Copyright© KANEHARA & Co., LTD. All Rights Reserved.
顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版 第2版
ガイドラインに進化した顔面神経麻痺診療のバイブル誕生!
編 集 | 日本顔面神経学会 |
---|---|
定 価 | 3,300円 (3,000円+税) |
発行日 | 2023/05/20 |
ISBN | 978-4-307-37135-3 |
B5判・172頁・図数:37枚
在庫状況 | あり |
---|
『顔面神経麻痺診療の手引2011年版』を、Bell麻痺・Hunt症候群・外傷性顔面神経麻痺を対象に、『ガイドライン』として大改訂。日本顔面神経学会認定の「顔面神経麻痺治療医」、「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」のテキストで、リハビリテーション治療・形成外科的治療・鍼灸治療・その他の治療内容を詳説。システマティックレビューに基づいたCQも充実。
CQ・推奨一覧
治療のフローチャート
I ガイドライン2023年版の作成手順
◇1 ガイドライン作成の目的
◇2 作成者
◇3 対象疾患、対象項目
◇4 想定される利用者、利用方法
◇5 ガイドライン使用上の注意
◇6 GRADEに基づくエビデンスの強さ、推奨の決定
1)文献検索および組入論文の選択
2)エビデンスの強さの決定
3)推奨決定
4)患者・市民参画
◇7 外部評価
◇8 資金源
◇9 利益相反
◇10 改訂予定
II 総論
◇1 対象疾患(Bell麻痺、Hunt症候群、外傷性麻痺)
◇2 末梢性顔面神経麻痺診療の流れ
1)問診
2)末梢性顔面神経麻痺に対する検査
1 主観的麻痺程度評価
2 客観的麻痺程度評価
3 Electroneurography(ENoG)
4 Nerve Excitability Test(NET:神経興奮性検査)
5 アブミ骨筋反射(SR)/音響性耳小骨筋反射(AR)
6 流涙検査・唾液腺機能検査
7 味覚検査
8 ウイルス学的検査
9 CT・MRI検査
◇3 末梢性顔面神経麻痺に対する治療
1)薬物治療
1 ステロイドの投与方法
2 抗ヘルペス薬の投与方法
3 その他の薬剤
2)顔面神経減荷手術
3)リハビリテーション治療
1 急性期のリハビリテーション治療
2 回復期のリハビリテーション治療
3 生活期のリハビリテーション治療
4)形成外科的手術
1 静的再建術
2 動的再建術
5)鍼治療
1 鍼治療の目的と治療法
2 評価について
3 麻痺患者のQOL向上に寄与する鍼治療の可能性
4 最後に
6)ボツリヌス毒素治療
1 顔面神経麻痺後遺症の病態
2 ボツリヌス毒素
3 適応
4 治療上の留意点
5 後遺症の評価
7)星状神経節ブロック
1 背景
2 解説
◇4 注意事項
1)小児に対する診療
2)妊婦に対する診療
3)高齢者に対する診療
1 顔面神経麻痺の特徴
2 生理機能、合併症
4)ステロイドの投与に注意を要する合併症症例に対する診療
1 糖尿病
2 高血圧
3 精神疾患
4 B型肝炎
◇5 治療効果判定
1)方法・基準
III 各論
◇1 Bell麻痺
1)疾患概念・疫学
2)病因・病態
3)診断基準・重症度分類
4)治療のClinical Question
Bell麻痺治療のフローチャート
CQ1-1 Bell麻痺に通常量のステロイド全身投与は有効か?
CQ1-2 Bell麻痺に高用量のステロイド全身投与は有効か?
CQ1-3 Bell麻痺にステロイド鼓室内投与は有効か?
CQ1-4 Bell麻痺に抗ウイルス薬をステロイド全身投与に併用することは有効か?
CQ1-5 Bell麻痺に顔面神経減荷術は有効か?
◇2 Hunt症候群
1)疾患概念・疫学
2)病因・病態
3)診断基準・重症度分類
4)治療のClinical Question
Hunt症候群治療のフローチャート
CQ2-1 Hunt症候群に通常量のステロイド全身投与は有効か?
CQ2-2 Hunt症候群に高用量のステロイド全身投与は有効か?
