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見て分かる! 読んで納得! 婦人科ウイルス感染症の臨床
700枚以上の臨床写真で婦人科におけるウイルス感染症を完全解説!
著 者 | 川名 尚 / 川名 敬 |
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定 価 | 13,200円 (12,000円+税) |
発行日 | 2016/04/25 |
ISBN | 978-4-307-30127-5 |
AB判・268頁・カラー図数:740枚
在庫状況 | あり |
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700枚以上の臨床スライドとともに婦人科領域のウイルス感染症を完全解説。単純ヘルペス感染症を中心に教訓的な症例を紹介する。著者自身が間違えた誤診例もあえて交え、ウイルス感染症診療を実践的に説く。さらにHPVワクチンの理解に重要なヒトパピローマウイルスの基礎と臨床も丁寧に解説した。45年間ヘルペスウイルスと格闘した専門家だからこそ明かせる、本物のウイルス感染症の臨床。婦人科ウイルス感染症の金字塔がここに誕生!
第1章 性器ヘルペス
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.治療
臨床所見
A 初発
HSV-1 による初感染初発
HSV-2 による初感染初発
HSV-1 による非初感染初発
HSV-2 による非初感染初発
B 再発
HSV-1 による再発
HSV-2 による再発
C 子宮腟部・腟病変
D 妊娠中の性器ヘルペス
E 誤診例
基礎
1.感染病理
2.臨床検査
3.治療
4.予防とカウンセリング
5.性器ヘルペス合併妊娠の取り扱い
6.性器ヘルペスの疫学
第2章 尖圭コンジローマ
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.治療
臨床所見
A 外性器
B 腟
C ボーエン様丘疹症
D 子宮頸部
E 妊娠合併尖圭コンジローマ
付 腟前庭乳頭腫症
基礎
1.感染病理
2.疫学
3.HPV ワクチン〜予防法
4.HPV による母子感染症:若年性再発性呼吸器乳頭腫症(JORRP)
5.尖圭コンジローマ合併妊娠の管理
第3章 外陰帯状疱疹
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.臨床検査
臨床所見
基礎
1.感染病理
2.診断
3.臨床検査
4.妊娠合併帯状疱疹の管理
第4章 性器伝染性軟属腫(Molluscum Contagiosum)
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.治療
基礎
1.ウイルスについて
2.予後
第5章 子宮頸部と腟のウイルス感染
入門編
各論
1.ヘルペスウイルス科
2.パピローマウイルス科
3.レトロウイルス科
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.治療
臨床所見
A 初発
HSV-1 による初感染初発
HSV-2 による初感染初発
HSV-1 による非初感染初発
HSV-2 による非初感染初発
B 再発
HSV-1 による再発
HSV-2 による再発
C 子宮腟部・腟病変
D 妊娠中の性器ヘルペス
E 誤診例
基礎
1.感染病理
2.臨床検査
3.治療
4.予防とカウンセリング
5.性器ヘルペス合併妊娠の取り扱い
6.性器ヘルペスの疫学
第2章 尖圭コンジローマ
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.治療
臨床所見
A 外性器
B 腟
C ボーエン様丘疹症
D 子宮頸部
E 妊娠合併尖圭コンジローマ
付 腟前庭乳頭腫症
基礎
1.感染病理
2.疫学
3.HPV ワクチン〜予防法
4.HPV による母子感染症:若年性再発性呼吸器乳頭腫症(JORRP)
5.尖圭コンジローマ合併妊娠の管理
第3章 外陰帯状疱疹
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.臨床検査
臨床所見
基礎
1.感染病理
2.診断
3.臨床検査
4.妊娠合併帯状疱疹の管理
第4章 性器伝染性軟属腫(Molluscum Contagiosum)
入門編
はじめに
1.臨床症状
2.診断
3.治療
基礎
1.ウイルスについて
2.予後
第5章 子宮頸部と腟のウイルス感染
入門編
各論
1.ヘルペスウイルス科
2.パピローマウイルス科
3.レトロウイルス科
はじめに
一般にウイルス感染によって発症する疾患は、臨床的に広いスペクトラムを持っています。これは女性性器のウイルス感染症も同様です。急性感染症や慢性感染症を発症するだけでなく、ヒトパピローマウイルスのように癌の発生の根源にかかわることもあります。
電子顕微鏡でなければ見ることができず、検出も容易でなく、核酸しか持たない小さい「ウイルス」は、学問的にも臨床的にも敷居の高い病原体でした。細菌感染症が抗生物質の発達とともに多くの臨床的問題が解決されたのに対し、ウイルス感染症は一部を除いて有効な化学療法薬の開発は満足すべき状況にはありません。DNA またはRNA しか持たないウイルスは細胞に寄生して増殖するため、ウイルスを特異的に増殖阻止する薬剤の開発が難しいからです。しかしこの数年間、分子生物学を中心としたウイルス学の発達は驚異的であり、新しいウイルスの発見や鋭敏な検出法の開発により新たな局面を迎えました。
しかしながら、ウイルスの感染病理は複雑で感染後、細胞に潜伏した後、時々再活性化されて出現し疾患をもたらしたり、一方で宿主の免疫を巧みにすり抜ける技を持つなど賢い病原体でもあり、ウイルス感染の制御には新しいコンセプトが必要となります。この複雑な性質を有するウイルスの病原性も複雑で、臨床症状も多様であり、診断と治療を任されている臨床医にとっては悩ましい課題が多くあります。
