半月板−Save the Meniscus2026
I 半月板の基礎
半月板の歴史
新井 祐志
半月板の発生・付着・血管・神経支配−その解剖学的構造の全体像
室生 暁
半月板のバイオメカニクス
大堀 智毅
変形性膝関節症と半月板
佐々木 英嗣
II 損傷半月板の診断と治療の現状
半月板損傷の臨床診断−特徴的症状と身体所見の意義
中川 裕介
半月板損傷の画像診断
長井 寛斗
本邦における半月板損傷治療の現状
田島 卓也
半月板切除術とその予後
小川 宗宏
III 半月板修復術の基本手技
半月板縫合術−inside?out法
中瀬 順介
半月板縫合術−outside-in法
田代 泰隆
半月板縫合術−all-inside法
高木 博
半月板円周線維補強術(mCFA)
北 圭介
IV 靱帯損傷に伴う半月板の治療
Ramp lesionの病態と治療
畑山 和久
膝靱帯損傷に伴う半月板の治療−外側半月板損傷に対する縫合術
塩泡 孝介
陳旧性ACL損傷に伴う内側半月板断裂の治療
武冨 修治
V 円板状半月板の治療
外側円板状半月板の自然経過と下肢アライメント
加藤 有紀
不完全型円板状半月板損傷の治療
木村 由佳
円板状半月板に対する形成的部分切除・縫合術
橋本 祐介
切除を伴わない円板状半月板縫合術
鈴木 智之
VI 変性半月板損傷に対する治療
内側半月板後根断裂の病態と治療戦略
平中 孝明
内側半月板水平断裂
柳澤 真也
変性半月板損傷に対するcentralization法
古賀 英之
変性半月板損傷に対するarthroscopic belt capsulodesis
中山 寛
VII 修復困難例・切除例に対する治療
変性半月板損傷に対する半月板治療と骨切り術
小川 寛恭
半月板切除後に対する自家腱を用いた半月板再建術
石川 正和
半月板切除膝に対する同種半月板移植術
内尾 祐司
修復困難な半月板損傷に対する細胞治療−滑膜幹細胞による再生医療
大関 信武
修復困難な損傷・変性半月板損傷に対するシルクエラスチンRを用いた治療
猫本 明紀
人工半月板の現況
大槻 周平
半月板は、膝関節の大腿骨と脛骨の間に介在する三日月型の線維軟骨組織です。かつては「機能のない遺残組織」と見なされ、安易に切除術が行われていた時代もありましたが、現在では、荷重の伝達・分散、軟骨への栄養・潤滑、そして関節の安定化を担い、膝関節の恒常性と機能維持に不可欠な存在であることが広く認識されています。
本誌『整形・災害外科』において、2020年に「半月板―Save the Meniscus」と題した臨時増刊号を発刊してから約6年が経過しました。当時既に、半月板切除が将来的な二次性変形性膝関節症の原因となることから、「Save the Meniscus」のスローガンのもと、治療の主体は切除から修復へと大きくシフトしていました。本邦に多い外側円板状半月板損傷が若年者の関節変形を招くことや、前十字靱帯損傷に合併する半月板損傷が術後の不安定性に関与すること、さらに中高齢者に生じる内側半月板後根断裂(MMPRT)が膝軟骨下脆弱性骨折(大腿骨内顆骨壊死)の誘因となることなど、その重要性は繰り返し強調されてきたとおりです。
しかし、この数年における本分野の進歩はさらに目覚ましく、当時「困難」とされていた課題に対しても新たな光が差し込んでいます。診断技術の向上により、変形性膝関節症の発症・進行に深く関与する半月板逸脱(meniscal extrusion)の病態解明が進み、その対策も議論されるようになり、このような変性半月板は、単なる局所損傷ではなく変形性膝関節症の一病態として捉えるべきと考えられています。また、手術器械の進化のみならず、新たな手術手技の開発によって、従来は縫合困難とされた部位や複雑な損傷形態に対しても、より確実な修復が可能となりつつあります。さらに、修復不能例や切除例に対しても、再生医療をはじめとする新規治療が試みられ、着実に臨床応用の段階へと進んでいます。
今回の2026年版特集号では、これらの最新知見を網羅しつつ、半月板の基礎的な解剖・生体力学から、臨床および画像診断法、そして最先端の治療戦略までを俯瞰できる内容を目指しました。「Save the Meniscus」という理念は、新たなエビデンスと技術の積み重ねにより、日々進化を続けています。
本特集を一人でも多くの先生方にご一読いただき、明日からの診療にお役立ていただくことで、患者さんの膝関節機能を守る一助となることを切に願っております。
2026年4月
弘前大学整形外科
石橋 恭之