PT・OTのための運動学テキスト 第1版補訂2版 基礎・実習・臨床

国試出題傾向も踏まえた、療法士のための実践的運動学テキスト

編 集 小柳 磨毅 / 山下 協子 / 大西 秀明 / 境 隆弘
定 価 6,600円
(6,000円+税)
発行日 2023/01/31
ISBN 978-4-307-75069-1

B5判・588頁

在庫状況 あり

初版をさらに洗練させ、国試出題傾向・最新の学会基準も踏まえた内容とした。総論は大幅に刷新し、より簡潔で明快な記述とした。各論では理解の基礎となる正常運動の理論を解説し、その理論を確認するために療法士養成校で採用可能な実習課題を設定し解説した。さらに実際のリハ場面で遭遇する機会が多い事例につき豊富な症例写真・臨床データを用い解説し、実習と臨床における病態運動学を関連づけた。卒前教育に最適のテキスト。
総論

運動学の定義
1. 運動学とは
2. 障害と運動学

生体力学─Kinematics
1. Kinematicsで必要とされる変数
2. 立位姿勢と身体運動の面と軸
3. 基本的な運動方向の定義
4. 骨と運動と運動面・軸の表し方
5. 各肢節の運動方向
6. 関節包内運動
7. 関節包内運動の実際
8. 凹凸の法則
9. 固定の肢位とゆるみの肢位

生体力学─Kinetics
力学の基礎
1. 身体運動の力学の基礎(力とモーメント)
2. 力とトルク(力のモーメント)の単位
3. 身体運動における力と関節モーメント
4. 人体にみられる「てこ」の種類(生体力学的てこ)
5. 単位によく使用される接頭語
筋トルク(関節モーメント)実習
1. 実習1:筋トルクの測定
2. 実習2:等尺性筋力測定器による測定
筋生理学
1. 骨格筋の構造
2. 骨格筋の種類
3. 筋収縮の仕組み
4. 運動単位(motor unit;MU)
5. 筋収縮の調整
6. 長さ張力曲線
筋電図(1):運動学実習
1. 筋電図とは(筋電図の種類)
2. 計測方法
3. 筋電図信号処理
4. 計測手順
5. データ解釈時の注意事項
6. 筋電図データで何がわかるか
7. 筋電図実習
 課題1 筋収縮力と筋活動との関係の観察
 課題2 筋疲労時の筋活動の特徴の観察
 課題3 単関節筋と二関節筋の活動の観察
筋電図(2):臨床運動学
1. 横ジャンプ動作時における筋活動
2. カッティング動作時の筋活動
3. CKCトレーニングとOKCトレーニングの効果

生体力学─運動学習
基礎運動学
1. 運動学習の定義
2. 運動学習と記憶
3. 運動学習とパフォーマンス計測
4. 情報処理モデル
5. 学習の様式
6. 学習計画
7. フィードバック
8. 運動を伴わない運動学習
運動学実習
 課題1 運動学習の定義:運動学習のステージ
 課題2 運動学習と記憶:情報の処理能力の容量
 課題3 運動学習とパフォーマンス計測
 課題4 情報処理モデル
 課題5 運動学習の様式
 課題6 運動学習計画:文脈干渉効果
 課題7 フィードバック
 課題8 運動を伴わない運動学習
臨床運動学
1. 運動学習の定義:再運動学習
2. 運動学習と記憶:手続き的学習
3. 情報処理モデル:多重課題
4. 運動学習の様式:潜在学習
5. 運動学習の計画
6. フィードバック
7. 運動を伴わない運動学習

