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がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版
“がんと共存”する時代、切れ目のない患者ケアのために。
初版発刊から6年、新たな知見を加え、より現状に即したガイドラインとなった。治療の益と害、患者の価値観や好み、コストや臨床適応性を十分に勘案し推奨を決定したが、その作成には医師だけでなく、様々な専門性を有するリハビリテーション専門職、がん患者代表等が参加し、多様な専門家の視点が反映された。“がんと共存”する時代、切れ目のない患者ケアのために、がんのリハビリテーション診療の拠り所となる1冊である。
【関連書籍】がんのリハビリテーション診療ベストプラクティス 第2版
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本診療ガイドラインについて
第1章 総論・評価
第2章 肺がん
第3章 消化器がん
第4章 前立腺がん
第5章 頭頸部がん
第6章 乳がん・婦人科がん
第7章 骨軟部腫瘍
第8章 脳腫瘍
第9章 血液腫瘍・造血幹細胞移植
第10章 化学療法・放射線療法
第11章 進行がん・末期がん
文献検索結果一覧
第1章 総論・評価
第2章 肺がん
第3章 消化器がん
第4章 前立腺がん
第5章 頭頸部がん
第6章 乳がん・婦人科がん
第7章 骨軟部腫瘍
第8章 脳腫瘍
第9章 血液腫瘍・造血幹細胞移植
第10章 化学療法・放射線療法
第11章 進行がん・末期がん
文献検索結果一覧
発刊によせて
わが国では、国民の2人に1人が生涯のうちに悪性腫瘍(以下、がん)に罹患し、3人に1人ががんで死亡する。早期発見や治療法の進歩により生存率は向上し、がん経験者(サバイバー)は今後、年に約60万人増えることが予測されており、がんが“不治の病”であった時代から、“がんと共存”する時代となりつつある。
2006年に制定された「がん対策基本法」においては、病状、進行度に合わせてその時点で最善の治療やケアを受ける権利が患者にあると謳われているが、現実には、治癒を目指した治療からQOLを重視したケアまで切れ目のない支援をするといった点で、今の日本のがん診療は未だ不十分である。
がん患者にとっては、がん自体に対する不安は大きいが、がんの直接的影響や手術・化学療法・放射線治療などによる身体障害に対する不安も同じくらい大きい。しかしこれまで、がんそのもの、あるいはその治療過程において受けた身体的なダメージに対しては、積極的に対応がなされてこなかった。その一因は、がん患者のリハビリテーション治療に関する診療ガイドラインが存在しないため、適切なリハビリテーションプログラムが組み立てられないことにあった。
そこで、2010年度から2012年度までの3年間、厚生労働科学研究補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「がんのリハビリテーションガイドライン作成のためのシステム構築に関する研究(主任研究者 辻哲也)において研究事業が実施され、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会と協働して、原発巣や治療的介入別に網羅された診療ガイドラインの策定作業に取り組み、2013年4月に「がんのリハビリテーションガイドライン」が公開された。本ガイドラインは書籍としての販売(金原出版)とともに、Minds診療ガイドラインライブラリからフリーでダウンロード可能である。
本ガイドライン策定を機に、2013年10月に日本リハビリテーション医学会は、日本癌治療学会がん診療ガイドライン委員会にリハビリテーション分科会として参画することが承認された。本ガイドラインは同学会ホームページに掲載され、わが国のがん診療ガイドラインの一翼を担っている。なお、同学会がん診療ガイドライン評価委員会による審査では、全体評価で7点中6点、個々の評価項目においても高評価を得た。また、2014年7月には、Minds(公益財団法人日本医療機能評価機構)ホームページへの掲載も開始された。
初版の診療ガイドライン策定から3年が経過したことから、今回、2016年度から2018年度までの3年間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業 外来がんリハビリテーションの効果に関する研究(研究開発代表者 辻哲也)の事業の一環として、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーションガイドライン改訂委員会と協働して、がんのリハビリテーション診療ガイドラインの改訂作業に取り組んだ。
