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小耳症・外耳道閉鎖症に対する機能と形態の再建
形成外科、耳鼻咽喉科、言語聴覚士に向けた小耳症・外耳道閉鎖症手術の解説書

編 集 | 朝戸 裕貴 / 加我 君孝 |
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定 価 | 9,020円 (8,200円+税) |
発行日 | 2009/05/10 |
ISBN | 978-4-307-37096-7 |
B5判・150頁・図数:113枚・カラー図数:33枚
在庫状況 | なし |
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小耳症・外耳道閉鎖症の手術は、これまでは国内外においても、形成外科と耳鼻咽喉科で別々に取り組まれてきておりました。形成外科では耳介形成手術のみが行われ、形成外科医からは、もし耳鼻咽喉科で外耳道形成術を実施してもらうと、一生耳漏に悩んだり、なかには顔面神経麻痺が生じる場合があると説明を受けることがしばしばでありました。一方、耳鼻咽喉科では外耳道形成と聴力改善手術という機能改善の手術が中心に行われ、耳介の形状については特別の関心が払われないこともありました。しかし、21世紀を迎える頃から、この疾患に対する手術は考え方も技術も大きな進歩を遂げるようになり、ここに最新の成果を盛り込んだ本書を刊行する意義があります。
編者の私共はもともと東京大学医学部附属病院の形成外科と耳鼻咽喉科に在籍し、小耳症・外耳道閉鎖症について相談し、機能も形態も新しい考えと手術で我々の理想を実現したいと考えておりました。ちょうどヘリカルCTで側頭骨外表の軟部組織と頭蓋骨を3次元で再構成できるようになり、この3次元CTが2つの科をつなぐ手術のための設計図のような役割をするようになりました。すなわち、バーチャルに乳突部の外耳道を造設する位置を決め、次に耳介形成を行う位置を決めることができるようになったのです。我々の方法では、第1回目の手術は形成外科が肋軟骨を用いて耳介のフレームワークを作り、側頭部の皮下に埋め込みます。第2回目は形成外科と耳科の合同手術を行います。すなわち、耳介を立ち上げ、外耳道を造設し、耳小骨連鎖の再建、鼓膜と外耳道の形成を行い、最後に耳介後部に肋軟骨のブロックを置き皮弁で覆い終了します。合同手術はおおよそ6時間はかかります。しかし手術回数は2回で済ませることができます。もし、この手術を合同で実施せずに別々に行うと、2つの科でそれぞれ2〜3回、合計4〜6回になると思われます。両側の小耳症の場合は、その2倍の手術回数となります。このように、合同手術は機能と形態を再建するだけでなく、手術回数を少なくさせる大きな利点があり、手術を受ける側の心理的負担と教育や経済的負担も少なくすることができます。
本書では、我々の手術の考え方、診断、術式、結果、長期成績、社会保障、心理などを紹介いたします。同時に、これまで取り組んできた小耳症・外耳道閉鎖症の患者の会である“青空の会”と手術を体験した患者の作文集の発行などの活動についても紹介いたします。本書は形成外科、耳鼻咽喉科、言語聴覚士、学校の先生方ならびに患者とその関係者の皆様の参考にしていただくことを願って、新しい時代にふさわしい内容を盛り込みました。小耳症・外耳道閉鎖症の臨床に関係する皆様にとって有益なテキストになることを期待しております。
(「はじめに」より)
編者の私共はもともと東京大学医学部附属病院の形成外科と耳鼻咽喉科に在籍し、小耳症・外耳道閉鎖症について相談し、機能も形態も新しい考えと手術で我々の理想を実現したいと考えておりました。ちょうどヘリカルCTで側頭骨外表の軟部組織と頭蓋骨を3次元で再構成できるようになり、この3次元CTが2つの科をつなぐ手術のための設計図のような役割をするようになりました。すなわち、バーチャルに乳突部の外耳道を造設する位置を決め、次に耳介形成を行う位置を決めることができるようになったのです。我々の方法では、第1回目の手術は形成外科が肋軟骨を用いて耳介のフレームワークを作り、側頭部の皮下に埋め込みます。第2回目は形成外科と耳科の合同手術を行います。すなわち、耳介を立ち上げ、外耳道を造設し、耳小骨連鎖の再建、鼓膜と外耳道の形成を行い、最後に耳介後部に肋軟骨のブロックを置き皮弁で覆い終了します。合同手術はおおよそ6時間はかかります。しかし手術回数は2回で済ませることができます。もし、この手術を合同で実施せずに別々に行うと、2つの科でそれぞれ2〜3回、合計4〜6回になると思われます。両側の小耳症の場合は、その2倍の手術回数となります。このように、合同手術は機能と形態を再建するだけでなく、手術回数を少なくさせる大きな利点があり、手術を受ける側の心理的負担と教育や経済的負担も少なくすることができます。
