眼科

眼科と薬剤

2019年09月臨時増刊号(61巻 10号)

企 画
定 価 9,350円
(本体8,500円+税)
在庫状況 あり
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特集 眼科と薬剤
巻頭言
『眼科』編集委員会
第1部 最近の眼科薬物治療
I.結膜、角膜、涙道
1.ドライアイ
内野 裕一
2.感染性結膜炎
内尾 英一
3.アレルギー性結膜疾患
福島 敦樹
4.ヘルペス角膜炎
熊倉 重人
5.細菌性角膜炎
戸所 大輔
6.真菌性角膜炎
江口 洋
II.水晶体(白内障)
1.白内障の薬物治療
久保 江理
2.白内障手術周術期の薬剤
大関 尚行
3.老眼治療の可能性
常吉 由佳里
III.緑内障
1.プロスタノイド受容体作動薬
相原 一
2.交感神経β受容体遮断薬
柏木 賢治
3.炭酸脱水酵素阻害薬
太田 友香
4.交感神経α2受容体刺激薬(ブリモニジン)
坂上 悠太
5.ROCK阻害薬
井上 俊洋
6.副交感神経刺激薬
川瀬 和秀
IV.ぶどう膜
1.ベーチェット病
馬詰朗比古
2.Vogt-小柳-原田病
高瀬 博
3.感染性ぶどう膜炎(梅毒、結核、トキソプラズマ)
慶野 博
V.網膜疾患
1.黄斑浮腫の抗VEGF剤治療
小暮 朗子
2.血管新生性疾患の抗VEGF剤治療
大中 誠之
3.近視性黄斑症の抗VEGF療法
大西 由花
4.硝子体手術における術中使用薬剤
中野 裕貴
5.加齢黄斑変性に対するサプリメント
小沢 洋子
VI.眼瞼・眼窩
1.特発性眼窩炎症
澤村 裕正
2.甲状腺眼症の眼瞼に対する局所療法
岡本 真奈
3.IgG4関連疾患
高比良 雅之
VII.神経眼科疾患
1.特発性視神経炎(抗AQP4抗体陽性、CRIONを除く)
前久保 知行
2.抗AQP4抗体陽性視神経炎
植木 智志
3.慢性再発性炎症性視神経症(CRION)
山上 明子
4.甲状腺眼症に対する全身薬投与
伊藤 学
5.眼筋型重症筋無力症(タクロリムス)
一色 佳彦
6.斜視に対する局所薬剤投与
木村 亜紀子
7.調節麻痺剤
彦谷 明子
第2部 薬物治療の副作用
1.眼科で使用するマイトマイシンCの副作用
辻 英貴
2.S-1の副作用
藤本 雅大
3.眼瞼痙攣を生じる薬剤
鈴木 幸久
4.原発閉塞隅角症(緑内障)に影響を与える薬剤
西田 崇
5.黄斑浮腫を生じる薬剤
石龍 鉄樹
6.網膜色素上皮を障害する薬剤
篠田 啓
7.網膜循環障害を生じる薬剤
喜田 照代
8.ステロイドの副作用としての中心性漿液性脈絡網膜症と抗アルドステロン薬による治療
松本 文也
9.眼科で使用する生物学的製剤の副作用
中井 慶
10.眼科で使用する免疫抑制薬(シクロスポリン)の副作用
楠原 仙太郎
11.新規薬剤による視神経症
栗本 拓治
巻頭言

眼科は外科系診療科ですが、手術治療やレーザー治療と並んで薬物治療は、日常の外来診療の主役です。本書の第1部では、最近の薬物治療のトピックを交え、眼科各分野で近年明らかにされてきた眼疾患の病態に基づいた薬物治療を分野別に解説いただきました。
 なかでも、ドライアイは診断基準が近年改訂され、その考え方を基本にしたTFOT(tear film oriented therapy)の治療理論をまず紹介いただきました。その理論に基づいて、いくつかの作用機序の異なる新規ドライアイ点眼治療薬を適切に選択する際、お役に立つ内容となっています。
 緑内障における眼圧下降を目的とした点眼薬は、これまでにもさまざまな種類があり、患者さんの病態と進行度に応じて、どのようにこれを組み合わせるかという判断をする必要がありました。最近の数年間でROCK 阻害薬やプロスタノイドEP2受容体作動薬といった新規の作用機序による薬も新たに加わり、さらに複雑さが増していますが、それらの作用機序を点眼薬の種類別にわかりやすく解説いただいています。緑内障治療薬は生涯にわたって使用する必要があることから、個々の薬剤に特徴的な副作用についてもよく理解して、患者さんに合った選択をする必要があるでしょう。
 ぶどう膜炎に対する薬物治療は長い間、ステロイド薬が中心でしたが、免疫抑制剤や生物学的製剤であるTNFα阻害剤が使用できるようになり、治療の選択肢が拡大しました。ステロイド緑内障や長期のステロイド投与による副腎皮質抑制などの厄介な副作用に対処できるようになりました。
 網膜硝子体疾患はレーザー治療と手術治療が主役でしたが、抗VEGF 剤硝子体注射が広く利用できるようになり、新生血管に基づく病態や黄斑浮腫に対する低侵襲の治療が可能になりました。ただし1回の治療で完治するわけではなく、繰り返し投与する必要があり、その際の再注射や投与終了の判断に、OCT などの画像診断の知識が重要となってきます。
 薬剤の知識として薬物治療の知識と並んで、副作用に関する知識は重要です。眼科で使用する薬剤の副作用にとどまらず、全身性疾患に伴って、種々の眼合併症が知られるようになってきました。
 他科の悪性腫瘍に対する治療成績の向上によって生存率が延長してきたことで、抗がん剤による眼合併症に遭遇する機会が増えています。眼症状を訴える高齢の患者では、そのような既往歴と使用中の抗がん剤について聴取して、原因を判断する必要があります。
 クロロキンは網膜色素上皮に対して親和性があり、かつてクロロキン網膜症という歴史的に有名な薬害が社会問題になりました。最近、全身性エリテマトーデス治療薬として使用されるようになってきたヒドロキシクロロキンについては、結核に対するエタンブトール視神経症と同様、眼科医による注意深い経過観察のもとで使用してもらう必要があります。
 本書が読者の皆様方の診療のお役に立つことを、編集委員一同、念願しております。

2019年10月
『眼科』編集委員会