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がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン 2023年版 第3版 外来がん化学療法看護ガイドライン1:改訂・改題
約9年ぶりの改訂! 多職種によるEV予防・管理の新たな指針!
編 集 | 日本がん看護学会 / 日本臨床腫瘍学会 / 日本臨床腫瘍薬学会 |
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定 価 | 2,420円 (2,200円+税) |
発行日 | 2022/12/23 |
ISBN | 978-4-307-70244-7 |
B5判・152頁・図数:2枚
在庫状況 | あり |
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抗がん薬の血管外漏出(EV)は、がん薬物療法に携わるすべての医療従事者にとって、診療科、職種、外来・在宅を越えて適切な予防・管理を行うべき重要な有害事象である。多職種による対応が求められることから、今回は日本がん看護学会・日本臨床腫瘍学会・日本臨床腫瘍薬学会の合同編集で作成された。患者アンケートの結果や、一般向けの解説、海外のガイドラインを参考に作成した薬剤分類表も記載した。患者の治療成績およびQOLの向上のためにご活用いただきたい。
※「外来がん化学療法看護ガイドライン1 2014年版 第2版 抗がん剤の血管外漏出およびデバイス合併症の予防・早期発見・対処」を改題致しました。
※「外来がん化学療法看護ガイドライン1 2014年版 第2版 抗がん剤の血管外漏出およびデバイス合併症の予防・早期発見・対処」を改題致しました。
I 序
1 ガイドライン概要
1.本ガイドラインの構成
2.CQと推奨文
3.EVに関する診療・ケアアルゴリズム
4.用語・略語一覧
5.重要用語の定義
2 ガイドラインの作成組織
1.作成主体
2.ガイドライン統括委員会
3.ガイドライン作成グループ
4.システマティックレビューチーム
5.薬剤別分類表作成ワーキンググループ
6.診療ガイドライン作成方法の専門家
7.外部評価委員会
8.外部専門医(皮膚科)コンサルテーション担当者
9.ガイドライン作成過程の協力者
10.ガイドライン作成事務局
3 ガイドライン作成経過
1.作成方針
2.使用上の注意
3.利益相反(conflict of interest:COI)
4.作成資金
5.組織編成
6.作成工程
7.管理方針の決定
4 疾患トピックス―EVの基本的特徴
1.臨床的・疫学的特徴
2.EVに関する診療・ケアの全体的な流れ
3.EVの鑑別
5 ガイドラインがカバーする内容に関する事項:スコープ
1.目的
2.トピック
3.想定される利用者
4.既存のガイドラインの作成の背景と関係
5.ガイドラインがカバーする視点
6.ガイドラインがカバーする範囲
7.重要臨床課題
6 システマティックレビューに関する事項
1.実施スケジュール
2.エビデンス検索
3.文献の選択基準、除外基準
4.対象集団の希望や価値観について
5.エビデンスの評価とエビデンス総体
7 推奨決定から公開に向けた最終調整、導入方針まで
1.推奨文案の作成
2.推奨作成の基本方針
3.公開に向けた最終調整
4.外部評価の具体的方法
5.ガイドラインの公開
8 公開後の取り組み
1.公開後の組織体制
2.導入
3.普及・活用・効果の評価
9 改訂
II 総説
1 安全ながん薬物療法の実施環境
1.人的環境
2.安全な環境、システム構築
III 薬剤の分類
1 薬剤分類表の作成経過と対象薬剤について
1.薬剤分類表作成プロセス
2.スクリーニング方法
2 スクリーニング結果
IV 推奨
CQ1 末梢静脈/中心静脈からのがん薬物療法を受ける患者に対して、EVの教育を複数回実施することは推奨されるか
CQ2 がん薬物療法を開始予定のがん患者に対して、中心静脈デバイス(CVカテーテル、PICC、CVポートなど)の留置は推奨されるか
CQ3a がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、CVとPICCどちらが推奨されるか
CQ3b がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、CVカテーテルとCVポートのどちらが推奨されるか
CQ3c 固形がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、PICCとCVポートのどちらが推奨されるか
CQ4 穿刺処置を受けた部位より中枢側にがん薬物療法薬投与のための末梢静脈カテーテルを留置することは推奨されるか
