点眼薬クリニカルブック 第2版
好評書改訂! 点眼薬を上手に選び、使うためのエッセンスをさらに凝縮
著 者 |
庄司 純 / 河嶋 洋一 / 吉川 啓司 |
定 価 |
3,740円 (3,400円+税) |
発行日 |
2015/11/25 |
ISBN |
978-4-307-35163-8 |
A5判・208頁
点眼薬は眼科特有の局所療法でありながら、使用頻度の高い標準薬でもある。したがって、正しく点眼薬を処方するためには十分な基礎知識が必要になる。約4年ぶりの改訂となる本書では、 “これだけは知っておきたい”点眼薬療法のエッセンスに加えて、臨床症例も大充実。疾患・領域別に豊富な写真と丁寧な解説で点眼薬の具体的な処方がわかる。日常診療で点眼薬を上手に選び、使うための必読書。
1章 点眼薬の基礎
A 点眼剤 総論
1 点眼剤の定義と特性
2 点眼剤に求められる要件と留意点
3 点眼剤の剤型と添加剤
4 点眼剤と角膜透過性
5 防腐剤の多面性
6 点眼剤における先発品と後発品
B 点眼容器の機能と工夫
1 点眼容器の重要項目と評価
2 点眼容器の材質と特性
3 点眼容器と1滴量
C 点眼剤の正しい使い方指導
1 正しい点眼の定義
2 点眼方法の指導
3 複数の点眼剤を使用する場合の点眼指導
D 点眼剤の保管
E 使用期限
2章 感染症治療薬
I.抗菌薬
A 抗菌点眼薬を理解するための基礎知識
1 病原菌の基礎知識
2 抗菌点眼薬の基礎知識
B 抗菌点眼薬の種類と作用機序
1 セフェム系抗菌薬
2 フルオロキノロン系抗菌薬
3 アミノグリコシド系抗菌薬
4 コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム配合薬
C 疾患別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 抗菌点眼薬の日常診療での使い方
2 抗菌点眼薬の副作用
II.抗真菌薬
A 抗真菌薬を理解するための基礎知識
1 真菌性角膜炎
2 抗真菌薬治療の適応
B 抗真菌点眼薬の種類と作用機序
1 ピマリシン(Pimaricin)
2 自家製抗真菌薬点眼液
C 真菌性角膜炎の病型別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 酵母型真菌による真菌性角膜炎
2 糸状真菌による真菌性角膜炎
III.クラミジア治療薬
A クラミジア治療薬を理解するための基礎知識
B クラミジア治療薬の種類と作用機序
IV.抗ヘルペス薬
A 抗ヘルペス薬を理解するための基礎知識
1 ヒトヘルペスウイルスによる角結膜炎
2 抗ヘルペス薬治療の適応
B 抗ヘルペス薬の種類と作用機序
1 アシクロビル
C 単純ヘルペス角膜炎の病型別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 樹枝状角膜炎
2 円板状角膜炎
■症例でみる点眼薬の使い方
症例1 淋菌結膜炎の成人例:薬剤耐性に注意
症例2 インフルエンザ結膜炎の小児例:薬剤耐性に注意
症例3 コンタクトレンズ装用者の緑膿菌角膜炎:迅速な対応が必要
症例4 クラミジア結膜炎の成人例:点眼と内服による治療
症例5 壊死性角膜炎:ステロイドの使用法に注意
3章 アレルギー治療薬
A アレルギー治療薬を理解するための基礎知識
1 即時型アレルギー反応
B アレルギー治療薬の種類と作用機序
1 抗アレルギー薬
2 免疫抑制薬
3 副腎皮質ステロイド薬