CQ2-3 Hunt症候群にステロイド鼓室内投与は有効か?
CQ2-4 Hunt症候群に抗ウイルス薬は有効か?
CQ2-5 Hunt症候群に顔面神経減荷術は有効か?
◇3 外傷性麻痺(側頭骨骨折に伴う顔面神経麻痺)
1)疾患概念・疫学
2)病因・病態
1 即発性麻痺と遅発性麻痺
2 縦骨折と横骨折
3)診断基準・重症度分類
4)外傷性顔面神経麻痺の治療
1 保存的治療
2 手術的治療(顔面神経減荷術)の適応決定と手術法
3 手術のアプローチ法
4 顔面神経の取り扱い
5)治療のClinical Question
外傷性麻痺治療のフローチャート
CQ3-1 外傷性麻痺にステロイド全身投与は有効か?
CQ3-2 外傷性麻痺に顔面神経減荷術は有効か?
◇4 末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺、Hunt症候群、外傷性麻痺)
1)治療のClinical Question
CQ4-1 末梢性顔面神経麻痺(Bell 麻痺、Hunt 症候群、外傷性麻痺)にリハビリテーション治療は有効か?
CQ4-2 末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺、Hunt症候群、外傷性麻痺)に鍼治療は有効か?
CQ4-3 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)にボツリヌス毒素は有効か?
CQ4-4 末梢性顔面神経麻痺に星状神経節ブロックは有効か?
CQ4-5 末梢性・非回復性顔面神経麻痺に形成外科的手術は有効か?
CQ4-6 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)に形成外科的手術は有効か?
IV システマティックレビュー・サマリー
システマティックレビューチームによる作業過程
SR1-1 Bell麻痺に対して通常量のステロイド全身投与は、ステロイド全身投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR1-2 Hunt 症候群に対して通常量のステロイド全身投与は、ステロイド全身投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR1-3 外傷性麻痺に対してステロイド全身投与は、ステロイド全身投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR2-1 Bell 麻痺、Hunt 症候群に対してステロイド大量療法はステロイド通常量と比べ、治癒率を向上させるか?
SR3-1 Bell 麻痺、Hunt 症候群に対してステロイド鼓室内投与はステロイド鼓室内投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR4-1 Bell麻痺に対してステロイド全身投与への抗ウイルス薬投与併用は、併用しない場合に比べ治癒率を向上させるか?
SR4-2 Hunt症候群に対して抗ウイルス薬投与は、投与しない場合に比べ治癒率を向上させるか?
SR5-1 末梢性顔面神経麻痺(Bell 麻痺、Hunt 症候群、外傷性麻痺)に対して顔面神経減荷術は、顔面神経減荷術を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR6-1 末梢性顔面神経麻痺に対して鍼治療は、鍼治療を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR7-1 末梢性顔面神経麻痺に対してリハビリテーション治療は、リハビリテーション治療を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR8-1 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)にボツリヌス毒素の投与は治癒率が向上するか?
SR9-1 末梢性顔面神経麻痺に星状神経節ブロックは、星状神経節ブロックを行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR10-1 末梢性・非回復性顔面神経麻痺に形成外科的手術は有効か?
SR10-2 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)に形成外科的手術は有効か?