CQ5 がん薬物療法薬の持続(間歇)投与を受けている患者に対して、EV予防のために、末梢静脈カテーテルを定期的に入れ替えることは推奨されるか
CQ6 EVを予防するための投与方法として、輸液ポンプより自然滴下が推奨されるか
CQ7 EVリスクを考慮した場合、ホスアプレピタント投与を行うことは推奨されるか
CQ8 EVの早期発見のための逆血確認を行うことは推奨されるか
CQ9 皮膚障害の悪化予防としてEVが起こったときに残留薬液または血液の吸引は推奨されるか
CQ10a EVによる皮膚障害・炎症の悪化・進行を防ぐために局所療法として冷罨法(冷却)は推奨されるか
CQ10b EVによる皮膚障害・炎症の悪化・進行を防ぐために局所療法として温罨法(加温)は推奨されるか
CQ11 アントラサイクリン系がん薬物療法薬のEVにデクスラゾキサンの使用は推奨されるか
CQ12 EVに対して、ステロイド局所注射は推奨されるか
CQ13 EVに対して、ステロイド外用剤塗布は推奨されるか
CQ14 EVによる壊死を伴わない皮膚潰瘍病変のデブリードメントは推奨されるか
V 付録
1 利益相反事項(COI)
2 文献検索式
索引
1 ガイドライン概要
1.本ガイドラインの構成
2.CQと推奨文
3.EVに関する診療・ケアアルゴリズム
4.用語・略語一覧
5.重要用語の定義
2 ガイドラインの作成組織
1.作成主体
2.ガイドライン統括委員会
3.ガイドライン作成グループ
4.システマティックレビューチーム
5.薬剤別分類表作成ワーキンググループ
6.診療ガイドライン作成方法の専門家
7.外部評価委員会
8.外部専門医(皮膚科)コンサルテーション担当者
9.ガイドライン作成過程の協力者
10.ガイドライン作成事務局
3 ガイドライン作成経過
1.作成方針
2.使用上の注意
3.利益相反(conflict of interest:COI)
4.作成資金
5.組織編成
6.作成工程
7.管理方針の決定
4 疾患トピックス―EVの基本的特徴
1.臨床的・疫学的特徴
2.EVに関する診療・ケアの全体的な流れ
3.EVの鑑別
5 ガイドラインがカバーする内容に関する事項:スコープ
1.目的
2.トピック
3.想定される利用者
4.既存のガイドラインの作成の背景と関係
5.ガイドラインがカバーする視点
6.ガイドラインがカバーする範囲
7.重要臨床課題
6 システマティックレビューに関する事項
1.実施スケジュール
2.エビデンス検索
3.文献の選択基準、除外基準
4.対象集団の希望や価値観について
5.エビデンスの評価とエビデンス総体
7 推奨決定から公開に向けた最終調整、導入方針まで
1.推奨文案の作成
2.推奨作成の基本方針
3.公開に向けた最終調整
4.外部評価の具体的方法
5.ガイドラインの公開
8 公開後の取り組み
1.公開後の組織体制
2.導入
3.普及・活用・効果の評価
9 改訂
II 総説
1 安全ながん薬物療法の実施環境
1.人的環境
2.安全な環境、システム構築
III 薬剤の分類
1 薬剤分類表の作成経過と対象薬剤について
1.薬剤分類表作成プロセス
2.スクリーニング方法
2 スクリーニング結果
IV 推奨
CQ1 末梢静脈/中心静脈からのがん薬物療法を受ける患者に対して、EVの教育を複数回実施することは推奨されるか
CQ2 がん薬物療法を開始予定のがん患者に対して、中心静脈デバイス(CVカテーテル、PICC、CVポートなど)の留置は推奨されるか
CQ3a がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、CVとPICCどちらが推奨されるか
CQ3b がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、CVカテーテルとCVポートのどちらが推奨されるか
CQ3c 固形がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、PICCとCVポートのどちらが推奨されるか
CQ4 穿刺処置を受けた部位より中枢側にがん薬物療法薬投与のための末梢静脈カテーテルを留置することは推奨されるか
CQ5 がん薬物療法薬の持続(間歇)投与を受けている患者に対して、EV予防のために、末梢静脈カテーテルを定期的に入れ替えることは推奨されるか
CQ6 EVを予防するための投与方法として、輸液ポンプより自然滴下が推奨されるか
CQ7 EVリスクを考慮した場合、ホスアプレピタント投与を行うことは推奨されるか
CQ8 EVの早期発見のための逆血確認を行うことは推奨されるか
CQ9 皮膚障害の悪化予防としてEVが起こったときに残留薬液または血液の吸引は推奨されるか
CQ10a EVによる皮膚障害・炎症の悪化・進行を防ぐために局所療法として冷罨法(冷却)は推奨されるか
