マイボーム腺機能不全(MGD)の診断と治療

ドライアイの診療に必須となるMGDを詳細に解説した唯一のテキスト!

編 集 坪田 一男
定 価 7,700円
(7,000円+税)
発行日 2016/09/30
ISBN 978-4-307-35164-5

B5判・230頁・カラー図数:172枚

在庫状況 あり

ドライアイの大きなリスクファクターであり、その治療がドライアイの治療に大きな役割を果たすもことがわかってきたマイボーム腺機能不全(MGD)に関する眼科医必携の診断と治療の手引き書。MGDとは何か? どのように診断し、どのように治療するのか? 今まで見逃されがちであったが実は重要な本疾患について基礎から理解を深め、日々の診療に役立てることのできる眼科医必携の書。
序文 ドライアイの最大原因MGD

第1部 総論
 第1章 MGD総論
 第2章 MGDの定義と分類
 第3章 マイボーム腺の解剖、生理
 第4章 マイボーム腺の病理
 第5章 涙液層における油層と液層との関連(正常状態と異常)
 第6章 MGDの疫学(全身疾患を含めて)

第2部 診断編
 第7章 MGDの診断総論
 第8章 マイボグラフィーの理論と実践
 第9章 Marx’s line(マルクスライン観察)の有用性
 第10章 コンフォーカルマイクロスコピーによるMGD診断
 第11章 涙液油層の成分とその評価
 第12章 MGDと視機能

第3部 治療編
 第13章 MGDの予防(リッドハイジーン)
 第14章 涙液油層減少ドライアイの層別治療
 第15章 MGDのリピフローによる治療
 第16章 マイボーム腺管内プロービング:閉塞性マイボーム腺機能不全の治療成功へのパラダイムシフト
 第17章 MGDの温熱療法
 第18章 MGDの新しい蒸気治療
 第19章 MGD角膜炎の治療
 第20章 重症ドライアイにおけるMGD管理
 第21章 MGDのメカニズム、動物モデル、基礎研究

附録
 附録1 慶應義塾大学式 MGD外来の実際
 附録2 MGDグッズの種類と使い方

索引
序文:ドライアイの最大原因MGD
 マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction:MGD)が注目を浴びている。ひとつにはMGD患者の急激な増大である。今まであまり関心が払われなかったマイナーな眼科疾患であるが、ドライアイのリスクファクターの最大原因のひとつであることがわかってきた。マイボグラフィーなどの診断法が進歩して、日本においても非常に多数の患者が存在する可能性が示唆されたのだ。本邦において診断基準の作成、調査が行われ(ドライアイ研究会MGDワーキンググループ、班長:天野史郎〈井上眼科病院〉)、啓発がなされたことも大きい。現在日本では、ドライアイの原因の半分以上にMGDが関与しているのではないかと考えられているが、欧米の研究ではドライアイのなんと80%以上がMGDを合併しているという報告もある。MGDの診断、治療なくしてはドライアイの治療は行えない状況となっている。
 世界においてもMGDは注目されており、TFOS(Tear Film and Ocular Surface Society:涙液とオキュラーサーフェスの国際学会)でも2011年の会議で国際的診断基準設置の必要性が提唱され、討議されている。
 マイボーム腺は眼瞼上下に分布する体内最大の脂腺であり、眼表面に脂質を供給する。この脂質はムチン層、水層に加えて第3の層として油層を形成し、正常な涙液層には欠かせない成分となっている。現在ドライアイ研究会では、TFOD(Tear Film Oriented Diagnosis:涙液の層別診断)という概念を提唱しているが、このTFODにおいてどの層が障害を受けてもドライアイを発症する。
 日常外来においてもMGD患者は多数見受けられるが、本邦で実際にどのくらいの患者数がいるのか、また、加齢や酸化ストレスによってマイボーム腺の機能が低下してMGDを発症すると考えられているが、その病態メカニズムもまだ不明な点が多く、今後の研究課題である。本領域は日本の研究者の活躍が大きく、マイボグラフィーや、涙液油層診断装置(DR-1)の開発などの診断領域に加えて、温熱療法、微量油供給、アイシャンプーなど、ユニークな治療法も提唱されている。MGDは見逃されていることも多いため、治療が奏効した場合の患者の喜びは大きく、日常の外来診療においてぜひ注目してほしい領域と切に思っている。
 教科書の編成としては、総論、診断、治療、附録と4領域にわけて、世界のトップレベルの臨床家医、研究者の方に執筆をお願いした。本教科書は日常外来において多数の“不定愁訴”の患者を診察される一般臨床家医の先生を対象として企画したが、内容はMGD研究者の方にも活用していただけるように研究面の話題も網羅した。MGDとは何か、どのように診断し、どのように治療するのか?
 今まで見逃されていたが重要な本疾患について理解を深めていただき、日々の診療に役立てていただければ嬉しく思う。また不定愁訴やドライアイ、MGDに興味のある研究者、レジデント、プライマリーケアの先生方にも広くお読みいただければ幸いである。

慶應義塾大学医学部眼科学教室
坪田 一男