生体力学─運動分析
1. 運動分析とは
2. 運動分析(kinesiological analysis)の実際
3. 機器による運動学的分析


各論

肩甲帯・肩
基礎運動学
1. 肩の運動を構成する関節
2. 胸鎖関節の構造
3. 胸鎖関節の運動
4. 肩鎖関節の構造と運動
5. 肩甲骨の胸郭上のアライメント
6. 肩甲骨の運動
7. 肩甲骨の運動に伴う胸鎖関節・肩鎖関節の運動
8. 肩甲骨の運動を行う筋群
9. 肩甲上腕関節と第2肩関節の構造と機能
10. 肩甲上腕関節における上腕骨頭と肩甲骨の関節窩の関係
11. 肩甲上腕リズム
12. 肩甲上腕関節外転に伴う上腕骨の外旋
13. 肩甲上腕関節の内圧調整機構
14. 肩甲上腕関節の屈曲における三角筋と大胸筋の特徴
15. 肩甲上腕関節の内旋運動における肩甲下筋の活動部位
16. 肩甲上腕関節の外旋運動における棘下筋・小円筋の活動部位
17. 肩甲上腕関節の外転運動における三角筋・棘上筋の活動部位
18. 肩甲上腕関節の伸展運動における三角筋・大円筋・小円筋・広背筋の活動部位
19. 肩甲上腕関節の水平屈曲・水平伸展運動における筋活動
運動学実習
 課題1 肩甲上腕リズムの確認
 課題2 良姿勢と不良姿勢の屈曲角度の違いを確認する
 課題3 回転モーメントを体験する
臨床運動学
1. Obligate translation
2. 腱板断裂肩の特徴的な変化
3. インピンジメントサイン
4. 腱板機能の評価
5. 肩甲上腕関節の可動域テスト
6. 腱板筋群の選択的筋力強化

肘・前腕
基礎運動学
1. 肘関節と前腕の関節の構造
2. 肘関節と前腕の機能
3. 肘と前腕による日常生活動作
運動学実習
 課題1 肘と前腕のランドマークを4方向に分けて触診する
 課題2 肘関節屈曲の筋作用の触知
 課題3 肘関節伸展筋の触知
 課題4 荷重位における前腕部回内・外運動の筋作用の確認
 課題5 肘関節屈曲角度の違いによる前腕部の筋作用の確認
 課題6 ストレッチング
 課題7 肘と前腕による日常生活動作(特に更衣・整容動作)について肩の可動域と共に理解する
臨床運動学─肘関節の臨床的検査の流れ
1. 肘関節の疼痛検査
2. 神経障害:肘から前腕に対する神経障害の検査
3. 関節不安定性:靱帯の不安定性検査
4. エンドフィールとジョイントプレイ
5. 肘関節の機能評価

手関節・手
基礎運動学
1. 手の概観
2. 表在感覚
3. 手の骨と関節
4. 手関節・手の筋
5. 手の構造
6. 把握の分類と名称
運動学実習
 課題1 手の皮膚の観察
 課題2 舟状骨結節の触知
 課題3 正中神経と尺骨神経の圧迫
 課題4 運動の名称の確認
 課題5 手関節の運動
 課題6 手関節・手指の筋の触知
 課題7 把握─母指の運動に関与する筋の観察・触知
臨床運動学
1. 外観・触知
2. 手根管症候群(低位正中神経麻痺)
3. 第2?5指のMP関節の尺側変形
4. Bowstringing(腱の浮き上がり現象、弓づる形成)
5. 手のZONE分類
6. ばね指(弾発指)
7. 頚髄損傷における腱作用(テノデーシスアクション)の日常生活での活用
8. 指の関節の可動域
9. 手内在筋優位の手と手内在筋劣位の手
10. 手内在筋(骨間筋・虫様筋)の短縮
11. 伸展機構と指の変形
12. 末梢神経麻痺

骨盤帯・股
基礎運動学
1. 骨盤の解剖
2. 骨盤と仙骨の運動
3. 大腿骨(近位)
4. 股関節の靱帯
5. 股関節の軟部組織
6. 股関節の屈曲運動と作用する筋
7. 股関節の伸展運動と作用する筋
8. 股関節の外転運動と作用する筋
9. 股関節の内転運動と作用する筋
10. 股関節の外旋運動と作用する筋
11. 股関節の内旋運動と作用する筋
運動学実習
 課題1 骨盤周囲の重要なランドマークとその意味の確認
 課題2 骨盤・腰椎・股関節の連動の確認
 課題3 股関節の運動と靱帯の緊張の確認
 課題4 片脚立位時の股関節への負荷
臨床運動学
1. 股関節の変形の原因
2. 頚体角
3. 頚体角の異常がもたらす股関節への影響
4. 股関節外転筋力の低下
5. 杖を持った場合の股関節への負荷
6. 重量物を持った場合の股関節への負荷
7. 矢状面での支持性の代償
8. 股関節の屈曲拘縮
9. 腰椎骨盤リズムの異常