初版は「診療ガイドライン作成の手引き2007」に準拠したが、改訂版ではGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)の手法を取り入れた「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」に基づいて、診療ガイドラインの構成や推奨の強さを決定した。初版では、さまざまなバイアスリスクを排除すべくランダム化比較試験、メタアナリシス、システマティックレビューの結果を重んじて推奨を行ったが、改訂版では、リハビリテーション治療の益と害のバランス、患者の価値観や好み、コスト(患者の負担)や臨床適応性(全国の医療施設で実施可能か)を十分に勘案し、多職種の医療職・がん患者団体代表のがんサバイバーも含む委員で構成された推奨決定会議での投票により推奨を決定した点が、初版と大きく異なる点である。
工程表に則って、原発巣・治療目的・病期別に章立てされた「がんのリハビリテーションガイドライン(素案)」が作成され、リハビリテーション医学会ホームページでの公開とパブリックコメント募集を経て、必要な改訂が行われた後、このたび診療ガイドラインとして出版を迎えることができた。
医療行政においては、2016年12月に成立したがん対策基本法改正法の第17条では「がん患者の療養生活の質の維持向上に関して、がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること」が新たに盛り込まれ、2017年度から開始された第3期がん対策基本計画において、ライフステージやがんの特性を考慮した個別化医療の必要性が重点課題となるなかで、がんリハビリテーションは重要な施策のひとつと認識されるに至り、まさにこれから各都道府県単位でさまざまな取り組みが始まろうとしている。
ばらつきなく、質の高いがんリハビリテーション医療を全国で提供するためには、一般市民への啓発活動、患者会との協力体制、リハビリテーション関連の学術団体が中心となった普及活動・臨床研究発展のための取り組み、リハビリテーション専門職養成校の教育体制の充実、がん診療連携拠点病院を中心としたリハビリテーションスタッフ間の交流、がんリハビリテーション研修会の拡充等が依然として課題となっている。
全国のがん医療に携わる方々に本診療ガイドライン改訂版を活用していただき、症状緩和や心理・身体面のケアから療養支援、復職支援などの社会的な側面のサポート体制が構築され、治癒を目指した治療からQOLを重視したケアまで切れ目のない支援をすることが可能となることを期待したい。
本研究の成果が、「がん対策基本法」において謳われている「がん患者の療養生活の質の維持向上」が具現化される一助となることを願うとともに、現場からのフィードバックに基づいて定期的な改訂を加え、より実践的な診療ガイドラインに育てていきたいと考えている。読者諸氏からの忌憚のないご意見、叱咤激励をいただければ望外の喜びである。
2019年5月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 革新的がん医療実用化研究事業
外来がんリハビリテーションの効果に関する研究 研究開発代表者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン委員会
がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会 委員
辻 哲也
わが国では、国民の2人に1人が生涯のうちに悪性腫瘍(以下、がん)に罹患し、3人に1人ががんで死亡する。早期発見や治療法の進歩により生存率は向上し、がん経験者(サバイバー)は今後、年に約60万人増えることが予測されており、がんが“不治の病”であった時代から、“がんと共存”する時代となりつつある。
2006年に制定された「がん対策基本法」においては、病状、進行度に合わせてその時点で最善の治療やケアを受ける権利が患者にあると謳われているが、現実には、治癒を目指した治療からQOLを重視したケアまで切れ目のない支援をするといった点で、今の日本のがん診療は未だ不十分である。
がん患者にとっては、がん自体に対する不安は大きいが、がんの直接的影響や手術・化学療法・放射線治療などによる身体障害に対する不安も同じくらい大きい。しかしこれまで、がんそのもの、あるいはその治療過程において受けた身体的なダメージに対しては、積極的に対応がなされてこなかった。その一因は、がん患者のリハビリテーション治療に関する診療ガイドラインが存在しないため、適切なリハビリテーションプログラムが組み立てられないことにあった。
そこで、2010年度から2012年度までの3年間、厚生労働科学研究補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「がんのリハビリテーションガイドライン作成のためのシステム構築に関する研究(主任研究者 辻哲也)において研究事業が実施され、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会と協働して、原発巣や治療的介入別に網羅された診療ガイドラインの策定作業に取り組み、2013年4月に「がんのリハビリテーションガイドライン」が公開された。本ガイドラインは書籍としての販売(金原出版)とともに、Minds診療ガイドラインライブラリからフリーでダウンロード可能である。
