科学的根拠に基づく 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第3版

計6疾患の改訂版。GRADE方式を採用

編 集 日本皮膚科学会 / 日本皮膚悪性腫瘍学会
定 価 7,150円
(6,500円+税)
発行日 2022/06/27
ISBN 978-4-307-40061-9

B5判・384頁・図数:30枚・カラー図数:10枚

在庫状況 あり

本ガイドラインは、メラノーマ・有棘細胞癌・基底細胞癌・乳房外パジェット病・皮膚血管肉腫・皮膚リンパ腫、計6疾患のガイドライン作成委員会による、GRADE方式を採用した最新の改訂版であり、現時点における本邦での標準的診療を示した。特に悪性腫瘍は生死に直結し、訴訟のリスクも少なからずあるため、できるだけ実臨床に役立つものを目指して作成された。手元で活用できる必携の書。
皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版について
1.本ガイドラインの適応が想定される対象者、および想定される利用対象者
2.本ガイドラインを使用する場合の注意事項
3.システマティックレビューの方法
4.推奨決定の方法
5.作成過程におけるCQ 番号の変更について
6.資金
7.利益相反

第1部 メラノーマ診療ガイドライン
第1章 悪性黒色腫 (メラノーマ) 診療ガイドラインについて
第2章 悪性黒色腫(メラノーマ)総論
 1.メラノーマの疫学と病因
 2.メラノーマの診断
 3.病期と治療指針・経過観察方針
 4.手術療法:原発巣切除と転移巣切除
 5.手術療法:センチネルリンパ節生検(SLNB)・リンパ節郭清術
 6.放射線療法
 7.術後補助療法
 8.進行期治療:殺細胞性抗がん剤と分子標的薬─有害事象、脳転移治療などを含めて
 9.進行期治療:免疫チェックポイント阻害薬─有害事象、脳転移治療などを含めて
第3章 悪性黒色腫(メラノーマ)診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨
CQ 1〜CQ 8
 ◆第1部 文献 

第2部 有棘細胞癌診療ガイドライン
第1章 有棘細胞癌診療ガイドラインについて
 1.本ガイドラインの目的
 2.改訂の目的
 3.改訂ガイドラインの特徴
 4.エビデンス収集方法(文献検索)
 5.ガイドライン改訂作業の実際
 6.推奨決定の方法
 7.外部評価およびパブリックコメント、専門家コメント
 8.今後の改訂と目指すべき改訂のあり方
 9.出版後のガイドラインのモニタリング
 10.利益相反
第2章 有棘細胞癌総論
 1.概念と定義
 2.疫学
 3.発生母地、発症要因と予防
 4.臨床像
 5.病理組織像
 6.画像診断
 7.関連疾患および鑑別疾患
 8.手術療法
 9.放射線治療
 10.薬物療法
 11.その他の治療
 12.予後
 13.日光角化症
 14.ボーエン病
第3章 有棘細胞癌診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨
CQ 1〜CQ 3
◆第2部 文献
【参考】有棘細胞癌のTNM分類について(UICC第8版)

第3部 基底細胞癌診療ガイドライン
第1章 基底細胞癌診療ガイドラインについて
第2章 基底細胞癌の総論
 1.定義
 2.疫学
 3.背景因子
 4.臨床病型
 5.診断
 6.組織生検
 7.組織型
 8.病期分類
 9.再発リスクの評価
 10.再発リスク別の治療アルゴリズム
第3章 基底細胞癌の治療
 1.手術療法
 2.放射線治療
 3.基底細胞癌に対する非手術局所治療(放射線治療以外)
 4.全身化学療法
第4章 基底細胞癌診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨
 CQ 1 〜CQ 4
 ◆第3部 文献

第4部 乳房外パジェット病診療ガイドライン
第1章 乳房外パジェット病診療ガイドラインについて
第2章 乳房外パジェット病総論
 1.乳房外パジェット病の定義
 2.乳房外パジェット病の疫学
 3.背景因子
 4.臨床病型・所見
 5.診断
 6.組織型
 7.病期分類
 8.治療アルゴリズム
第3章 乳房外パジェット病の治療
 1.手術療法:原発巣切除
 2.手術療法:センチネルリンパ節生検・リンパ節郭清術
  2.1 はじめに
  2.2 センチネルリンパ節生検(保険適用あり)
  2.3 リンパ節郭清術
 3.放射線治療
 4.進行期治療(保険適用なし) 
第4章 乳房外パジェット病診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨
CQ 1〜CQ 4
 ◆第4部 文献

第5部 皮膚血管肉腫診療ガイドライン
第1章 皮膚血管肉腫診療ガイドラインについて
 1.本ガイドラインの目的
 2.改訂の目的
 3.改訂ガイドラインの特徴
 4.エビデンスの収集方法(文献検索)
 5.ガイドライン改訂作業の実際
 6.推奨決定の方法
 7.外部評価、パブリックコメントおよび専門家コメント
 8.今後の改訂と目指すべき改訂のあり方
 9.出版後のガイドラインのモニタリング
 10.利益相反
  10.1 利益相反の申告
  10.2 利益相反への対応と対策
第2章 皮膚血管肉腫診療総論
 1.皮膚血管肉腫の疫学と病因
 2.皮膚血管肉腫の診断
 3.皮膚血管肉腫の病期分類
 4.手術療法
 5.放射線療法
 6.化学療法
 7.免疫療法
 8.新規治療薬
 9.緩和
第3章 皮膚血管肉腫診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨
CQ 1〜CQ 4
◆第5部 文献