C アレルギー性結膜疾患の病型別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 アレルギー性結膜炎
2 春季カタル
■症例でみる点眼薬の使い方
症例1 アレルギー性結膜炎の小児例:基礎治療薬が重要
症例2 アレルギー性結膜炎:眼瞼炎合併例にはステロイドを使用
症例3 輪部型春季カタル:シクロスポリンが第1選択
症例4 ステロイド抵抗性春季カタル
4章 角膜治療薬・ドライアイ治療薬
A 角膜・ドライアイ治療薬を理解するための基礎知識
1 角膜上皮障害の基礎知識
2 ドライアイの基礎知識
B 角膜・ドライアイ治療薬の種類と作用機序
1 ヒアルロン酸ナトリウム
2 コンドロイチン硫酸エステルナトリウム
3 フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム
4 ジクアホソルナトリウム
5 レバミピド
C ドライアイの病型別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 シェーグレン症候群
2 SLK型ドライアイ
3 Short TBUT型ドライアイ
■症例でみる点眼薬の使い方
症例1 再発性角膜上皮びらん:眼軟膏が重要
症例2 シェーグレン症候群:乾燥と炎症に対する治療
症例3 SLK型ドライアイ:瞬目時の摩擦に対する治療
5章 炎症治療薬
I.副腎皮質ステロイド薬
A ステロイド薬を理解するための基礎知識
B ステロイド薬の種類と作用機序
C ステロイド点眼薬の病型別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 ステロイド点眼薬の日常診療での使い方
2 ステロイド点眼薬の副作用
II.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
A NSAIDs点眼薬を理解するための基礎知識
B NSAIDs点眼薬の種類と作用機序
1 プラノプロフェン
2 ジクロフェナクナトリウム
3 ブロムフェナクナトリウム
4 ネパフェナク
5 アズレンスルホン酸ナトリウム
6 グリチルリチン酸二カリウム
C NSAIDs点眼薬の病型別薬剤選択の方法・治療薬選択のコツ
1 NSAIDs点眼薬の日常診療での使い方
2 NSAIDs点眼薬の副作用
III.消炎酵素薬
A 消炎酵素薬を理解するための基礎知識
B 消炎酵素薬の種類と作用機序
1 塩化リゾチーム
6章 緑内障治療薬
A 緑内障の基礎知識
1 緑内障の定義
2 緑内障の分類
3 緑内障の治療
4 緑内障における眼圧上昇の病態
B 薬理作用
1 緑内障点眼薬の位置づけ
2 緑内障点眼薬の特徴
3 緑内障点眼薬の作用機序
C 現在使用可能な緑内障点眼薬
1 副交感神経刺激薬(縮瞳薬)
2 交感神経遮断薬
3 交感神経刺激薬
4 炭酸脱水酵素阻害薬
5 プロスタグランジン関連薬
6 配合剤点眼薬
7 新しい機序の点眼薬
D 緑内障治療における点眼薬の役割
1 原発開放隅角緑内障と点眼治療
2 原発閉塞隅角緑内障と点眼治療
3 続発緑内障と点眼治療
4 発達緑内障と点眼治療
■症例でみる点眼薬の使い方
症例1 「とりあえず無治療」も治療のオプション
症例2 治療の第一選択
症例3 治療選択の際,女性ならばもうひとつの配慮が必要!
症例4 点眼薬の選択の際,常に「副作用」への配慮を!
症例5 目標眼圧に到達しなければ,治療を追加せざるを得ない!
症例6 「目標眼圧の見直し」と「点眼の追加」は稀ではない!
