診断
 3.鑑別診断
 4.原発性良性脊椎腫瘍の治療
 5.原発性良性脊椎腫瘍の再発
12-2-A.原発性脊椎腫瘍各論―良性腫瘍
 1.骨軟骨腫,骨軟骨性外骨腫
 2.動脈瘤様骨嚢腫
 3.巨細胞腫
 4.ランゲルハンス細胞組織球症・好酸球性肉芽腫
 5.血管腫
 6.骨芽細胞腫・類骨骨腫
12-2-B.原発性脊椎腫瘍各論―悪性腫瘍
 1.多発性骨髄腫・孤立性形質細胞腫
 2.骨肉腫
 3.悪性リンパ腫
 4.脊索腫
 5.軟骨肉腫
12-3.転移性脊椎腫瘍
 1.疾患の概説
 2.症状
 3.診断
 4.治療
 5.各論
13 脊髄腫瘍
13-1.疾患の概説
13-2.症状
13-3.診断
13-4.脊髄腫瘍各論
 1.神経鞘腫
 2.髄膜腫
 3.砂時計腫
 4.髄内腫瘍
14 脊椎感染症
14-1.化膿性脊椎炎
 1.疾患の概説
 2.病態
 3.臨床症状
 4.診断
 5.治療
14-2.結核性脊椎炎(脊椎カリエス)
 1.疾患の概説
 2.病態
 3.症状
 4.診断・画像所見
 5.治療
15 透析脊椎症・破壊性脊椎関節症
15-1.病態
 1.X 線所見の特徴
 2.症状
 3.鑑別診断
15-2.治療
 1.保存療法
 2.手術療法
 3.周術期管理
Surgical Anatomy
あとがき
索引
第3版の序

 第2版が出版されてから後、COVID-19(新型コロナウイルス)によるパンデミック、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻と目まぐるしく世界情勢が悪化した。特に、COVID-19では改めて医師として医療を考えさせられることとなった。継続的にこの改訂版で追加や変更すべき内容を意識しながら、学会での発表を傾聴し論文を拝読してきた。第2版では骨粗鬆症性椎体骨折と成人脊柱変形の項目を追加した。さらに、この数年でlateral interbody fusion(LIF)、頚椎人工椎間板置換術やコンドリアーゼを用いた椎間板内酵素注入療法などの新技術が広がってきた。また頚椎後弯症や腰椎変性側弯症も頚椎や腰椎の変形がある局所の評価をするだけでは不十分で、これら脊柱変形は脊柱全体の矢状面アライメント(global sagittal alignment)や冠状面や回旋変形を考慮して病態評価や治療方針を立てる必要がある。今回の第3版ではこれらの内容も新たに追加した。
 加えてその上で重視したことは、「不易流行」なる医療であり、新技術というよりも普遍的な診断と治療選択の考え方である。「不易流行」とは松尾芭蕉が奥の細道を旅する中で見出した俳諧理念である。いつまでも変わらないもの、変えてはならない本質的なもの(不易)と目まぐるしく変わる新しい時流の両方が欠かせないもので、両者をバランスよく両立させることが重要である。新しい技術(特に、術式)は外科医にとって興味深く機会があれば試してみたくなるものである。そこで常に外科医が自問自答すべきは、この新技術が従来の治療法よりも短期的にも長期的にも優れているか、安全に施行できるか(自分の技量や施設を考慮して)、ということである。
 学問の面白さは創造であるが、それは梅原猛先生が述べられているように今まで誰も明らかにしていない「真理」を発見することである(梅原猛著作集14『思うままに』小学館、2001年)。そして、また今まで通説とされてきたものに懐疑心を持ち、覆す新事実を発見することで通説を旧説に変えてしまう醍醐味がある。
 本書では初版から一貫して自論に言及することはできるだけ避け、診断・治療選択における多様性を重要視してきた。
 さらに、最も重きを置いている総論でも図・本文の変更や追加を行った。どんな情勢の時代となろうとも医療は変わらず患者のために決断して挑み続けることが必要で、本書が脊椎脊髄病に興味がある学生や研修医、脊椎脊髄外科医にとって自ら診断と治療を検討する上で手助けになることを心より願っている。

令和4年3月吉日
岩崎 幹季