産婦人科内視鏡手術ガイドライン 2024年版 第4版

新たなエビデンスを盛り込み大幅アップデート!

編 集 日本産科婦人科内視鏡学会
定 価 3,740円
(3,400円+税)
発行日 2024/09/15
ISBN 978-4-307-30157-2

B5判・256頁

在庫状況 あり

5年ぶりの改訂となる今版はMinds 2020に準拠、14のBQ、40のCQ、7つのコラムとともに、新設のFRQ(future researchが推奨される臨床疑問)2つが収載される。保険収載あるいは先進医療の術式を原則としながら、国外で施行され質の高いエビデンスが得られた術式についても紹介。「帝王切開瘢痕症」「遺伝的素因を有する卵巣がん未発症者」「再発婦人科がん」「組織切除回収法」などに関するCQが追加された必読の一冊。
・ガイドライン作成方法
・略語一覧

《腹腔鏡・ロボット支援手術編》
◆腹腔鏡・ロボット支援手術 総論
 BQ1 開腹手術と比較して、腹腔鏡手術およびロボット支援手術における麻酔管理の留意点は?
 BQ2 開腹手術と比較して、腹腔鏡手術およびロボット支援手術における体位の留意点は?
 BQ3 高齢者に対して、腹腔鏡手術は他の術式と比較して低侵襲で安全か?
 BQ4 肥満症例(BMI 30以上)に対して、腹腔鏡手術は開腹手術と比較して低侵襲で安全か?
 BQ5 妊娠症例に対して腹腔鏡手術のメリットと留意点は?
 BQ6 ロボット支援手術は腹腔鏡手術と比較して優れているか?

◆良性疾患
 良性疾患 序論
第1章 良性卵巣腫瘍
 CQ1 良性卵巣腫瘍に対して腹腔鏡手術は推奨されるか?

第2章 不妊症
 CQ2 原因不明不妊に対して、腹腔鏡手術は推奨されるか?
 CQ3 卵管性不妊症に対して、腹腔鏡下卵管形成術は推奨されるか?
 CQ4 卵管留水症に対して腹腔鏡下卵管切除術は推奨されるか?
 CQ5 多嚢胞性卵巣症候群に対して、腹腔鏡下卵巣開孔術は推奨されるか?

第3章 子宮内膜症
 CQ6 卵巣子宮内膜症性嚢胞に対して、腹腔鏡手術は推奨されるか?
 CQ7 子宮内膜症性腹膜病変に対して、腹腔鏡下に病変の切除・焼灼を行うことは推奨されるか?
 CQ8 ダグラス窩深部子宮内膜症に対して、腹腔鏡手術は有用か?
 CQ9 腸管・尿路子宮内膜症に対して、腹腔鏡手術は推奨されるか?

第4章 異所性妊娠
 CQ10 卵管妊娠に対して、腹腔鏡手術は推奨されるか?
 CQ11 卵管妊娠に対して、腹腔鏡下卵管保存手術は推奨されるか?
 CQ12 間質部妊娠に対して、腹腔鏡下子宮温存術は推奨されるか?
●コラム1 帝王切開瘢痕部妊娠に対しての内視鏡手術の適応は?

第5章 子宮筋腫 1. 単純子宮全摘出術
 CQ13 子宮筋腫に対して、腹腔鏡下単純子宮全摘出術は推奨されるか?
●コラム2 良性疾患手術時の追加卵管切除(OBS)による卵巣がん発症予防について

第6章 子宮筋腫 2. 筋腫核出術
 CQ14 子宮筋腫に対して、腹腔鏡下子宮筋腫核出術は推奨されるか?
●コラム3 術前GnRHアナログ(アゴニスト、アンタゴニスト)の使用は?
●コラム4 子宮および筋腫に対するモルセレーターの使用は?
●コラム5 子宮腺筋症に対する保存的手術について

第7章 骨盤臓器脱(腹腔鏡下仙骨腟固定術)
 CQ15 骨盤臓器脱に対して腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)は推奨できるか?

第8章 先天性腟欠損症
 CQ16 先天性腟欠損症に対する造腟術で腹腔鏡手術は推奨されるか?

第9章 帝王切開瘢痕症
 CQ17 帝王切開瘢痕症に対する内視鏡手術は推奨されるか?

第10章 ロボット支援手術
 CQ18 良性子宮疾患に対して、ロボット支援下単純子宮全摘出術は推奨されるか?
 CQ19 ロボット支援下仙骨腟固定術は推奨されるか?
●コラム6 ロボット支援下子宮筋腫核出術は有用か?

