近年、超音波(エコー)検査はポケットエコーなど機器の小型化と高性能化が進み、広く利用されるようになった。Point of care ultrasound (POCUS)は「身体診察の延長」としてベッドサイドで簡便に行うエコー検査で、病歴聴取、身体所見とともに今や重要な診断ツールである。最近では医師、臨床検査技師だけでなく、例えば看護師が褥瘡評価や残尿チェックにエコーを用いるなど種々の使用方法が工夫されている。 エコー検査は痛みを伴わず、低侵襲性という大きなメリットがある。視診、触診だけでなく、体表エコーをマスターすることによって、皮膚科医自身の診断スキルアップにも役立つ。「ちょいあてエコー」という言葉も使われるくらい、誰でも簡便に、安全に操作でき、しかもリアルタイムに結果を得られる検査である。 しかし、検査者の習熟度によって結果に影響が出る“厳しい”検査法でもある。基本的知識とスキルを習得し、正確なデータの取得と評価に努めて、再現性のある客観データを得ることが大切である。そのためには、最終診断と突き合わせることによって、エコー診断の精度をあげる努力が必要である。 著者らは皮膚科領域におけるエコー検査の有用性と簡便性を示して、その普及に役立てればと考え本書を著した。本書の特徴は、臨床のアプローチとして主訴と臨床写真、問診、触診と視診から鑑別疾患を考え、エコーで知りたいポイントをあげてエコー所見をみるというPOCUSの考え方に沿った点である。QRコードを読み取ることでエコー所見を簡単に動画として見ることができる点も特徴である。厳選した50症例は部位別に配列し、エコー所見は一定のポイントについて漏れのないように評価した。腫瘍だけでなく、血管から関節病変まで実臨床で遭遇する疾患を広く網羅した。表やチャートを用いてエコー所見の特徴を一目でわかりやすく示した。初心者にはトレーニング書として典型的エコー所見を示すとともに、エコー検査の経験がある人たちの参考となるように、同じ疾患の、症例によるバリエーションや鑑別疾患のエコー所見を示した点も特徴である。 皮膚科医、臨床検査技師はもちろんのこと、一般医、家庭医、救急医、在宅医療医、看護師など多くの方々にこの1冊を活用していただけると幸甚である。また、さらに正確な診断が得られるよう、より高性能のエコー機器の開発が進むことを期待している。