CQ10b EVによる皮膚障害・炎症の悪化・進行を防ぐために局所療法として温罨法(加温)は推奨されるか
CQ11 アントラサイクリン系がん薬物療法薬のEVにデクスラゾキサンの使用は推奨されるか
CQ12 EVに対して、ステロイド局所注射は推奨されるか
CQ13 EVに対して、ステロイド外用剤塗布は推奨されるか
CQ14 EVによる壊死を伴わない皮膚潰瘍病変のデブリードメントは推奨されるか
V 付録
1 利益相反事項(COI)
2 文献検索式
索引
<第3版 序文>
この度、日本臨床腫瘍学会(JSMO)、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)、日本がん看護学会(JSCN)の3学会により、「がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版(第3版)[外来がん化学療法看護ガイドライン1:改訂・改題]」を発刊できますことを心より感謝申し上げます。
がん薬物療法は急速に進歩し、有害事象への適切な安全管理体制の整備がさらに求められています。がん薬物療法の血管外漏出の発症は、がん患者の心身の苦痛を増強するだけでなく、日常生活の制限等の影響を及ぼし、患者のQOLの低下のみならず、治療の継続にも影響を及ぼす可能性があります。
血管外漏出の発症予防、早期発見、対処・管理は重要な課題であり、患者を中心とした多職種による協働が必要です。なかでも看護師は治療前から治療中、治療後にわたって患者の状態をアセスメントし、患者指導に関わる役割を担っています。血管外漏出の予防、早期発見、適切な対処、その後の経過観察に関する情報を多職種で共有し、患者の苦痛を予防、軽減することが重要です。
本ガイドラインは、2009年に初版「外来がん化学療法看護ガイドライン1 抗がん剤のEVの予防・早期発見・対象(2009年版)」が発刊され、次いで「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版1抗がん剤の血管外漏出およびデバイス合併症の予防・早期発見・対処(改訂版)」(両ガイドラインともに日本がん看護学会 小松浩子 前理事長)が発刊されました。本ガイドラインは上記の改訂版となります。血管外漏出に対する治療・ケアは医療者の視点だけでなく、患者の価値観も尊重され、意思決定されるものであり、多職種で活用することが重要であるため、本版より日本臨床腫瘍学会(JSMO)、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)、日本がん看護学会(JSCN)の3学会合同で作成し、また「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」と「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」を参考に作成されました。また、がん薬物療法は外来に限らず、入院、外来、在宅など多様な場で実施されるため、本版より「外来」に限定せず、がん薬物療法による血管外漏出に広く適応することを目指して、改訂されました。
本ガイドラインが、がん薬物療法に携わる医師、看護師、薬剤師のみならず多くの医療従事者の方々にご活用いただき、エビデンスに基づいた多職種による血管外漏出への取り組みにより、患者にとって安全ながん薬物療法の実施環境につながることを願っております。
ガイドライン作成および評価にご協力いただいたすべての皆様に深く感謝申し上げます。
2022年11月
一般社団法人 日本がん看護学会
理事長 渡邉 眞理
がん薬物療法に使用される抗がん薬の中で分子標的治療薬の開発が急速に進み、その数は従来の殺細胞性抗がん薬(化学療法剤)を凌ぐようになった。2022年8月現在、国内外で149種類の分子標的治療薬が上市され、その数は増加の一途を辿っている。分子標的治療薬の多くは内服薬であり、組織刺激性が少ない抗体薬(注射薬)を含めて血管外漏出が問題になることは少ない。しかし、アントラサイクリン系抗がん薬やフルオロウラシルのような血管外漏出により壊死や炎症の原因となる化学療法剤は、今日に於いても多くのがん種に対して分子標的治療薬を含めた多剤併用療法や放射線治療との併用で外来や病棟で頻回に使用されている。加えて血管痛などの注射部位反応がみられる選択的NK1受容体拮抗型制吐薬に新薬が承認され、今もなお抗がん薬の血管外漏出はがん薬物療法を実施する医療機関と治療に関わる医療従事者にとって診療科、職種、外来・入院を越えて、安全管理を行うべき重要な有害事象である。