◆悪性疾患
 悪性疾患 序論
 BQ7 婦人科悪性腫瘍手術に対する腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)において子宮マニピュレーターの使用は勧められるか?
 BQ8 子宮悪性腫瘍に対する腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)は開腹手術と比較して、周術期合併症が少ない手術と考えられるか?

第11章 子宮頸がん
 CQ20 HSIL/CIN3、AISに対して、腹腔鏡下単純子宮全摘出術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ21 IA1期に対して腹腔鏡下単純子宮全摘出術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ22 IA2, IB1, IB2, IIA1期(日産婦2020, FIGO 2018)に対して、腹腔鏡下広汎子宮全摘出術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ23 IB3期以上の子宮頸がんに対する腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)での傍大動脈リンパ節切除は勧められるか?
 FRQ1 IB3, IIA2, IIB期に対する腹腔鏡下根治術(ロボット支援手術を含む)は腹式広汎子宮全摘出術と比べて勧められるか?

第12章 子宮体がん
 CQ24 子宮内膜異型増殖症に対して腹腔鏡下単純子宮全摘出術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ25 再発低リスクと推定される子宮体がんに対して腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ26 再発中・高リスクと推定される子宮体がんに対して腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ27 進行子宮体がんに対して腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?

第13章 卵巣がん
 CQ28 卵巣上皮性境界悪性腫瘍が疑われる症例に対して、腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ29 早期卵巣がんに対して腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ30 術前に良性腫瘍の診断で手術施行し、術後に卵巣がんの診断を受けた症例に対して腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)での追加手術は勧められるか?
 CQ31 進行卵巣がんに対して審査腹腔鏡手術は勧められるか?
 CQ32 進行卵巣がんに対して腹腔鏡下腫瘍減量手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?
 CQ33 遺伝的素因を有する卵巣がん未発症者に対して腹腔鏡下リスク低減卵管卵巣摘出術は勧められるか?

第14章 再発婦人科がん
 CQ34 再発婦人科がんに対して腹腔鏡下腫瘍減量手術(ロボット支援手術を含む)は勧められるか?

《子宮鏡手術編》
 子宮鏡手術 総論
 BQ9 子宮腔病変の検索方法は?
 BQ10 子宮鏡手術の合併症は?
 BQ11 合併症の予防法は?
 BQ12 術後の子宮腔癒着予防に対して、セカンドルック子宮鏡は有用か?
 BQ13 手術機器の違いによる手術成績の差は?
 BQ14 着床不全症例における子宮鏡検査の意義は?

第1章 子宮粘膜下筋腫
 CQ35 子宮粘膜下筋腫に対して、子宮鏡手術は推奨されるか?

第2章 子宮内膜ポリープ
 CQ36 子宮内膜ポリープに対して、子宮鏡手術は推奨されるか?

第3章 中隔子宮
 CQ37 中隔子宮に対して、子宮鏡手術は推奨されるか?

第4章 子宮腔癒着症
 CQ38 有症候性子宮腔癒着症に対して、子宮鏡手術は推奨されるか?

第5章 子宮腔内悪性腫瘍
 CQ39 子宮腔内悪性腫瘍に対する子宮鏡検査の意義は?

第6章 手術機器
 CQ40 子宮腔病変に対して組織切除回収法は推奨されるか?
 FRQ2 自動灌流システムを用いた子宮鏡手術は推奨されるか?
●コラム7 オフィス子宮鏡手術の適応と使用機器の選択は?

2013年版の発刊にあたって
2013年版序文
2019年版の発刊にあたって
2019年版序文

索引
■2024年版の発刊にあたって

『産婦人科内視鏡手術ガイドライン2024年版』が上梓される運びとなりました。日本産科婦人科内視鏡学会のガイドラインは、2006年に初版が発刊されて以来、2013年版、2019年版と継続的に刊行が続けられており、そのときどきで診療ガイドラインの最新の作成方法にしたがって作られている、ガイドラインの中でも最先端のものになっております。現在、多くの領域で様々なガイドラインが発刊され、その役割は少しずつ変容しつつあるように感じます。標準治療の実践・普及や、地域間診療格差の解消が主な目的であった初期のガイドラインから、エビデンスに基づいた学術的なガイドライン、さらにはエビデンスの質に加えて益と不利益、患者の価値観や希望、資源の利用状況など、幅広い診療の実態を勘案したガイドラインへと、世のニーズと使う側の意識の変化に沿う形で内容も役割も変化してきています。特に昨今では技術の進歩が著しく、これに遅れないように内容の改訂を進めていかねばならず、技術の評価と推奨に難渋するのが常となっています。