膝・下腿
基礎運動学
1. 膝の生理的外反
2. 膝関節の構造
3. 脛骨大腿関節の運動
4. 膝関節の回旋
5. 膝蓋大腿関節の運動
6. 側副靱帯の形態と位置
7. 側副靱帯の機能
8. 前十字靱帯(anterior cruciate ligament;ACL)の形態と機能
9. 後十字靱帯(posterior cruciate ligament;PCL)の形態と機能
10. 半月板の形態と機能
11. 膝関節に作用する筋(伸筋、屈筋)
12. 膝関節に作用する筋(内旋筋、外旋筋)
13. 大腿四頭筋の作用
14. 前額面で膝蓋骨に作用する力
15. 膝蓋大腿関節の評価
16. 膝蓋骨と膝伸展モーメント
17. 脛骨大腿関節の力学
18. 膝蓋大腿関節の力学
19. ハムストリングの作用
20. 荷重下の膝関節における反力
運動学実習
 課題1 膝関節完全伸展位と屈曲位での下腿回旋角度の違い
 課題2 膝関節の終末強制回旋運動
 課題3 内側側副靱帯の機能
 課題4 外側側副靱帯の機能の確認
 課題5 前十字靱帯の機能
 課題6 後十字靱帯の機能
 課題7 半月板の機能
 課題8 膝伸筋と屈筋のベクトル分析
 課題9 前傾姿勢と後傾姿勢における下肢筋活動を触察や筋電図を用いて観察し、下肢の前面筋と後面筋の収縮活動均衡を比較する
 課題10 骨標本を用いた、関節面の傾斜による剪断力の発生する方向の推察
 課題11 体幹前傾したスクワットとスプリットスクワット時の筋活動を触察や筋電図を用いて観察し、比較検討する
 課題12 脚伸展運動(レッグプレス)に作用する筋活動を触察や筋電図を用いて観察し、その機能を分析する
臨床運動学
1. 膝関節形態の異常(前額面)
2. 膝関節形態の異常(矢状面)
3. 靱帯損傷の発生機序
4. 膝内側側副靱帯の評価
5. 前十字靱帯不全膝に対する前方引き出しテスト
6. 前十字靱帯不全膝に対する前方外側亜脱臼誘発テスト
7. 前十字靱帯再建術後の大腿四頭筋強化
8. 膝関節運動と後十字靱帯の緊張
9. 半月板と接触圧
10. 二関節筋のストレッチング

足・足関節
基礎運動学
1. 足関節・足部を構成する骨
2. 足部の関節と領域
3. 足関節・足部における運動の定義
4. 足関節の靱帯
5. 距腿関節
6. 距腿関節の運動
7. 距腿関節の滑りと転がり
8. 距腿関節と腓骨の運動
9. 距骨下関節
10. 距骨下関節の運動軸
11. 横足根関節の運動軸
12. 足根中足関節、中足指節関節、指節間関節(近位・遠位)
13. 足関節と足部の筋の神経支配
14. 足関節周囲筋の区画別神経支配
15. 足関節背屈筋
16. 足関節底屈筋
17. 足関節回内(外がえし)筋
18. 足関節回外(内がえし)筋
19. 踵挙上における側方安定性
20. 足指伸筋
21. 足底面の内在筋
22. 足指屈筋腱の作用
23. 足のアーチ
24. 足指の巻き上げ機構
運動学実習
 課題1 距骨下関節の運動の確認
 課題2 横足根関節の運動の確認
 課題3 靱帯による関節運動の制動の確認
 課題4 アーチ高の変化の確認
臨床運動学
1. 足部の変形
2. 足指の変形
3. 足関節内反捻挫