血管外漏出が問題となる抗がん薬のリストには大きな変化はないが、そのマネジメントに関連する医療機器や薬剤が登場している。1つは投与ルートに関するもので、従来からのCVポートに加えPICCカテーテルが普及し、血管外漏出対策に一定の役割を果たすようになっている。もう1つは、アントラサイクリン系抗がん薬の血管外漏出を効能・効果とするデクスラゾキサンの薬事承認である。このような医療環境の変化により医療現場では血管外漏出のマネジメントに種々の工夫が行われているが、同時に標準的なマネジメントを求めて様々な疑問が生じている。このため、日本がん看護学会「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版(第2版)」の改訂が切望されてきた。
このような背景のもとで、日本がん看護学会(JSCN)は日本臨床腫瘍学会(JSMO)ならびに日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)との合同で、「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版」を9年ぶりに改訂し、新たに「がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版(第3版)」を刊行した。今回の改訂は、日本がん看護学会のガイドライン統括委員会(飯野京子リーダー、矢ヶ崎香、田墨惠子)のもとでガイドライン作成委員会(矢ヶ崎香代表、松本光史JSMOリーダー、龍島靖明JASPOリーダー)が組織され、「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」と「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」を参考にした従来版より科学性を重視した内容となっている。今回の改訂は大幅な改訂であり、作成を担当された委員のご尽力と患者団体代表(桜井なおみ様、蛭間健太郎様)のご協力に深謝したい。最後に、この改訂ガイドラインががん薬物療法に関わる多くの看護師、医師および薬剤師により活用され、適切な血管外漏出対策により患者の治療成績およびQOLの向上に寄与することを期待する。
2022年11月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
理事長 石岡 千加史
がん薬物療法はがん治療の柱の一つであり、効果的、かつ安全、安心な治療を提供すべく、医療者各々が重要な役割を担っています。近年、がん薬物療法の開発は急速に進歩しており、多くの新医薬品が毎年承認され、臨床現場で使用されています。一般的にがん薬物療法は、ほかの疾患に対する治療薬に比べ、有害事象を伴うことが多く、薬剤師が服薬指導を実施する際には、患者に対して治療効果とともに、不利益やリスクを説明し、理解を得る必要があります。その中で、がん薬物療法に伴う血管外漏出に関しても同様であり、患者や家族にも事前に漏出することの危険性や注意事項について十分に説明を行い、がん医療に携わる医療者間が連携を図りながら、適切な対応を心掛けることが重要となります。
また、「医薬品の安全使用のための業務手順書」の作成が2007年に医療法で義務づけられており、2018年12月に厚生労働省医政局総務課医療安全推進室および厚生労働省医薬・生活衛生局総務課より同手順書作成マニュアル改訂版に関する事務連絡が発出されました。改訂された本手順書には、がん薬物療法の血管外漏出予防策と漏出時の対応、曝露防止対策を定めることが求められており、治療開始後の副作用や血管外漏出の観察および確認、処置にあたる職員や家族への薬剤曝露防止対策などを盛り込む必要があると述べられています。そのため、各病院等において備えている「医薬品の安全使用のための業務手順書」等の見直しが行われています。
今般、2014年に日本がん看護学会により発刊された「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版 ?抗がん剤の血管外漏出およびデバイス合併症の予防・早期発見・対処ガイドライン」を日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会の3学会合同により改訂し、発刊に至りました。本改訂ガイドラインは、外来に限定せず、入院、外来、在宅など、がん薬物療法を受ける患者へ標準化したケアを提供するために、安全性の確保が重要とされる血管外漏出に焦点を当て、エビデンスに基づき血管外漏出の予防、早期発見、対応、管理に関する指針となっています。我々薬剤師は、本改訂ガイドラインを踏まえ、がん患者への薬剤管理指導等に役立てるとともに、「医薬品の安全使用のための業務手順書」、「医療安全マニュアル」等の見直しの一助になるものと思います。
最後になりますが、本改訂ガイドラインの作業を進めてくださった関係者の皆様に心より御礼申し上げるとともに、本改訂ガイドラインが、がん医療に携わるすべての医療者に加え、介護士、ヘルパーおよび患者、家族および市民に活用され、がん薬物療法を患者が安全、安心に受けられるために広く役立てられることを期待しています。