本ガイドライン策定を機に、2013年10月に日本リハビリテーション医学会は、日本癌治療学会がん診療ガイドライン委員会にリハビリテーション分科会として参画することが承認された。本ガイドラインは同学会ホームページに掲載され、わが国のがん診療ガイドラインの一翼を担っている。なお、同学会がん診療ガイドライン評価委員会による審査では、全体評価で7点中6点、個々の評価項目においても高評価を得た。また、2014年7月には、Minds(公益財団法人日本医療機能評価機構)ホームページへの掲載も開始された。
初版の診療ガイドライン策定から3年が経過したことから、今回、2016年度から2018年度までの3年間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業 外来がんリハビリテーションの効果に関する研究(研究開発代表者 辻哲也)の事業の一環として、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーションガイドライン改訂委員会と協働して、がんのリハビリテーション診療ガイドラインの改訂作業に取り組んだ。
初版は「診療ガイドライン作成の手引き2007」に準拠したが、改訂版ではGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)の手法を取り入れた「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」に基づいて、診療ガイドラインの構成や推奨の強さを決定した。初版では、さまざまなバイアスリスクを排除すべくランダム化比較試験、メタアナリシス、システマティックレビューの結果を重んじて推奨を行ったが、改訂版では、リハビリテーション治療の益と害のバランス、患者の価値観や好み、コスト(患者の負担)や臨床適応性(全国の医療施設で実施可能か)を十分に勘案し、多職種の医療職・がん患者団体代表のがんサバイバーも含む委員で構成された推奨決定会議での投票により推奨を決定した点が、初版と大きく異なる点である。
工程表に則って、原発巣・治療目的・病期別に章立てされた「がんのリハビリテーションガイドライン(素案)」が作成され、リハビリテーション医学会ホームページでの公開とパブリックコメント募集を経て、必要な改訂が行われた後、このたび診療ガイドラインとして出版を迎えることができた。
医療行政においては、2016年12月に成立したがん対策基本法改正法の第17条では「がん患者の療養生活の質の維持向上に関して、がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること」が新たに盛り込まれ、2017年度から開始された第3期がん対策基本計画において、ライフステージやがんの特性を考慮した個別化医療の必要性が重点課題となるなかで、がんリハビリテーションは重要な施策のひとつと認識されるに至り、まさにこれから各都道府県単位でさまざまな取り組みが始まろうとしている。
ばらつきなく、質の高いがんリハビリテーション医療を全国で提供するためには、一般市民への啓発活動、患者会との協力体制、リハビリテーション関連の学術団体が中心となった普及活動・臨床研究発展のための取り組み、リハビリテーション専門職養成校の教育体制の充実、がん診療連携拠点病院を中心としたリハビリテーションスタッフ間の交流、がんリハビリテーション研修会の拡充等が依然として課題となっている。
全国のがん医療に携わる方々に本診療ガイドライン改訂版を活用していただき、症状緩和や心理・身体面のケアから療養支援、復職支援などの社会的な側面のサポート体制が構築され、治癒を目指した治療からQOLを重視したケアまで切れ目のない支援をすることが可能となることを期待したい。
本研究の成果が、「がん対策基本法」において謳われている「がん患者の療養生活の質の維持向上」が具現化される一助となることを願うとともに、現場からのフィードバックに基づいて定期的な改訂を加え、より実践的な診療ガイドラインに育てていきたいと考えている。読者諸氏からの忌憚のないご意見、叱咤激励をいただければ望外の喜びである。
2019年5月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 革新的がん医療実用化研究事業
外来がんリハビリテーションの効果に関する研究 研究開発代表者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン委員会
がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会 委員
辻 哲也
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