眼科
主訴と所見からみた眼科common disease
2018年09月臨時増刊号(60巻 10号)
企 画 |
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定 価 |
9,350円 (本体8,500円+税) |
在庫状況 |
あり |
巻頭言
『眼科』編集委員会
I 主訴からみた診断の進め方
1 見辛さ
飯島 裕幸
2 急な視力低下
若林 美宏
3 霧視
秋山 英雄
4 視野異常
飯島 裕幸
5 色の見え方の異常
中村 かおる
6 変視
岡本 史樹
7 羞明
松原 央
8 光視症/閃輝暗点
國吉 一樹
9 飛蚊症
石龍 鉄樹
10 複視
飯島 裕幸
11 頭位異常
森澤 伸・長谷部 聡
12 眼痛
清澤 源弘・小町 祐子
13 開瞼困難
山上 明子
14 眼脂
江口 洋
15 流涙
白石 敦
16 眼の乾燥感/異物感
柿栖 康二・堀 裕一
17 眼の掻痒感
福田 憲・熊谷 直樹
18 眼精疲労
海道 美奈子
II 所見からみた診断の進め方
1 眼瞼・眼窩・涙道・涙器
1) 眼瞼腫瘤
小幡 博人
2) 眼瞼下垂
中山 知倫・渡辺 彰英
3) 涙腺部腫脹
田邉 美香
4) 眼球突出/陥凹/偏位
山上 明子
5) 通水不良
小門 正英
6) 涙嚢腫脹
宮崎 千歌
7) 涙点の異常
佐々木 次壽
2 ぶどう膜炎・前房・硝子体
1) 前房内炎症
慶野 博
2) 狭隅角/浅前房
栗本 康夫
3) 虹彩の異常
竹内 大
4) 硝子体混濁
冲永 貴美子・蕪城 俊克
5) 隅角の異常
岩田 大樹・南場 研一
3 眼位異常
1) 外斜視
宇井 牧子・根岸 貴志
2) 内斜視
吉田 朋世・仁科 幸子
3) 上下斜視/回旋斜視
林 孝雄
4) 麻痺性斜視・機械的斜視
岡本 真奈・木村 亜紀子
4 視神経
1) 乳頭陥凹拡大
安樂 礼子
2) 乳頭発赤/浮腫
栗本 拓治
3) 乳頭蒼白/萎縮
水野 嘉信・溝田 淳
4) 大乳頭・小乳頭
栗本 拓治・中村 誠
5 角結膜
1) 結膜隆起病変
山田 昌和
2) 角膜浮腫
天野 史郎
3) 角膜実質混濁
崎元 暢
4) 角膜形状異常
神谷 和孝
5) 点状表層角膜症(SPK)
細谷 友雅
6) 結膜下出血/充血
井上 智之
7) 結膜の乳頭/濾胞
山田 潤
6 水晶体
1) 水晶体混濁
松島 博之
2) 水晶体脱臼/IOL脱臼
國重 智之・小早川 信一郎
3) 落屑物質・水晶体沈着物質
久保 江理
7 網膜硝子体
1) 網膜剥離
今永 直也・古泉 英貴
2) 網膜出血
村岡 勇貴
3) 網膜の白色病変
高橋 寛二
4) 黄斑浮腫
篠原 洋一郎・秋山 英雄
5) 硝子体出血
林 篤志
6) 網膜の菲薄化
尾花 明
7) 眼底の色素性病変
古田 実
8 その他
1) 半盲性視野異常
石川 裕人
2) 眼振
三村 治
3) 瞳孔異常
前久保 知行
4) 高眼圧
徳田 直人
巻頭言
眼科には多くの画像診断機器があり、それによって遠隔診療も可能です。たとえばいくつかの黄斑疾患は、患者さんを実際に診察しなくても、眼底写真やOCT像、自発蛍光像だけで診断することも可能です。しかし、日常よく遭遇する結膜、眼瞼疾患や屈折異常など多くの眼科common diseaseでは、症状をていねいに聞き出し、正確な所見をとるという基本が、正しい診断のためには重要です。これは研修医時代に鍛えられた内科診断学に通じるところがあります。今回の特集ではそのような眼科診断学の極意を専門家の先生方に解説いただきました。
日常眼科臨床における患者さんからの訴え、すなわち主訴、症状の内容はさまざまです。視覚に関係する見辛さが多いですが、それだけではなく、眼痛、異物感、眼精疲労、眼脂、かゆみ、涙に関する訴えなどもあります。たとえば患者さんの訴える「見辛い」を「視力低下」と解釈したのでは、正しい診断につながらないことがあります。「見辛い」と訴えた患者の矯正視力が1.0であったからといって、「あなたの視力は正常ですよ」という対応では患者の信頼を失うことになります。「見辛い」との訴えの内容として、遠方矯正視力の低下以外に、近方視力低下、変視症、傍中心暗点、羞明、眼鏡不適合による眼精疲労などが含まれていることが少なくありません。
本書の第一部では、「主訴からみた診断の進め方」として、患者さんの主訴の正しい評価とその後の診断の進め方に関して、眼科common diseaseを念頭に置いた解説をお願いしました。それぞれの項目についてまず診察上の要点をクリニカルポイントとして書き出してもらっています。さらに主訴の正しい把握と診断の進め方を中心に解説されています。たとえば複視はよくある主訴ですが、患者さんの言う「ものが二つに見える」というのは眼球運動障害による真の複視以外に、老視や屈折異常によるぼやけのことも少なくありません。また「見えないところがある」というのは暗点の場合のみならず飛蚊症のこともあります。このようなあいまいな患者さんの訴えから正しく症状を把握する必要があります。診断にはこのような症状の正確な聴取とともに検査による所見の把握が重要ですが、視診など診断機器を使用しない検査法と特殊検査ではない一般眼科検査機器を利用しての診断のコツも理解していただきたいと思います。
本書の第二部では「所見からみた診断の進め方」として、解剖学的な眼球および付属器のパーツごとに、日常診療でよく遭遇する他覚的所見の診方と病態、鑑別診断、関連する検査について解説してあります。また適宜、OCT、造影検査、MRIなど特殊検査所見とその診方についても触れています。
本特集号は眼科common diseaseの診断学を中心に解説し、治療については必要最小限にとどめています。詳しくは他の解説書を参考にしていただきたいと思います。
平成30年9月末日
『眼科』編集委員一同