2022年11月
一般社団法人 日本臨床腫瘍薬学会
理事長 近藤 直樹
この度、日本臨床腫瘍学会(JSMO)、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)、日本がん看護学会(JSCN)の3学会により、「がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版(第3版)[外来がん化学療法看護ガイドライン1:改訂・改題]」を発刊できますことを心より感謝申し上げます。
がん薬物療法は急速に進歩し、有害事象への適切な安全管理体制の整備がさらに求められています。がん薬物療法の血管外漏出の発症は、がん患者の心身の苦痛を増強するだけでなく、日常生活の制限等の影響を及ぼし、患者のQOLの低下のみならず、治療の継続にも影響を及ぼす可能性があります。
血管外漏出の発症予防、早期発見、対処・管理は重要な課題であり、患者を中心とした多職種による協働が必要です。なかでも看護師は治療前から治療中、治療後にわたって患者の状態をアセスメントし、患者指導に関わる役割を担っています。血管外漏出の予防、早期発見、適切な対処、その後の経過観察に関する情報を多職種で共有し、患者の苦痛を予防、軽減することが重要です。
本ガイドラインは、2009年に初版「外来がん化学療法看護ガイドライン1 抗がん剤のEVの予防・早期発見・対象(2009年版)」が発刊され、次いで「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版1抗がん剤の血管外漏出およびデバイス合併症の予防・早期発見・対処(改訂版)」(両ガイドラインともに日本がん看護学会 小松浩子 前理事長)が発刊されました。本ガイドラインは上記の改訂版となります。血管外漏出に対する治療・ケアは医療者の視点だけでなく、患者の価値観も尊重され、意思決定されるものであり、多職種で活用することが重要であるため、本版より日本臨床腫瘍学会(JSMO)、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)、日本がん看護学会(JSCN)の3学会合同で作成し、また「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」と「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」を参考に作成されました。また、がん薬物療法は外来に限らず、入院、外来、在宅など多様な場で実施されるため、本版より「外来」に限定せず、がん薬物療法による血管外漏出に広く適応することを目指して、改訂されました。
本ガイドラインが、がん薬物療法に携わる医師、看護師、薬剤師のみならず多くの医療従事者の方々にご活用いただき、エビデンスに基づいた多職種による血管外漏出への取り組みにより、患者にとって安全ながん薬物療法の実施環境につながることを願っております。
ガイドライン作成および評価にご協力いただいたすべての皆様に深く感謝申し上げます。
2022年11月
一般社団法人 日本がん看護学会
理事長 渡邉 眞理
がん薬物療法に使用される抗がん薬の中で分子標的治療薬の開発が急速に進み、その数は従来の殺細胞性抗がん薬(化学療法剤)を凌ぐようになった。2022年8月現在、国内外で149種類の分子標的治療薬が上市され、その数は増加の一途を辿っている。分子標的治療薬の多くは内服薬であり、組織刺激性が少ない抗体薬(注射薬)を含めて血管外漏出が問題になることは少ない。しかし、アントラサイクリン系抗がん薬やフルオロウラシルのような血管外漏出により壊死や炎症の原因となる化学療法剤は、今日に於いても多くのがん種に対して分子標的治療薬を含めた多剤併用療法や放射線治療との併用で外来や病棟で頻回に使用されている。加えて血管痛などの注射部位反応がみられる選択的NK1受容体拮抗型制吐薬に新薬が承認され、今もなお抗がん薬の血管外漏出はがん薬物療法を実施する医療機関と治療に関わる医療従事者にとって診療科、職種、外来・入院を越えて、安全管理を行うべき重要な有害事象である。
血管外漏出が問題となる抗がん薬のリストには大きな変化はないが、そのマネジメントに関連する医療機器や薬剤が登場している。1つは投与ルートに関するもので、従来からのCVポートに加えPICCカテーテルが普及し、血管外漏出対策に一定の役割を果たすようになっている。もう1つは、アントラサイクリン系抗がん薬の血管外漏出を効能・効果とするデクスラゾキサンの薬事承認である。このような医療環境の変化により医療現場では血管外漏出のマネジメントに種々の工夫が行われているが、同時に標準的なマネジメントを求めて様々な疑問が生じている。このため、日本がん看護学会「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版(第2版)」の改訂が切望されてきた。