本書では、我々の手術の考え方、診断、術式、結果、長期成績、社会保障、心理などを紹介いたします。同時に、これまで取り組んできた小耳症・外耳道閉鎖症の患者の会である“青空の会”と手術を体験した患者の作文集の発行などの活動についても紹介いたします。本書は形成外科、耳鼻咽喉科、言語聴覚士、学校の先生方ならびに患者とその関係者の皆様の参考にしていただくことを願って、新しい時代にふさわしい内容を盛り込みました。小耳症・外耳道閉鎖症の臨床に関係する皆様にとって有益なテキストになることを期待しております。
(「はじめに」より)
1. 病因と遺伝子
1) 病因と遺伝子
1 症候群の検討から進む病因解明
2 小耳症と外耳道閉鎖症の単独発症の危険因子
3 耳の発生
4 小耳症および外耳道閉鎖症の病因
5 病因解明の展望と臨床応用
2. 診断
1) 形状の分類(耳介・外耳道)
1 耳介の形状の分類
2 外耳道の形状による分類
2) 画像診断
1 撮影年齢
2 画像評価
3 3次元CTによる評価
3) 聴力検査
1 純音聴力検査
2 骨導補聴器装用下の聴力検査
3 骨導による方向感検査
4) 骨導ABR、骨導ASSR
1 新生児期における聴覚の精密検査
2 骨導ABR
3 骨導ASSR
4 症例
5 今後の課題
5) 耳介・外耳道の発生と発達
1 鰓弓の分化と神経堤細胞の発生
2 耳介の発生
3 外耳道の発生
4 エンドセリン1と鰓弓形態形成
6) 肋軟骨の発達
1 小耳症手術における肋軟骨の使用
2 肋軟骨の発育
3 肋軟骨の骨化
4 肋軟骨の術前評価における注意点
7) 再建耳介の位置の決定
1術前の評価
2耳介形成術において
8) 耳小骨の奇形
9) 手術までのフォローアップ、心理
1 片側小耳症・外耳道閉鎖症の場合
2 両側小耳症の場合
10) 手術待機時期における中耳炎と皮下膿瘍
1 症例
11) 手術時期と術式の決定
1 適切な手術開始の年齢
2 手術術式の決定
3. 手術術式
1)肋軟骨移植による耳介形成術
1 手術年齢
2 耳介の位置の決定
3 lobuletypeに対する耳介形成術
4 smallconchatypeおよびconchatypeの耳介形成術
5 考察
2) 耳介挙上と外耳道形成の合同手術
a. 合同手術における耳介挙上術
1 デザイン
2 採皮と浅側頭筋膜の挙上
3 耳介の挙上反転と深側頭筋膜の挙上
4 外耳道入口部の作成と外耳道形成の準備
5 支柱軟骨と皮膚管の作成
6 皮膚管の挿入と支柱軟骨の固定・被覆
7 外耳道入口部と頭皮の縫合
8 耳後部の植皮とタイオーバー固定
9 考察
b. 外耳道・中耳の形成術
3) 単独の耳介挙上術
1 手術準備と手術手順
2 術後管理と合併症
4. 合併症
1) 術後性外耳道の感染
1 術後性外耳道の感染の頻度
2 細菌叢
3 術式の工夫
2) 皮膚壊死
3) 顔面神経麻痺
1 顔面神経の走行異常と術前評価
2 アプローチ法と顔面神経麻痺
3 術後顔面神経麻痺の発生頻度と機序
4 顔面神経麻痺の予防
4) 肋軟骨採取部位の胸郭変形
1 胸郭変形
2 胸郭変形の原因
3 胸郭変形を回避するための対策
4 本人・家族への説明
5. 術後の治療
1) 耳介の処置
1 耳介形成術の術後処置
2 耳介挙上術の術後処置
3 耳介形成術、耳介挙上術後の患者指導
2) 外耳道の処置
1 外耳道にマイナートラブルが生じたときの対応
3) 脱毛
1 脱毛の必要性
2 脱毛方法の種類と適応
3 脱毛の実際
4 脱毛後の管理と合併症
6. 術後の聴力
1) 術後の聴力 −鼓膜の浅在化の影響−
1 術後聴力の評価
2 術後の耳穴式補聴器のフィッティング
3 耳穴式補聴器の両耳装用
7. 社会保障
1) 自立支援医療(育成医療)
1 自立支援医療(育成医療)の対象となる障害
2 申請手続き
3 公費負担額