索引
治療のフローチャート
I ガイドライン2023年版の作成手順
◇1 ガイドライン作成の目的
◇2 作成者
◇3 対象疾患、対象項目
◇4 想定される利用者、利用方法
◇5 ガイドライン使用上の注意
◇6 GRADEに基づくエビデンスの強さ、推奨の決定
1)文献検索および組入論文の選択
2)エビデンスの強さの決定
3)推奨決定
4)患者・市民参画
◇7 外部評価
◇8 資金源
◇9 利益相反
◇10 改訂予定
II 総論
◇1 対象疾患(Bell麻痺、Hunt症候群、外傷性麻痺)
◇2 末梢性顔面神経麻痺診療の流れ
1)問診
2)末梢性顔面神経麻痺に対する検査
1 主観的麻痺程度評価
2 客観的麻痺程度評価
3 Electroneurography(ENoG)
4 Nerve Excitability Test(NET:神経興奮性検査)
5 アブミ骨筋反射(SR)/音響性耳小骨筋反射(AR)
6 流涙検査・唾液腺機能検査
7 味覚検査
8 ウイルス学的検査
9 CT・MRI検査
◇3 末梢性顔面神経麻痺に対する治療
1)薬物治療
1 ステロイドの投与方法
2 抗ヘルペス薬の投与方法
3 その他の薬剤
2)顔面神経減荷手術
3)リハビリテーション治療
1 急性期のリハビリテーション治療
2 回復期のリハビリテーション治療
3 生活期のリハビリテーション治療
4)形成外科的手術
1 静的再建術
2 動的再建術
5)鍼治療
1 鍼治療の目的と治療法
2 評価について
3 麻痺患者のQOL向上に寄与する鍼治療の可能性
4 最後に
6)ボツリヌス毒素治療
1 顔面神経麻痺後遺症の病態
2 ボツリヌス毒素
3 適応
4 治療上の留意点
5 後遺症の評価
7)星状神経節ブロック
1 背景
2 解説
◇4 注意事項
1)小児に対する診療
2)妊婦に対する診療
3)高齢者に対する診療
1 顔面神経麻痺の特徴
2 生理機能、合併症
4)ステロイドの投与に注意を要する合併症症例に対する診療
1 糖尿病
2 高血圧
3 精神疾患
4 B型肝炎
◇5 治療効果判定
1)方法・基準
III 各論
◇1 Bell麻痺
1)疾患概念・疫学
2)病因・病態
3)診断基準・重症度分類
4)治療のClinical Question
Bell麻痺治療のフローチャート
CQ1-1 Bell麻痺に通常量のステロイド全身投与は有効か?
CQ1-2 Bell麻痺に高用量のステロイド全身投与は有効か?
CQ1-3 Bell麻痺にステロイド鼓室内投与は有効か?
CQ1-4 Bell麻痺に抗ウイルス薬をステロイド全身投与に併用することは有効か?
CQ1-5 Bell麻痺に顔面神経減荷術は有効か?
◇2 Hunt症候群
1)疾患概念・疫学
2)病因・病態
3)診断基準・重症度分類
4)治療のClinical Question
Hunt症候群治療のフローチャート
CQ2-1 Hunt症候群に通常量のステロイド全身投与は有効か?
CQ2-2 Hunt症候群に高用量のステロイド全身投与は有効か?
CQ2-3 Hunt症候群にステロイド鼓室内投与は有効か?
CQ2-4 Hunt症候群に抗ウイルス薬は有効か?
CQ2-5 Hunt症候群に顔面神経減荷術は有効か?
◇3 外傷性麻痺(側頭骨骨折に伴う顔面神経麻痺)
1)疾患概念・疫学
2)病因・病態
1 即発性麻痺と遅発性麻痺
2 縦骨折と横骨折
3)診断基準・重症度分類
4)外傷性顔面神経麻痺の治療
1 保存的治療
2 手術的治療(顔面神経減荷術)の適応決定と手術法
3 手術のアプローチ法
4 顔面神経の取り扱い
5)治療のClinical Question
外傷性麻痺治療のフローチャート
CQ3-1 外傷性麻痺にステロイド全身投与は有効か?
CQ3-2 外傷性麻痺に顔面神経減荷術は有効か?
◇4 末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺、Hunt症候群、外傷性麻痺)
1)治療のClinical Question
CQ4-1 末梢性顔面神経麻痺(Bell 麻痺、Hunt 症候群、外傷性麻痺)にリハビリテーション治療は有効か?
CQ4-2 末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺、Hunt症候群、外傷性麻痺)に鍼治療は有効か?
CQ4-3 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)にボツリヌス毒素は有効か?
CQ4-4 末梢性顔面神経麻痺に星状神経節ブロックは有効か?
CQ4-5 末梢性・非回復性顔面神経麻痺に形成外科的手術は有効か?
CQ4-6 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)に形成外科的手術は有効か?
IV システマティックレビュー・サマリー
システマティックレビューチームによる作業過程
SR1-1 Bell麻痺に対して通常量のステロイド全身投与は、ステロイド全身投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR1-2 Hunt 症候群に対して通常量のステロイド全身投与は、ステロイド全身投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR1-3 外傷性麻痺に対してステロイド全身投与は、ステロイド全身投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR2-1 Bell 麻痺、Hunt 症候群に対してステロイド大量療法はステロイド通常量と比べ、治癒率を向上させるか?