性器のウイルス感染でももちろんこのような問題が多くありますが、新しい診断法や抗ウイルス薬が開発されて診断や治療の実際に役立つようになってきました。
さらに、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンが開発され、子宮頸癌が予防できるようになったことは特筆すべきことです。
HPV ワクチンが平成25年4月より定期接種に採用され、HPV感染症の制御とそれに伴う子宮頸癌の予防が国レベルで行われるようになったことは画期的なことでした。しかし、このワクチンによる副作用がやや過大にマスコミを通じて報道され、厚労省も積極的には推奨しないという慎重な立場をとるようになり、現在接種者が激減していることは誠に残念です。
本書は、20世紀後半のウイルス学の発展の時代に婦人科におけるウイルス性疾患の臨床的・ウイルス学的研究を行ってきた筆者らが臨床的な立場を重視して今まで集積してきた臨床写真を供覧しながら解説を試みたものです。これらの臨床写真の多くは1900年代のものですが、このような貴重な記録を残すことができたのも一重に理解ある患者様のお陰であり、心から謝意を表します。
筆者(川名 尚)は45年間にわたって性器ヘルペスの臨床的・ウイルス学的研究を行ってた経緯もあり、性器ヘルペスに多くの紙数を割いてあります。性器ヘルペスの多様な臨床像だけでなく、筆者の誤診例なども敢えて呈示して、この疾患の診断の難しさもご理解いただけるよう企画しました。
本書は女性性器に感染する4つのウイルス疾患について、入門編、臨床所見、基礎に分けて述べました。入門編は内容をコンパクトにまとめてありますので、臨床所見をみる前に是非読まれることをお薦めします。
また基礎はウイルス学的、臨床的に一歩踏み込んだ内容となっていますので、一読されるとさらに理解が深まると思います。
また母子感染の立場からは妊婦における性器のウイルス感染は、妊娠や分娩を取り扱う際に重要な問題となりますので、この点についても、筆者らの考えを述べました。
ウイルス学は日進月歩であり、本書はあくまでも2016年における現状であり、今後、新たな展開が起こることも十分あり得ることをご理解いただければ幸いです。
2016年3月
川名 尚
川名 敬
一般にウイルス感染によって発症する疾患は、臨床的に広いスペクトラムを持っています。これは女性性器のウイルス感染症も同様です。急性感染症や慢性感染症を発症するだけでなく、ヒトパピローマウイルスのように癌の発生の根源にかかわることもあります。
電子顕微鏡でなければ見ることができず、検出も容易でなく、核酸しか持たない小さい「ウイルス」は、学問的にも臨床的にも敷居の高い病原体でした。細菌感染症が抗生物質の発達とともに多くの臨床的問題が解決されたのに対し、ウイルス感染症は一部を除いて有効な化学療法薬の開発は満足すべき状況にはありません。DNA またはRNA しか持たないウイルスは細胞に寄生して増殖するため、ウイルスを特異的に増殖阻止する薬剤の開発が難しいからです。しかしこの数年間、分子生物学を中心としたウイルス学の発達は驚異的であり、新しいウイルスの発見や鋭敏な検出法の開発により新たな局面を迎えました。
しかしながら、ウイルスの感染病理は複雑で感染後、細胞に潜伏した後、時々再活性化されて出現し疾患をもたらしたり、一方で宿主の免疫を巧みにすり抜ける技を持つなど賢い病原体でもあり、ウイルス感染の制御には新しいコンセプトが必要となります。この複雑な性質を有するウイルスの病原性も複雑で、臨床症状も多様であり、診断と治療を任されている臨床医にとっては悩ましい課題が多くあります。
性器のウイルス感染でももちろんこのような問題が多くありますが、新しい診断法や抗ウイルス薬が開発されて診断や治療の実際に役立つようになってきました。
さらに、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンが開発され、子宮頸癌が予防できるようになったことは特筆すべきことです。
HPV ワクチンが平成25年4月より定期接種に採用され、HPV感染症の制御とそれに伴う子宮頸癌の予防が国レベルで行われるようになったことは画期的なことでした。しかし、このワクチンによる副作用がやや過大にマスコミを通じて報道され、厚労省も積極的には推奨しないという慎重な立場をとるようになり、現在接種者が激減していることは誠に残念です。
本書は、20世紀後半のウイルス学の発展の時代に婦人科におけるウイルス性疾患の臨床的・ウイルス学的研究を行ってきた筆者らが臨床的な立場を重視して今まで集積してきた臨床写真を供覧しながら解説を試みたものです。これらの臨床写真の多くは1900年代のものですが、このような貴重な記録を残すことができたのも一重に理解ある患者様のお陰であり、心から謝意を表します。
筆者(川名 尚)は45年間にわたって性器ヘルペスの臨床的・ウイルス学的研究を行ってた経緯もあり、性器ヘルペスに多くの紙数を割いてあります。性器ヘルペスの多様な臨床像だけでなく、筆者の誤診例なども敢えて呈示して、この疾患の診断の難しさもご理解いただけるよう企画しました。
本書は女性性器に感染する4つのウイルス疾患について、入門編、臨床所見、基礎に分けて述べました。入門編は内容をコンパクトにまとめてありますので、臨床所見をみる前に是非読まれることをお薦めします。
また基礎はウイルス学的、臨床的に一歩踏み込んだ内容となっていますので、一読されるとさらに理解が深まると思います。
また母子感染の立場からは妊婦における性器のウイルス感染は、妊娠や分娩を取り扱う際に重要な問題となりますので、この点についても、筆者らの考えを述べました。
ウイルス学は日進月歩であり、本書はあくまでも2016年における現状であり、今後、新たな展開が起こることも十分あり得ることをご理解いただければ幸いです。
2016年3月
川名 尚
川名 敬