頭部・顔面
基礎運動学
1. 頭部・顔面の骨
2. 顎関節と下顎骨
3. 靱帯
4. 開口時の骨運動
5. 顎関節の運動
6. 咀嚼筋
7. 舌骨上筋群
8. 顔面筋
9. 外眼筋
10. 眼球運動と筋
運動学実習
 課題1 下顎骨と顎関節の確認
 課題2 顎関節の運動の確認
 課題3 咀嚼筋の走行と作用の確認
 課題4 頭蓋表面と眼の周囲筋の走行と作用の確認
 課題5 口の周囲筋の走行と作用の確認
 課題6 眼球の運動方向と作用する筋の確認
臨床運動学
1. 顎関節症
2. 開口制限の評価
3. 顔面神経麻痺

脊柱
基礎運動学
1. 脊柱とその弯曲
2. 脊柱の構造と機能
3. 脊柱各部の形態学的特徴
4. 脊柱の運動と筋
運動学実習
 課題1 脊柱弯曲の確認
 課題2 椎骨と靱帯の確認
 課題3 脊柱各部位の特徴と運動の確認
 課題4 脊柱各部位の可動性の比較
 課題5 頚部の運動と筋の確認
 課題6 胸・腰椎部の動きと筋の確認
臨床運動学
1. 標準的姿勢アライメント
2. 脊柱の弯曲による姿勢の分類
3. 軟部組織移行部に対するストレスと機能障害
4. 頭部前方姿勢(forward head posture)と機能障害
5. 中部胸椎機能不全(mid-thoracic dysfunction)と機能障害
6. 骨盤前傾姿勢と機能障害
7. 骨盤後傾姿勢と機能障害
8. 側弯症(scoliosis)

運動連鎖
基礎運動学
1. 運動連鎖とは?
2. 荷重連鎖パターン
3. 骨盤の前後傾斜と下肢の回旋運動
4. 骨盤の後方回旋と前方回旋
5. 骨盤の後傾と前傾
6. 股関節の内外転が骨盤移動に及ぼす影響
7. 下肢回旋運動連鎖
8. 下腿と距骨下関節の運動連鎖
9. 距骨下関節の動きと機能的脚長
10. 距骨下関節の動きと歩行における運動連鎖
運動学実習
 課題1 立位で骨盤を移動させた際の運動連鎖の観察
 課題2 足部と下腿の運動連鎖の理解
臨床運動学
1. 座位姿勢の評価(左足関節果部骨折)
2. 立ち直りによる体幹機能評価(左足関節果部骨折
3. 座位姿勢の正中化トレーニング(左足関節果部骨折)
4. 座位での立ち直りの促通(左足関節果部骨折)
5. リーチ動作による動作様式の評価(左足関節果部骨折)
6. 骨盤と体幹の協調性トレーニング(左足関節果部骨折)
7. 立ち直りによる体幹機能評価(左大腿骨転子間骨折術後)
8. 股関節と体幹の協調性トレーニング(左大腿骨転子間骨折術後)
9. 立位における側方への体重移動(右人工骨頭置換術後)
10. 骨盤の側方移動トレーニング
11. 距骨下関節の肢位と下肢長
12. 左足関節果部骨折後のアライメント
13. 左足関節果部骨折後の脚延長
14. 後足部の外反可動域運動
15. 膝蓋腱炎の姿勢特性
16. 合理的な運動連鎖獲得を目的とした協調性トレーニング
17. サイドスクワットによる姿勢変化
18. 合理的な運動連鎖獲得を目的とした協調性トレーニング(フロントスクワット)
19. 合理的な運動連鎖獲得を目的とした協調性トレーニング(サイドスクワット)

姿勢
基礎運動学
1. 用語の定義と生体力
2. 感覚システム
3. 予測的姿勢調節
4. 自動姿勢反応
運動学実習
 課題1 支持基底面、重心の位置関係の分析
 課題2 スリップ発生のメカニズムの分析
 課題3 立位時の感覚条件の違いによる身体動揺性の比較
 課題4 予測的姿勢制御の誘発課題
臨床運動学
1. 神経疾患による異常姿勢および姿勢反応
2. バランス機能の評価