SR3-1 Bell 麻痺、Hunt 症候群に対してステロイド鼓室内投与はステロイド鼓室内投与を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR4-1 Bell麻痺に対してステロイド全身投与への抗ウイルス薬投与併用は、併用しない場合に比べ治癒率を向上させるか?
SR4-2 Hunt症候群に対して抗ウイルス薬投与は、投与しない場合に比べ治癒率を向上させるか?
SR5-1 末梢性顔面神経麻痺(Bell 麻痺、Hunt 症候群、外傷性麻痺)に対して顔面神経減荷術は、顔面神経減荷術を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR6-1 末梢性顔面神経麻痺に対して鍼治療は、鍼治療を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR7-1 末梢性顔面神経麻痺に対してリハビリテーション治療は、リハビリテーション治療を行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR8-1 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)にボツリヌス毒素の投与は治癒率が向上するか?
SR9-1 末梢性顔面神経麻痺に星状神経節ブロックは、星状神経節ブロックを行わない場合に比べ、治癒率を向上させるか?
SR10-1 末梢性・非回復性顔面神経麻痺に形成外科的手術は有効か?
SR10-2 顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動、顔面拘縮)に形成外科的手術は有効か?
索引
<『顔面神経麻痺診療ガイドライン』の発刊にあたって>
日本顔面神経研究会から『顔面神経麻痺診療の手引―Bell麻痺とHunt症候群―2011年版』が発刊されて、12 年が経ちました。その間に研究会は学会となり、新たな知見も増えました。一方、顔面神経麻痺の診療を正しい知識をもって行っていない医療機関が、まだ残っています。後遺障害の病的運動を促進する電気刺激治療をリハビリに使用しているところもあります。当時の運営委員長である村上信五先生が述べられているように、“顔面神経麻痺は致死的疾患ではありませんが、醜貌をきたすため、精神面や社会生活に大きく影響を与えます”。患者さんのQOL を左右する正確な知識の普及は学会の使命です。
今回のガイドラインは複数の課題を中心に改訂を行いました。『手引』ではBell 麻痺とHunt症候群に絞っていましたが、今回は外傷性麻痺を加えました。リハビリテーション治療は急性期、回復期、生活期に分け、患者さんの状態により何を目標にすべきか、明確にしました。形成外科的治療をより詳細な内容にしています。顔面神経麻痺というキーワードで検索すると、鍼灸院によるサイトが多数ヒットします。このことを踏まえ、2022 年より始まった認定制度では鍼灸師も「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」の資格の対象とし、本書では鍼治療の内容を加えました。医療安全面への配慮、小児、妊婦、高齢者、糖尿病等の合併症を有する患者さんへの治療について、注意事項という章を設けました。効果判定もわかりやすいように章立てしています。
本ガイドラインは、治療の標準化を目指した学会認定の「顔面神経麻痺相談医」「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」のテキストです。また顔面神経麻痺研究を志す医療者には、通読することで顔面神経麻痺の治療がどこまで確立しているか、またどのような点が不足しているのかも明確化される教科書にもなっています。
本書が、顔面神経麻痺の患者さんが、全国どこにおいても質が担保された医療を受けることができるようになるためのガイドラインになることを祈念しています。
令和5(2023)年5月
日本顔面神経学会理事長
九州大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科学分野教授
中川 尚志
<2023年版 序>
2011年発刊の前回『顔面神経麻痺診療の手引―Bell麻痺とHunt症候群―2011年版』から干支一回りした2023年、満を持して「ガイドライン」として顔面神経麻痺診療のバイブルをお届けいたします。18 のClinical Question に対して、しっかりとしたSystematic Reviewを実施いたしました。長年にわたり顔面神経麻痺の診療に携わってきた各診療科のエキスパートで構成するガイドライン作成委員会の合議によって、各Clinical Questionに対する推奨度を決定いたしました。顔面神経麻痺への治療法として、顔面神経減荷手術やステロイド鼓室内投与が、ガイドラインで推奨されたのは世界初です。また、形成外科的治療やリハビリテーション治療、鍼治療やボツリヌス毒素治療も新たに推奨となりました。これは、旧研究会時代から日本顔面神経学会が蓄積してきたエビデンスの賜であり、同学会の機関紙である『Facial Nerve ResearchJapan』には、このガイドラインに至る足跡が刻まれています。