第6部 皮膚リンパ腫診療ガイドライン
第1章 皮膚リンパ腫診療ガイドラインについて
 1.本ガイドラインの目的
 2.改訂の目的
 3.改訂ガイドラインの特徴
 4.エビデンス収集方法(文献検索)
 5.ガイドライン改訂作業の実際
 6.推奨決定の方法
 7.外部評価およびパブリックコメント、専門家コメント
 8.今後の改訂と目指すべき改訂のあり方
 9.出版後のガイドラインのモニタリング
 10.利益相反
第2章 皮膚リンパ腫総論
 1.皮膚リンパ腫の病型・疫学
 2.皮膚リンパ腫診断に必要な知識
 3.皮膚リンパ腫の病期分類
 4.皮膚リンパ腫の予後
  4.1 菌状息肉症・セザリー症候群
  4.2 菌状息肉症・セザリー症候群以外の皮膚リンパ腫
1.T/NK 細胞リンパ腫
 1.1 菌状息肉症・セザリー症候群
 1.2 原発性皮膚CD30 陽性T細胞リンパ増殖異常症 
 1.3 皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
 1.4 成人T細胞白血病・リンパ腫
2.皮膚B細胞リンパ腫
 2.1 粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫および原発性皮膚濾胞中心リンパ腫
 2.2 原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫、下肢型 
3.その他のリンパ腫・リンパ増殖異常症 
 3.1  原発性皮膚CD4 陽性小型・中型T 細胞リンパ増殖異常症(primary cutaneous CD4-positive small/medium T-cell lymphoproliferative disorder) 
 3.2  原発性皮膚CD8 陽性急速進行性表皮向性細胞傷害性T 細胞リンパ腫(primary cutane-ous CD8+aggressive epidermotropic cytotoxic T-cell lymphoma) 
 3.3  原発性皮膚γδT細胞リンパ腫(primary cutaneous gamma-delta T-cell lymphoma)
 3.4  原発性皮膚末端型CD8 陽性T 細胞リンパ腫(primary cutaneous acral CD8-positive T-cell lymphoma) 
 3.5  種痘様水疱症様リンパ増殖異常症(hydroa vacciniformelike lymphoproliferative disorder)
 3.6 末梢性T細胞リンパ腫、非特定型(peripheral T-cell lymphoma, NOS) 
 3.7 EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍(EBV-positive mucocutaneous ulcer)
 3.8 節外性NK/T 細胞リンパ腫、鼻型 
第4章 皮膚リンパ腫診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨
CQ 1〜CQ 9
◆第6章 文献
 斎田俊明先生が作成委員長を務められた2007年のガイドライン、2015年に改訂された岩月啓氏先生を作成委員長としたガイドラインに次いで、皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版が完成しました。
 2017年2月の全体会議から作成作業がスタートしましたが、今回のガイドラインの最大の特徴はGRADE(Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)方式を採用したことです。実臨床で判断に迷う治療選択肢をクリニカルクエスチョン(clinicalquestion:CQ)として設定し、医学的、経済的なメリットだけでなく、患者さんの価値観や心理的負担、日本全国で普遍的に受けることのできる治療かどうか、などをエビデンスとともに議論し、回答を作成しました。このGRADE方式という作成方法には馴染みがなくて作業が難航しましたが、ガイドラインに精通されている古賀弘志先生にさまざまな場面で助けていただきました。
希少疾患である皮膚悪性腫瘍はエビデンスレベルの高い論文は少なく、どのグループも大変苦労していましたが、現時点で理想に近いガイドラインになったと自負しています。
 また今回のガイドラインでは、メラノーマ、有棘細胞癌、基底細胞癌、乳房外パジェット病、皮膚血管肉腫、皮膚リンパ腫の計6疾患について、別々にガイドライン作成作業を行いました。そのため61名という実に多くの先生方にご協力をいただきました。各グループを代表委員としてまとめていただきました、中村泰大先生、安齋眞一先生、帆足俊彦先生、吉野公二先生、藤澤康弘先生、大塚幹夫先生に深謝致します。
 都会の大病院では自分の専門とする疾患の診療に専念し、苦手な疾患は他の先生に依頼するか、専門家のいる別の病院に紹介することも可能かも知れません。しかし、そのような環境で働く皮膚科医はほんの一握りにすぎません。得意でなかろうが、それこそ初めて診た疾患であろうが、自身で治療しないといけないという先生が大部分だと思います。そのような状況で、ガイドラインは強い味方になります。特に悪性腫瘍は生死に直結しますし、訴訟のリスクも少なからずあります。皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインは、できるだけ実臨床に役立つものを目指して作成されました。是非皆様にご活用いただきたいと思います。最後になりましたが、日本皮膚科学会ガイドライン委員会の先生方、日本皮膚悪性腫瘍学会および日本皮膚科学会の理事の先生方、パブリックコメントをいただいた先生方に心より感謝致します。

2022年春
日本皮膚科学会ガイドライン作成委員会
「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版」
作成委員長 菅谷 誠