4 自立支援医療(育成医療)意見書の記載にあたって
2) 身体障害者福祉法の診断書
1 身体障害者福祉法の歴史
2 聴覚障害における身体障害者の適応
3 給付の内容
4 身体障害者手帳申請の流れ
5 診断書・意見書の記入例
3) 補聴器の交付
8. その他
1) 顔面神経刺激装置
1 刺激器の背景
2 実際の使用手順
3 小耳症の顔面神経走行
2) 両側骨導補聴器
1 補聴器の仕組み
2 両耳骨導
3 新しい骨導補聴システム
3) 耳介プロテーゼの問題点
4) 患者の会
1 「青空の会」の発足
索引
1) 病因と遺伝子
1 症候群の検討から進む病因解明
2 小耳症と外耳道閉鎖症の単独発症の危険因子
3 耳の発生
4 小耳症および外耳道閉鎖症の病因
5 病因解明の展望と臨床応用
2. 診断
1) 形状の分類(耳介・外耳道)
1 耳介の形状の分類
2 外耳道の形状による分類
2) 画像診断
1 撮影年齢
2 画像評価
3 3次元CTによる評価
3) 聴力検査
1 純音聴力検査
2 骨導補聴器装用下の聴力検査
3 骨導による方向感検査
4) 骨導ABR、骨導ASSR
1 新生児期における聴覚の精密検査
2 骨導ABR
3 骨導ASSR
4 症例
5 今後の課題
5) 耳介・外耳道の発生と発達
1 鰓弓の分化と神経堤細胞の発生
2 耳介の発生
3 外耳道の発生
4 エンドセリン1と鰓弓形態形成
6) 肋軟骨の発達
1 小耳症手術における肋軟骨の使用
2 肋軟骨の発育
3 肋軟骨の骨化
4 肋軟骨の術前評価における注意点
7) 再建耳介の位置の決定
1術前の評価
2耳介形成術において
8) 耳小骨の奇形
9) 手術までのフォローアップ、心理
1 片側小耳症・外耳道閉鎖症の場合
2 両側小耳症の場合
10) 手術待機時期における中耳炎と皮下膿瘍
1 症例
11) 手術時期と術式の決定
1 適切な手術開始の年齢
2 手術術式の決定
3. 手術術式
1)肋軟骨移植による耳介形成術
1 手術年齢
2 耳介の位置の決定
3 lobuletypeに対する耳介形成術
4 smallconchatypeおよびconchatypeの耳介形成術
5 考察
2) 耳介挙上と外耳道形成の合同手術
a. 合同手術における耳介挙上術
1 デザイン
2 採皮と浅側頭筋膜の挙上
3 耳介の挙上反転と深側頭筋膜の挙上
4 外耳道入口部の作成と外耳道形成の準備
5 支柱軟骨と皮膚管の作成
6 皮膚管の挿入と支柱軟骨の固定・被覆
7 外耳道入口部と頭皮の縫合
8 耳後部の植皮とタイオーバー固定
9 考察
b. 外耳道・中耳の形成術
3) 単独の耳介挙上術
1 手術準備と手術手順
2 術後管理と合併症
4. 合併症
1) 術後性外耳道の感染
1 術後性外耳道の感染の頻度
2 細菌叢
3 術式の工夫
2) 皮膚壊死
3) 顔面神経麻痺
1 顔面神経の走行異常と術前評価
2 アプローチ法と顔面神経麻痺
3 術後顔面神経麻痺の発生頻度と機序
4 顔面神経麻痺の予防
4) 肋軟骨採取部位の胸郭変形
1 胸郭変形
2 胸郭変形の原因
3 胸郭変形を回避するための対策
4 本人・家族への説明
5. 術後の治療
1) 耳介の処置
1 耳介形成術の術後処置
2 耳介挙上術の術後処置
3 耳介形成術、耳介挙上術後の患者指導
2) 外耳道の処置
1 外耳道にマイナートラブルが生じたときの対応
3) 脱毛
1 脱毛の必要性
2 脱毛方法の種類と適応
3 脱毛の実際
4 脱毛後の管理と合併症
6. 術後の聴力
1) 術後の聴力 −鼓膜の浅在化の影響−
1 術後聴力の評価
2 術後の耳穴式補聴器のフィッティング
3 耳穴式補聴器の両耳装用
7. 社会保障
1) 自立支援医療(育成医療)
1 自立支援医療(育成医療)の対象となる障害
2 申請手続き
3 公費負担額
4 自立支援医療(育成医療)意見書の記載にあたって
2) 身体障害者福祉法の診断書
1 身体障害者福祉法の歴史
2 聴覚障害における身体障害者の適応
3 給付の内容
4 身体障害者手帳申請の流れ
5 診断書・意見書の記入例
3) 補聴器の交付
8. その他
1) 顔面神経刺激装置
1 刺激器の背景
2 実際の使用手順
3 小耳症の顔面神経走行
2) 両側骨導補聴器
1 補聴器の仕組み
2 両耳骨導
3 新しい骨導補聴システム
3) 耳介プロテーゼの問題点
4) 患者の会
1 「青空の会」の発足
索引