眼科
眼科救急疾患2020
2020年10月臨時増刊号(62巻 11号)
企 画 |
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定 価 |
9,350円 (本体8,500円+税) |
在庫状況 |
あり |
巻頭言
I 眼外傷
1.眼瞼裂傷(涙小管断裂を含めて)
大山 泰司・渡辺 彰英
2.眼窩吹き抜け骨折(眼窩壁骨折を含めて)
古田 実
3.眼球打撲
佐藤 信之
4.眼球破裂、眼球穿孔
森川 翔平・岡本 史樹
5.眼内異物
白木 彰彦・坂口 裕和
6.外傷性視神経症
恩田 秀寿
II 角結膜
1.結膜疾患(結膜下出血・異物・裂傷)
三村 達哉
2.角膜異物
細谷 友雅
3.角膜外傷
崎元 暢
4.化学外傷
柿栖 康二・堀 裕一
5.感染性疾患
稲田 紀子
6.コンタクトレンズ関連疾患
土至田 宏
7.円錐角膜における急性水腫
原 雄将・山上 聡
III 水晶体
1.チン小帯断裂、水晶体偏位・脱臼、外傷性白内障
西村 栄一
2.眼内レンズ偏位
松島 博之
3.外傷性水晶体破裂
岡田 由香・雑賀 司珠也
IV ぶどう膜
1.白内障術後眼内炎
馬詰 和比古
2.急性前部ぶどう膜炎
武田 彩佳・堀 純子
3.Vogt-小柳-原田病
岩田 大樹
4.急性網膜壊死
高瀬 博
5.ぶどう膜炎に伴う続発緑内障
眞下 永・大黒 伸行
V 緑内障
1.原発閉塞隅角症(緑内障)の急性発作
北村 一義・柏木 賢治
2.濾過手術後の浅前房(悪性緑内障を含めて)
酒井 寛
3.濾過手術後の感染症
山本 哲也
4.水晶体に起因する高眼圧
庄司 信行
VI 神経眼科
1.視神経炎
植木 智志
2.虚血性視神経症
松本 直
3.鼻性視神経症
中澤 祐則
4.眼運動神経麻痺
中野 絵梨
5.眼窩先端症候群
加島 陽二
6.眼窩筋炎
岩佐 真弓
VII 網膜硝子体
1.黄斑剥離の網膜剥離
西塚 弘一
2.黄斑未剥離の網膜剥離
厚東 隆志
3.牽引性黄斑剥離を伴う増殖糖尿病網膜症
國方 彦志
4.強度近視眼の黄斑円孔
松前 洋・森實 祐基
5.血管新生緑内障
辰巳 智章
6.水晶体核落下
岩瀬 剛
7.急性網膜壊死に伴う網膜剥離
寺尾 亮・小畑 亮
8.網膜中心動脈閉塞症
田中 慎
9.黄斑浮腫を伴う網膜中心静脈閉塞症
村岡 勇貴
10.急性黄斑下出血
井上 麻衣子
11.原因不明の硝子体出血
本田 茂
12.駆逐性出血
井上 真
VIII 眼付属器感染
1.眼窩蜂巣炎
戸所 大輔
2.急性涙嚢炎
鎌尾 知行
先生方は初めての一人当直で、次はどんな疾患が来るんだろうと足が震えた経験をお持ちではないだろうか。通常の診察時間内と異なり頼りになる上司、経験豊富な視能訓練士、まして同期もおらずたったひとりである。そういう時に限って重症な眼科救急患者が来院、もしくは搬送、依頼される。辛うじて診断がついても次にどうしたらよいかわからないうえ、技術が追いつかない。私自身、初当直、初患者は外眼筋が嵌頓した眼窩吹き抜け骨折であった。他科からの依頼で、当時視束管骨折疑いとして依頼された。それは患者が外傷を受けたほうの眼が見えにくいといったことに始まった。冷静になりRAPDが陰性であることを確認し、眼球運動に明らかな制限があることが判明した。当時はCTですら一般的ではなく、他科の医師からは単純X線の視束管撮影もせずにわかるんですか、と問いただされた経験がある。また先輩の話を聞くと、初当直で出血性結膜炎を入院させたというエピソードを聞いたこともある。
このように時間外診療時の眼科救急疾患は限りない。当時と比較し現在は性能の良い超音波やOCT、またMRI、CTを用い瞬時に、確実に診断がつくことも多いが、多くの眼科救急疾患患者は診察部屋、検査、診察時間が限られており時間をかけている暇もない。また即、手術、治療に入る疾患がほとんどであり、自分の目と経験、知識
がすべてである。さらに外傷や事故に伴う眼科救急疾患では医療訴訟そのものも多く、診断のみならず記録や適切な処置に関しても片時も緊張が解けない。
こうした背景のもと本書は眼外傷、角結膜、水晶体、ぶどう膜、緑内障、神経眼科、網膜硝子体、眼付属器感染に分類し専門家に執筆をお願いした。各分野で代表的かつ頻度の高い疾患を紹介頂いた。もちろん、眼科救急疾患を診察するのは冒頭の夜の一人当直時だけではなく、自身のオフィスにおいてたったひとりで診療にあたり治療に悩む救急疾患は少なくないと考える。眼科救急疾患も近年の検査の進歩により、その病態、原因が判明した疾患が多く、治療法も日進月歩である。以前は禁忌であった治療も今では積極的に用いられることも多い。本書は疾患別に救急診療のポイントが示され、時間のない先生にはそこを読むだけでも勉強になり、さらに細かな診断法、治療等必要な際は本文を熟読していただくと、眼科救急疾患も怖くなく立ち向かっていけるようになっており、まさに経験に知識が追加される。すぐ手の届くところに本書を置いて、日々の診療に役立てて頂きボロボロになるまで、読み込んで頂ければ幸いである。
2020年10月
『眼科』編集委員会
石川 均・記