症例7 眼圧下降の最終手段は手術!しかし,その同意が得られないと……
症例8 特に高齢者では「標準的治療」の例外が多い
症例9 緑内障点眼薬のパイオニアはピロカルピンだが……
症例10 続発緑内障では「原因治療」が第一だが……
症例11 緑内障は「超」慢性疾患なので
7章 白内障治療薬
A 白内障治療薬の基礎知識
B 白内障治療薬の種類
1 ピレノキシン
2 グルタチオン
■症例でみる点眼薬の使い方
症例1 加齢白内障:軽症例の保存的治療
8章 散瞳薬
A 散瞳薬の基礎知識
B 散瞳薬の種類と作用機序
1 アトロピン硫酸塩水和物
2 フェニレフリン塩酸塩
3 トロピカミド
4 シクロペントラート塩酸塩
C 散瞳薬の臨床応用
1 調節麻痺下の屈折検査
2 眼底検査のための散瞳
3 アトロピンによる片眼弱視治療
4 虹彩炎・ぶどう膜炎に対する瞳孔管理
5 術前散瞳
9章 点眼麻酔薬
A 点眼麻酔薬の基礎知識
B 点眼麻酔薬の種類と特徴
1 オキシブプロカイン塩酸塩
2 リドカイン塩酸塩
主な点眼薬一覧&「臨床で使える! 一口コメント」
索引
序文にかえて 第2版
点眼薬は眼科における薬物治療の中心となる薬剤で、最近の進歩には目を見張るものがあります。眼科医にとって、点眼薬の知識は、自身の治療の根幹にかかわる知識となり、薬剤師やコメディカルによる点眼指導には、点眼薬に関する正確なる知識が求められる時代になってきました。しかし、ネット社会に突入した今日では、点眼薬に関する情報は膨大なものがあります。そこで、点眼薬の知識をコンパクトに、そして臨床に沿った基礎知識の整理として、2011年「点眼薬クリニカルブック」を出版させていただきました。その後4年が経過して、新薬が増え、薬剤の適応や治療効果判定を行うための臨床検査が発達したこともあり、今回改訂させていただくこととなりました。
今回の改訂では、「第1章 点眼薬の基礎」の執筆に河嶋洋一先生、「第6章 緑内障治療薬」の執筆に吉川啓司先生をお迎えして、内容の充実を図りました。また初版では、本文内では十分に解説しきれなかった重要用語を「臨床キーポイント」として記載しておりましたが、改訂版では「臨床ワンポイント」として残し、内容を充実させています。また「症例でみる点眼薬の使い方」に関しては、内容をさらに充実させ、点眼薬の臨床使用方法の理解が深まるように努めました。今回の改訂では、「第2章 感染症治療薬」の改訂にあたり、日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 稲田紀子先生にご助言および写真提供など多大なる執筆協力をいただきましたこと、金原出版株式会社 中立稔生様には編集協力いただきましたことについて、この場をお借りして深謝いたします。
今回、本書では、主要薬剤、添加剤、溶解液、点眼容器などを一体として「点眼薬」として位置づけ、点眼薬のアドヒアランスや点眼指導を臨床に役立つ知識として記載しています。本書を通して、点眼薬の理解が深まり、日常の眼科診療が充実することを祈念しています。
2015年10月
庄司 純
推薦のことば 第2版
眼科の薬物療法には、他科と同様に局所と全身療法とがある。特に局所療法としての点眼薬は眼科に特有な治療法である。近年の点眼薬の進歩は目覚ましく、同一疾患に対しても薬効の違った数種類の点眼薬があり、その特性、適応、副作用や禁忌を熟知したうえでの使用が必要になる。
点眼薬について記載されているコンパクトな書はなく、本書は初版から好評であったが、最近の進歩に合わせて改訂が必要な時期になってきた。特に第6章の「緑内障治療薬」の項では、さらなる新薬の開発が進み、その選び方には診断技術はもちろんであるが、高度な薬効の知識と目標値の設定などが問題となっている。そこで、今回は執筆者に緑内障治療の専門家である吉川啓司先生が加わり、最新の知識に加えて具体的治療指針について執筆している。また、第1章の「点眼薬の基礎」の項では新たに専門家である河嶋洋一先生が執筆され、充実した感がある。この他、抗菌薬、抗アレルギー薬、ドライアイ薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、検査薬などの記載がある。
改訂第2版で特徴的な点は、重要項目に「臨床ワンポイント」が設定され、さらに、各項の後ろに、その点眼薬を使用した症例がコメントと共に呈示されていることである。これらの症例を読むと今までに困った症例や現在困っている症例が呈示されていて、大いに役立つ。また、これらの症例は診療の合間に目を通すのに適している。
本書は、点眼薬の作用機序から実際の使用法までを簡潔に、しかも分かりやすく記載されている。しかし、1つの疾患に対する点眼薬の種類も多く、作用機序も多岐にわたり、また、副作用や禁忌など、すべてを熟知することは難しい。そこで、日常診療に際して、手元において、適時参照出来る最新の書が望まれる。本書は、正にこの目的に合致しているので、座右において、診療の参考にすると良い最適の書である。
2015年10月
東京医科歯科大学名誉教授 所 敬