 本ガイドラインの特徴は、主に内視鏡技術に関するガイドラインである、ということで、各種の治療ガイドラインとはまた少し趣を異としています。全国でほぼ均一に使える薬剤と異なり、技術、特に手術の技術は、地域、施設、術者によって差異があることは否めません。どんどん技術が進化する中で、すべての地域・施設であまねく可能な技術のみを「標準」として規定することが果たして日本の医療において良いことなのか、というのは、作成する側がいつも悩まされる点のひとつです。ここに正解はないのですが、今回のガイドラインは、主に「内視鏡技術認定医」の技量を想定したもの、と聞いております。当学会が認定し、その質を担保している、内視鏡のきちんとした技術を持っている術者を対象としてガイドラインが推奨をおこなうのはきわめて合理的なことであると考えます。特に内視鏡という比較的高度な技術を提供する以上、各術者は努力して一定の水準を保つべきであり、このような術者によっておこなわれるべき手技・治療こそをガイドラインとして推奨するべきであると考えるからです。

 昨今のロボット支援手術の急速な普及にも象徴される急速な技術の変化・進化に合わせて適切に合意を形成するのは簡単なことではありません。そしてその過程は、かつての指導者が一般の医師に一方的に範を示す医療パターナリズム的なものから、使う側が自分たちで知恵を持ち寄って議論を深め、より使いやすいものを共に作り出す方向へと向かっています。このような難しい状況の中ですばらしい内容をまとめていただいた、明樂重夫委員長はじめ、委員会の皆様方には深く感謝申し上げます。本ガイドラインが日本の産婦人科内視鏡術者の羅針盤になるとともに、さらなる進歩に向けて背中を押すものとなることを祈念いたします。

2024年8月
日本産科婦人科内視鏡学会
理事長 万代 昌紀


■2024年版序文

 産婦人科内視鏡手術ガイドラインは2006年に初版が発刊されてから18年が経過し、この度第4版にあたる2024年版が上梓されることになりました。この間、婦人科内視鏡手術は良性から悪性まで適応が拡がり、ロボット支援手術が普及するなど急速に発展してまいりました。我が国における腹腔鏡手術、ロボット支援手術と子宮鏡手術の健全なる発展に、本ガイドラインが大いに寄与してきたことは言うまでもありません。

 前版である2019年版からのこの5年間に婦人科内視鏡手術を取り巻く状況で大きく変化したのは、技術認定医の増加です。2024年7月時点で技術認定医の割合は腹腔鏡手術だけで全会員の28%に達しています。そして新たにロボット手術技術認定医も269名に上っているなど、我が国の婦人科内視鏡外科医の技術は全体的に向上しております。そこで、国民がより高いレベルで安全で治療効果の高い内視鏡手術を享受できるよう、2024年版では技術認定医もしくは同等の技量を持った医師が内視鏡手術を行うことを前提として、作成することと致しました。

 また、ガイドラインの役割のひとつに、新規術式の妥当性、安全性の情報提供があります。とりわけ、様々な術式におけるロボット支援手術に対する検討は、我が国における新規導入・発展において欠かせません。そこで本ガイドラインでは、現時点で保険収載されていなくとも世界的にみて高いエビデンスを有する術式は、推奨度も付けて記載しています。

 推奨度については、前版同様GRADEシステムを採用しました。これはアウトカムを主体としてエビデンスの質を評価し、それに益と不利益、患者の価値観や希望、医療資源の活用状況を勘案して推奨度を決定するもので、エビデンスのみだと反映されにくい我が国の手術治療の現状に即したガイドラインの作成に有用なシステムです。今回もMinds診療ガイドライン作成マニュアル2020作成委員であり日本医療機能評価機構客員研究主幹、国際医療福祉大学消化器外科学教室教授の吉田雅博先生にご指導を仰ぎました。この場を借りて深甚なる感謝を申し上げます。

 本ガイドラインが我が国の医療現場における医師の判断基準となるのみならず、治療成績や合併症についての患者さんと家族の理解に役立ち、医療を提供する側と受療する側の相互信頼が深まることを期待します。そして安全性、低侵襲性、根治性、経済性に優れた内視鏡手術の標準化・普遍化を通じて、国民の健康増進に寄与するものとなることを願っております。

 最後になりましたが、多忙な日常診療、教育、研究活動の中でガイドライン作成に献身的に従事して頂いた作成委員会、評価委員会と作成委員の皆様に心から御礼申し上げます。

2024年7月
日本産科婦人科内視鏡学会ガイドライン委員会
委員長 明樂 重夫