歩行
基礎運動学
1. 歩行周期
2. 歩行周期に伴う各時期の定義
3. 歩行の時間・空間因子
4. 歩行中の関節運動(矢状面)
5. 歩行中の骨盤と下肢関節の運動(前額面)
6. 歩行時の胸郭と骨盤の運動(健常男性30名の平均)
7. 歩行中における骨盤・下肢の運動
8. 基底面と身体重心の移動
9. 下肢アライメントと骨盤移動の関係
10. 歩行中における身体重心偏位の効率化
11. 歩行中の筋活動
12. 歩行中の関節に働く力
13. 関節モーメントの意味するもの
14. 筋活動とモーメントの関係
運動学実習─画像による歩行分析
 課題1 10m歩行テスト
 課題2 映像撮影による歩行分析
 課題3 体重計を用いた床反力の確認
 課題4 床反力ベクトルと関節モーメントの関係の考案
臨床運動学
1. 跛行
2. その他の異常歩行や現象

斜路(屋外)歩行
基礎運動学
1. 斜路歩行での各関節可動域の変化
2. 斜路歩行での筋活動変化
3. 斜路歩行でのエネルギー消費
運動学実習
 課題1 斜面での立位時の身体重心(前後)の変化の確認
 課題2 左右勾配での立位時の身体重心(左右)の変化の確認
 課題3 斜路(上り・下り勾配)歩行時の下肢の筋活動の測定
 課題4 斜路(左右勾配)歩行時の下肢の筋活動の測定
臨床運動学
1. 各疾患における斜路歩行
2. 道路環境

走行
基礎運動学
1. 走行と歩行の相違点
2. 走行の周期
3. 走行時の速度変化
4. 速度とエネルギーの関係
5. 走行のkinematics
6. 支持相における身体重心移動
7. 非支持相における身体重心移動
8. 走行時の筋活動
9. 疾走フォームのチェックポイント
10. エネルギー消費と疲労
11. 小児の走行
運動学実習
 課題1 走行の周期(位相)の確認
 課題2 歩行と走行の比較(1)
 課題3 歩行と走行の比較(2)
 課題4 各関節のkinematicsの確認
 課題5 支持相における身体重心移動の確認
 課題6 非支持相における身体重心移動の確認
 課題7 光学センサーを使用したピッチの計測
 課題8 ジョギング時の速度変化
 課題9 熟練者と非熟練者とのフォームの違い
 課題10 小児の走行
臨床運動学
1. 陸上競技選手の障害部位・内容
2. Overuse
3. 腸脛靱帯炎(ランナー膝)の一例
4. 腸脛靱帯炎(ランナー膝)の一因
5. 走路の影響(コーナー)
6. 走路の影響(路面の傾斜)

車いす移動
基礎運動学
1. 車いすを運動学としてとりあげること
2. 車いすの名称
3. 車いすによる二次障害
4. 車いすの走行性
5. ハンドリムでの推進
6. 下肢駆動
運動学実習
 課題1 ハンドリム接触範囲の以下の条件での確認。乗車位置の変化が車いすの推進動作に及ぼす影響の理解
 課題2 キャスタ上げに相当する状態(バランス点)の確認
 課題3 斜路走行を体験する
 課題4 上肢駆動を体験する
臨床運動学
1. 脊髄損傷
2. 頚髄損傷
3. 片麻痺
4. 車いす処方

投球動作
基礎運動学
1. 投球動作の位相
2. Wind-up期
3. Early cocking期
4. Late cocking期
5. 肩・肘関節にかかる内的モーメント
6. インピンジメント症候群
7. Internal impingement
8. Late cocking期における肘関節へのストレス
9. Acceleration期
10. Acceleration期における肩・肘関節の変位と角度
11. ボールリリースにおける肘関節への伸展ストレス
12. Follow-through期
13. Follow-through期における肩・肘関節への牽引力

跳躍
基礎運動学
1. さまざまな跳躍動作
2. 跳躍・着地動作のkinematics(垂直跳び)
3. 跳躍・着地動作における筋活動
4. 跳躍動作における床反力
5. 着地動作における床反力
6. 下肢の屈曲運動が着地の床反力に及ぼす影響
7. 跳躍動作における下肢関節モーメント
8. 着地動作における下肢関節モーメント
運動学実習
 課題1 反動動作が跳躍の高さに及ぼす影響
 課題2 着地時の下肢屈曲運動が床反力に及ぼす影響
臨床運動学
1. ジャンパー膝
2. ジャンパー膝における着地姿勢
3. 前十字靱帯損傷

