小児滲出性中耳炎診療ガイドライン 2022年版 第2版

滲出性中耳炎の臨床を強力にサポートする充実のアップデート!

編 集 日本耳科学会 / 日本小児耳鼻咽喉科学会
定 価 2,860円
(2,600円+税)
発行日 2022/09/30
ISBN 978-4-307-37128-5

B5判・120頁・図数:8枚・カラー図数:29枚

在庫状況 あり

小児の滲出性中耳炎は、難聴を引き起こして言語発達の遅れや学習の妨げを生じさせるなど重大な結果に繋がりかねない疾患で、正確な診断と適切な治療が求められます。治療では薬物療法、鼓膜換気チューブ留置術やアデノイド切除術の適応の見極めなどで難しい判断を求められます。本書では、解説項目と前版以降に集積したエビデンスも加えたCQを用いて、治療の選択や実際について詳しく解説することで、実地臨床を強くサポートします。
巻頭資料・カラー付図
I 滲出性中耳炎の概要
1.病態
2.鼓膜所見
3.検査所見
4.治療
II 小児滲出性中耳炎の鼓膜所見(カラー付図)
III 小児滲出性中耳炎診療時の問診の目的、ならびに問診項目
IV 初版(2015年版)からの改訂点
小児滲出性中耳炎の診療アルゴリズム
CQ・推奨一覧

第1章 作成の経緯と概要
1.要約
2.作成者
3.資金提供者・スポンサー・利益相反
4.作成の背景および沿革
5.作成目的ならびに目標
6.公開・利用法
7.対象
8.エビデンスの収集
9.エビデンスの評価
10.推奨および推奨度の決定基準
11.リリース前のレビュー
12.更新の計画
13.モニタリング・監査
14.推奨および理由説明
15.患者の希望
16.診療アルゴリズム
17.実施における検討事項
18.小児滲出性中耳炎の定義
19.小児滲出性中耳炎の病因・病態
20.小児滲出性中耳炎の合併症と後遺症

第2章 診断・検査法
1.滲出性中耳炎の病態把握に、問診は有用か
2.滲出性中耳炎は、どのような鼓膜所見のときに診断されるか
3.滲出性中耳炎の病態観察に、気密耳鏡(ニューマチック・オトスコープ)は有用か
4.滲出性中耳炎の診断に、聴力検査は有用か
5.滲出性中耳炎の診断に、ティンパノメトリーは有用か
6.滲出性中耳炎の難聴の診断に、耳音響放射は有用か
7.滲出性中耳炎の病態把握に、周辺器官(鼻副鼻腔、上咽頭)の所見は有用か
8.滲出性中耳炎の病態把握に、言語・発達検査(構音検査、発達検査)は有用か
9.滲出性中耳炎の診断に、画像検査は有用か

第3章 診療アルゴリズムと治療(Clinical Question)
小児滲出性中耳炎の診療アルゴリズム
CQ 1 滲出性中耳炎の経過観察期間はどのくらいが適切か
CQ 2 滲出性中耳炎に抗菌薬投与は有効か
CQ 3 滲出性中耳炎に抗菌薬以外の薬物治療は有効か
CQ 4 滲出性中耳炎に、薬物以外の保存的治療(局所処置や自己通気)は有効か
CQ 5 滲出性中耳炎に、鼓膜切開術は有効か
CQ 6 鼓膜換気チューブ留置術はどのような症例に適応となるか
CQ 7 鼓膜換気チューブの術後管理はどのように行うか
CQ 8 鼓膜換気チューブはいつまで留置すべきか
CQ 9 滲出性中耳炎にアデノイド切除術、口蓋扁桃摘出術は有効か
CQ 10 一側性の滲出性中耳炎に対して鼓膜換気チューブ留置術は有効か
追補CQ 癒着性中耳炎に進展した場合、どのように対処するか

第4章 ダウン症、口蓋裂に対する取り扱い
I ダウン症に対する取り扱い
1.難聴の頻度
2.滲出性中耳炎の罹患頻度とその経過
3.鼓膜換気チューブ留置術の有効性
4.補聴器装用について
5.ダウン症における滲出性中耳炎の診療指針
II 口蓋裂に対する取り扱い
1.病態
2.罹患率
3.診断
4.治療
5.口蓋裂における滲出性中耳炎の診療指針

第5章 付記〜診断技術向上にむけた将来展望
小児滲出性中耳炎の新しい検査法
1.Multi-frequency tympanometry(MFT)
2.耳科用光コヒーレンストモグラフィー
(光干渉断層撮影:optical coherence tomography:OCT)
2022年版 序

本邦での医療情勢を踏まえ、エビデンスに基づいた小児滲出性中耳炎診療ガイドラインが初めて作成されたのが2015年でした。その後いただいたパブリックコメントや新しい知見を踏まえ、この度、待望の改訂版(2022年版)が完成しました。
 滲出性中耳炎は、日常臨床で頻繁に遭遇する中耳炎の一つです。とくに小児においては、就学前に90%が一度は罹患するという報告もあり、小児に難聴を引き起こす疾患として最も頻度が高い疾患です。気づかれずに見過ごされている場合には言語発達の遅れや学習の妨げが生じるなど、その影響は極めて大きいといえます。さらに長期的には癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎の原因にもなるため、正確な診断と適切な対応が重要となります。また、治療に関しても薬物療法、鼓膜換気チューブ留置術やアデノイド切除術の適応など、難しい判断を求められることも多く、エビデンスに基づいた診療が要求されます。
 今回の改訂では、本疾患の概念や治療法が図表ともに明解に示され、よりユーザーフレンドリーなガイドラインになっています。また、今後の診断技術向上にむけた将来展望にも触れられています。耳鼻咽喉科医のみならず、小児科医をはじめとする小児医療に関係するすべての方々に有用な情報を提供すると考えられます。
本診療ガイドラインは、小児滲出性中耳炎診療ガイドライン作成委員会が膨大な時間を費やした努力の結晶ですが、発刊に際しては日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事会および学術委員会にも監修をしていただきました。改めて御礼申し上げます。
 最後に、このように読みごたえのあるガイドラインを作成いただいた日高浩史委員長をはじめとして、作成委員会に参加された委員の皆様の熱意と努力に対して、日本耳科学会を代表して深甚なる敬意と謝意を表するとともに、小児滲出性中耳炎への対応が、本診療ガイドラインの活用によってますます充実することを祈っています。

2022年9月
一般社団法人 日本耳科学会理事長
欠畑 誠治