このような背景のもとで、日本がん看護学会(JSCN)は日本臨床腫瘍学会(JSMO)ならびに日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)との合同で、「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版」を9年ぶりに改訂し、新たに「がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版(第3版)」を刊行した。今回の改訂は、日本がん看護学会のガイドライン統括委員会(飯野京子リーダー、矢ヶ崎香、田墨惠子)のもとでガイドライン作成委員会(矢ヶ崎香代表、松本光史JSMOリーダー、龍島靖明JASPOリーダー)が組織され、「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」と「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」を参考にした従来版より科学性を重視した内容となっている。今回の改訂は大幅な改訂であり、作成を担当された委員のご尽力と患者団体代表(桜井なおみ様、蛭間健太郎様)のご協力に深謝したい。最後に、この改訂ガイドラインががん薬物療法に関わる多くの看護師、医師および薬剤師により活用され、適切な血管外漏出対策により患者の治療成績およびQOLの向上に寄与することを期待する。
2022年11月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
理事長 石岡 千加史
がん薬物療法はがん治療の柱の一つであり、効果的、かつ安全、安心な治療を提供すべく、医療者各々が重要な役割を担っています。近年、がん薬物療法の開発は急速に進歩しており、多くの新医薬品が毎年承認され、臨床現場で使用されています。一般的にがん薬物療法は、ほかの疾患に対する治療薬に比べ、有害事象を伴うことが多く、薬剤師が服薬指導を実施する際には、患者に対して治療効果とともに、不利益やリスクを説明し、理解を得る必要があります。その中で、がん薬物療法に伴う血管外漏出に関しても同様であり、患者や家族にも事前に漏出することの危険性や注意事項について十分に説明を行い、がん医療に携わる医療者間が連携を図りながら、適切な対応を心掛けることが重要となります。
また、「医薬品の安全使用のための業務手順書」の作成が2007年に医療法で義務づけられており、2018年12月に厚生労働省医政局総務課医療安全推進室および厚生労働省医薬・生活衛生局総務課より同手順書作成マニュアル改訂版に関する事務連絡が発出されました。改訂された本手順書には、がん薬物療法の血管外漏出予防策と漏出時の対応、曝露防止対策を定めることが求められており、治療開始後の副作用や血管外漏出の観察および確認、処置にあたる職員や家族への薬剤曝露防止対策などを盛り込む必要があると述べられています。そのため、各病院等において備えている「医薬品の安全使用のための業務手順書」等の見直しが行われています。
今般、2014年に日本がん看護学会により発刊された「外来がん化学療法看護ガイドライン2014年版 ?抗がん剤の血管外漏出およびデバイス合併症の予防・早期発見・対処ガイドライン」を日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会の3学会合同により改訂し、発刊に至りました。本改訂ガイドラインは、外来に限定せず、入院、外来、在宅など、がん薬物療法を受ける患者へ標準化したケアを提供するために、安全性の確保が重要とされる血管外漏出に焦点を当て、エビデンスに基づき血管外漏出の予防、早期発見、対応、管理に関する指針となっています。我々薬剤師は、本改訂ガイドラインを踏まえ、がん患者への薬剤管理指導等に役立てるとともに、「医薬品の安全使用のための業務手順書」、「医療安全マニュアル」等の見直しの一助になるものと思います。
最後になりますが、本改訂ガイドラインの作業を進めてくださった関係者の皆様に心より御礼申し上げるとともに、本改訂ガイドラインが、がん医療に携わるすべての医療者に加え、介護士、ヘルパーおよび患者、家族および市民に活用され、がん薬物療法を患者が安全、安心に受けられるために広く役立てられることを期待しています。
2022年11月
一般社団法人 日本臨床腫瘍薬学会
理事長 近藤 直樹
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