ATOMSブックシリーズ1
急性中耳炎治療入門
豊富な図や写真を用いて実際的な中耳炎診療の基本手技を解説!!
編 集 |
山中 昇 |
定 価 |
5,280円 (4,800円+税) |
発行日 |
2009/05/25 |
ISBN |
978-4-307-37099-8 |
B5判・256頁・図数:129枚・カラー図数:16枚
肺炎球菌が先に感染を起こして、周辺の粘膜上皮の「地ならし」をしてくれると、その後にインフルエンザ菌の粘膜上皮への付着、感染が起こりやすくなると考えられる。すなわち、急性中耳炎では肺炎球菌がいつも主役であり、インフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリスが脇役(最近は、主役に躍り出ることが多くなってきているが)を演じているのである。
このような細菌感染の巧妙なメカニズムを知ることにより、これからの感染症治療は抗菌薬で細菌を叩くだけではだめであり、さらにワクチンによる免疫学的予防だけでもだめであることが明白となってきた。すなわち、いつまでも「イタチごっこ」の繰り返しをしていては、微生物はより巧妙に生き残る術を身につけるだけとなるように思われる。ヒトに感染する微生物はある程度以上に病原性が強まることはない。なぜなら、宿主であるヒトが容易に死んでしまってはその微生物が生き残ることができないからである。すなわち、このような微生物にとってはヒトと共存しながら生き長らえることが子孫を残す最良の方法なのである。このように考えると将来の感染症治療は、微生物と共存を計るような治療法が最も望ましいのではないだろうか。ウイルス、細菌の粘膜上皮への付着を防止する薬剤の開発(決して微生物を殺すことがないので耐性化しない)、細菌同士の相互作用を利用して、より病原性の低い細菌を導入することにより、病原性の高い細菌の増殖を抑制する方法、自然免疫の賦活薬の開発など、これからの発展が期待される。微生物は攻撃すればその生き残りを賭けて人類に挑んでくるので、生きるか死ぬかの戦いにより多くのテロリストをつくるよりは、共存という生き方を選択すべきではないだろうか。
急性中耳炎は身近な感染症であるが、小児において最も頻度の高い感染症の一つであり、その病態、治療、予防、管理などを追求することにより、細菌側からの微生物学的視点、宿主側からの免疫・防御的視点、さらに医療経済学的視点と、さまざまな局面から極めて多くのことを学ぶことができる。
(「序にかえて」より一部を抜粋)
1章 子どもの鼓膜の診かた
1 ベーシックコース
2 アドバンスコース
3 鼓膜の所見の取りかた
2章 抗菌薬の選び方と使い方
1 どのように選択し使うのか
2 症例に基づいた選択と使い方
3章 痛みに対する治療の実際
1 鎮痛薬は何をいつ使うか −基本的な使い方
2 症例に基づいた使い方
4章 鼓膜切開をどのような症例にいつ行ったらよいか
1 私はこうしている(その1)
2 私はこうしている(その2)
3 私はこうしている(その3)
5章 鼓膜切開の実際
1 鼓膜麻酔の方法
2 鼓膜切開の方法
3 鼓膜切開の有用性と手技の実際
6章 レーザー(OToLAM)による中耳炎治療
1 OtoLAMについて
2 OtoLAMによる中耳炎治療の実際
3 鼓膜切開とOtoLAMの比較
7章 鼓膜切開後の管理
1 鼓膜切開後のよくある疑問
2 鼓膜切開後の処置
3 鼓膜切開後の管理・治療の実際
8章 鼓膜換気チューブの適応と留置期間
1 鼓膜換気チューブの選択(その1)
2 鼓膜換気チューブの選択(その2)
9章 鼓膜換気チューブ挿入術の実際
a.外来局麻下
1 考え方と手技の実際(その1)
2 考え方と手技の実際(その2)
b.入院全麻下
1 考え方と手技の実際(その1)
2 考え方と手技の実際(その2)
10章 鼓膜換気チューブ抜去時期の判断
1 チューブ留置の意義と抜去時期の考え方
2 実際の臨床成績から考える
11章 鼓膜換気チューブ留置中の感染対策
1 耳漏に対する処置を中心に
2 耳漏(MRSAを含む)に対する治療
12章 漢方治療の適応と実際
1 十全大補湯の中耳炎への応用
2 十全大補湯投与の実際とその成績
13章 鼓膜・症例データベースの作り方
1 当院の工夫(その1)
2 当院の工夫(その2)
3 当院の工夫(その3)
4 当院の工夫(その4)