本書は、顔面神経診療に携わる全ての方々に必読の一冊です。じっくりと手に取り、隅々までご覧いただきたいと思います。本書がBell麻痺、Ramsay Hunt 症候群と外傷性顔面神経麻痺の日常診療において、皆様の拠り所となることを祈願しています。
2023年5月
顔面神経麻痺診療ガイドライン 編集委員長
愛媛大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授
羽藤 直人
日本顔面神経研究会から『顔面神経麻痺診療の手引―Bell麻痺とHunt症候群―2011年版』が発刊されて、12 年が経ちました。その間に研究会は学会となり、新たな知見も増えました。一方、顔面神経麻痺の診療を正しい知識をもって行っていない医療機関が、まだ残っています。後遺障害の病的運動を促進する電気刺激治療をリハビリに使用しているところもあります。当時の運営委員長である村上信五先生が述べられているように、“顔面神経麻痺は致死的疾患ではありませんが、醜貌をきたすため、精神面や社会生活に大きく影響を与えます”。患者さんのQOL を左右する正確な知識の普及は学会の使命です。
今回のガイドラインは複数の課題を中心に改訂を行いました。『手引』ではBell 麻痺とHunt症候群に絞っていましたが、今回は外傷性麻痺を加えました。リハビリテーション治療は急性期、回復期、生活期に分け、患者さんの状態により何を目標にすべきか、明確にしました。形成外科的治療をより詳細な内容にしています。顔面神経麻痺というキーワードで検索すると、鍼灸院によるサイトが多数ヒットします。このことを踏まえ、2022 年より始まった認定制度では鍼灸師も「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」の資格の対象とし、本書では鍼治療の内容を加えました。医療安全面への配慮、小児、妊婦、高齢者、糖尿病等の合併症を有する患者さんへの治療について、注意事項という章を設けました。効果判定もわかりやすいように章立てしています。
本ガイドラインは、治療の標準化を目指した学会認定の「顔面神経麻痺相談医」「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」のテキストです。また顔面神経麻痺研究を志す医療者には、通読することで顔面神経麻痺の治療がどこまで確立しているか、またどのような点が不足しているのかも明確化される教科書にもなっています。
本書が、顔面神経麻痺の患者さんが、全国どこにおいても質が担保された医療を受けることができるようになるためのガイドラインになることを祈念しています。
令和5(2023)年5月
日本顔面神経学会理事長
九州大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科学分野教授
中川 尚志
<2023年版 序>
2011年発刊の前回『顔面神経麻痺診療の手引―Bell麻痺とHunt症候群―2011年版』から干支一回りした2023年、満を持して「ガイドライン」として顔面神経麻痺診療のバイブルをお届けいたします。18 のClinical Question に対して、しっかりとしたSystematic Reviewを実施いたしました。長年にわたり顔面神経麻痺の診療に携わってきた各診療科のエキスパートで構成するガイドライン作成委員会の合議によって、各Clinical Questionに対する推奨度を決定いたしました。顔面神経麻痺への治療法として、顔面神経減荷手術やステロイド鼓室内投与が、ガイドラインで推奨されたのは世界初です。また、形成外科的治療やリハビリテーション治療、鍼治療やボツリヌス毒素治療も新たに推奨となりました。これは、旧研究会時代から日本顔面神経学会が蓄積してきたエビデンスの賜であり、同学会の機関紙である『Facial Nerve ResearchJapan』には、このガイドラインに至る足跡が刻まれています。
本書は、顔面神経診療に携わる全ての方々に必読の一冊です。じっくりと手に取り、隅々までご覧いただきたいと思います。本書がBell麻痺、Ramsay Hunt 症候群と外傷性顔面神経麻痺の日常診療において、皆様の拠り所となることを祈願しています。
2023年5月
顔面神経麻痺診療ガイドライン 編集委員長
愛媛大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授
羽藤 直人
- 医書.jpで購入される方は
こちらから (外部サイトに移動します) - M2PLUSで購入される方は
こちらから (外部サイトに移動します)