寝返り・起き上がり
基礎運動学
1. 寝返り
2. 起き上がり
運動学実習
 課題1 分節的な寝返りの体験
 課題2 脊柱モビリティの効果の確認
 課題3 上肢位置の違いによる力学的有利性の確認
臨床運動学
1. 脊髄損傷
2. 片麻痺
3. その他の疾患

立ち座り─起立着座動作
基礎運動学
1. 端座位からの一般的な起立動作
2. 立位からの一般的な着座動作
運動学実習
条件を変化させた起立動作間の運動力学的比較
課題に必要な準備と撮影
動作の観察・解析・分析
課題動作の解説
 課題1 両足部を半足長引いた姿勢からの起立動作
 課題2 両足部を半足長出した姿勢からの起立動作
 課題3 一側足部を半足長引いた姿勢からの起立動作
 課題4 一側足部を半足長出した姿勢からの起立動作
 課題5 座面高を上げた姿勢(下腿垂直位、高さは任意)からの起立動作
 課題6 両上肢を床面と平行に挙上した姿勢(動作中も床と平行に保持)からの起立動作
 課題7 荷物を背負った基準姿勢からの起立動作
 課題8 両上肢を他者に牽引された起立動作
 課題9 骨盤両外側部に置いたプッシュアップ台を押しての起立動作
 課題10 下腿後面を座面端に押し当て続ける起立動作
 課題11 殿部離床後も膝関節伸展途中まで体幹を前傾・屈曲させ続けた起立動作
 課題12 前方の台に両手部を着き続ける起立動作
臨床運動学
1. 起立着座動作の臨床応用
2. 起立着座動作をトレーニングとして用いるために理解すべき特徴
3. 座面高の変化による負荷量の調整
4. 一側足部位置の前後移動による負荷量調整と荷重を伴う運動学習
5. 一側足部の補高による負荷調整と対側足部への荷重促進
6. 前方の台に両手部を着く起立動作による身体重心前方移動の促進

階段昇降
基礎運動学
1. 階段昇降動作とは
2. 階段昇降動作のバイオメカニクス
3. 階段昇降動作の身体特性
4. 階段昇降動作における下肢の関節角度と下肢関節モーメントの変化
5. 関節モーメントと筋活動との関係
運動学実習
 課題1 昇り動作における下肢筋活動の計測
 課題2 降り動作における下肢筋活動の計測
 課題3 40cmの段差(台)での昇降動作における下肢筋活動の計測
臨床運動学
1. 階段昇降は両脚の共同作業
2. 階段昇降は総合トレーニング
3. 下肢全体の筋力低下の際の降段
4. 二段飛びの功罪
5. 足関節可動域制限時の階段昇段
6. 足関節可動域制限時の階段降段
7. 膝伸展筋不全患者の昇段
8. 膝伸展筋不全患者の降段
9. 下肢伸展共同運動パターンと階段
10. 連合反応による階段昇降制限

杖歩行
基礎運動学
1. 杖の分類と種類
2. 杖の目的・役割
3. 杖のバイオメカニクス
運動学実習
 課題1 杖の高さの違いによる杖使用側上肢の負担(上腕三頭筋の筋活動量)の比較
 課題2 荷重量の違いによる上肢の動揺(負担)の比較
 課題3 荷重量の違いによる上腕三頭筋の筋活動量の比較
 課題4 杖の種類による上肢の負担
臨床運動学
1. 杖の種類選択の基準
2. 杖歩行パターン
3. 杖歩行における肩関節周囲筋の筋活動量
4. 疾患別による杖歩行

腕立て伏せ
基礎運動学
1. 相分け
2. 関節運動
3. 筋活動
運動学実習
 課題1 標準的な腕立て伏せ運動時の関節肢位または関節運動の記述
 課題2 標準的な腕立て伏せ運動時の筋活動を他者が触察により感じ取る
 課題3 標準的な腕立て伏せ運動時の筋活動の計測・解析
臨床運動学
1. 腕立て伏せ運動の種類
2. 腕立て伏せ運動の方法による筋活動の違い

胸郭
基礎運動学
1. 胸郭の解剖
2. 胸郭運動に関係する関節
3. 呼吸と筋
4. 呼吸による横隔膜の定位
5. 呼吸における胸郭の動き(前額面)
6. 呼吸における胸郭の動き(矢状面)
7. 胸郭の動きと模式図
8. 呼吸時の横隔膜と腹筋群の働き
運動学実習
 課題1 体表面からみた肺の位置と動きの確認
 課題2 肋骨と胸骨の動きの観察
 課題3 安静時自発呼吸の観察
 課題4 呼吸筋および呼吸補助筋の触診
臨床運動学
1. 胸郭と脊柱の変形
2. 不良姿勢と横隔膜
3. 呼吸リズムとその異常
4. 努力呼吸
5. 奇異呼吸
6. Hoover徴候

コラム1 大腿骨頭の中心性移動(migration)と関節可動域の低下
コラム2 膝関節側方不安定性
コラム3 膝関節後方不安定性
コラム4 関節リウマチにおける術前の膝屈曲拘縮(人工膝関節全置換術後の膝自動伸展不全)の原因
コラム5 関節リウマチ患者の階段降段動作と降段動作困難の原因
コラム6 関節リウマチ外反扁平足と足部(中・後足部)の手術、およびwindlass actionと逆windlass action
コラム7 関節リウマチの軸椎垂直亜脱臼
コラム8 関節リウマチの環軸関節前方亜脱臼
 人の運動機能を対象とする理学療法士や作業療法士にとって、解剖学や生理学などの基礎医学を基盤として、生体運動を物理学の視点から捉える力は必須の能力である。このため評価や治療の中核となる運動学は、臨床と教育のいずれにおいても重要な位置を占める。
 療法士に対する運動学の教科書として長く用いられてきた良書があるが、基礎となる正常運動の理論に対し、これを確認する実習とともに臨床における病態運動学を関連づける教科書がこれまで存在しなかった。卒前教育では運動学実習と臨床運動学が運動学の理解を促進することから、新たなテキストの必要性を感じてきた。そこで我が国に理学療法士と作業療法士が誕生して半世紀を経たいま、療法士自らが基礎と臨床を結びつける運動学の教科書を作成するべく、本書の発刊を企画した。
 本書の構成は総論として運動学の定義、kinematics とkinetics の概説と実習課題を示した。さらに運動学習は基礎と実習、臨床に分けて解説し、運動分析についてもその目的と手法を示した。各論では第一に四肢と脊柱、頭部と胸郭の運動学をそれぞれ、基礎、実習、臨床の項目に分類し、相互の関連を理解しやすいように解説した。第二に全身の運動が関与する姿勢と運動連鎖については、章を設けて局所との関連を含めて詳述した。第三として理学療法士や作業療法士が評価や治療の対象とする動作のメカニズムについても、基礎と臨床が結びつく構成とした。動作の対象は寝返りや立ち上がりなどの基本動作をはじめ、重要度の高い歩行と屋外歩行、階段昇降や杖歩行、車いす移動についての章を設け、さらに走行や跳躍、投動作なども取り入れた。全章を通して基礎医学や臨床医学などの関連領域の知識に関する記述は最小限に止め、運動学の講義と実習に関する内容に集約した。また、できる限り図表を用い、明解な解説を行うことを心がけた。さらに実習の項では、運動の三次元的な理解を深めるため、模型による確認や生体における運動課題を示した。
 前述の如く、療法士の視点から編集・執筆した本書が、今後、療法士を目指す学生の運動学教育に貢献することを心より期待している。
 本書は編者らの責により、企画から出版までに想定以上の時間を要した。その間、常に献身的な支援を頂いた金原出版編集部の鈴木素子氏、ならびに前専務の小林一枝氏に深甚なる謝意を申し上げる。

平成26年12月

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