特集 高難度肝胆膵外科手術アトラス2022
I.総論
1.肝臓の外科解剖
進藤 潤一
2.胆道の外科解剖
野島 広之
3.膵臓の外科解剖
村田 泰洋
4.肝胆膵外科手術におけるシミュレーション・ナビゲーション
柴田 英貴
5.肝切除における手術記録の要点とコツ
阪本 良弘
6.胆道手術における手術記録の要点とコツ
堀 周太郎
7.膵切除における手術記録の要点とコツ
入江 彰一
II.各論
A.肝臓
1.基本手技(1)−肝切除における術中超音波
有田 淳一
2.基本手技(2)−CUSA法による肝離断
小倉 俊郎
3.基本手技(3)−Clamp crushing法による肝離断
竹村 信行
4.基本手技(4)−Glisson鞘一括処理
大坪 毅人
5.肝右葉切除
相山 健
6.肝左葉切除
山本 栄和
7.肝前区域切除
佐野 圭二
8.肝後区域切除
原 貴信
9.腹腔鏡下肝区域・亜区域切除
新川 寛二
10.腹腔鏡下肝葉切除
片桐 弘勝
11.ALPPS手術による2期的肝切除
田中 邦哉
12.肝静脈・下大静脈の合併切除再建を伴う肝切除
貞森 裕
13.生体肝移植ドナー手術(右葉グラフト)
副島 雄二
14.生体肝移植レシピエント手術
高槻 光寿
B.胆道
1.肝右葉切除・肝右三区域切除+肝外胆管切除
鈴木 大亮
2.肝左葉切除・肝左三区域切除+肝外胆管切除
水井 崇浩
3.血管合併切除を伴う胆道癌手術
水野 隆史
4.胆嚢癌に対する肝切除
三浦 宏平
5.肝膵同時切除(HPD)
松山 隆生
C.膵臓
1.切除企図膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除
元井 冬彦
2.血管合併切除を伴う膵頭十二指腸切除
浅野 賢道
3.腹腔鏡下膵頭十二指腸切除
仲田 興平
4.郭清を伴う完全術者切離型ロボット支援下膵頭十二指腸切除
永川 裕一
5.膵癌に対する膵体尾部切除
大島 稔
6.腹腔動脈幹切離を伴う膵体尾部切除(DP-CAR)
佐藤 崇文
7.腹腔鏡下膵体尾部切除
武田 裕
8.膵癌に対する腹腔鏡下脾合併膵体尾部切除(Lap-RAMPS)
川畑 康成
9.ロボット支援下膵体尾部切除
高 済峯
10.膵全摘(残膵全摘も含む)
大塚 新平
11.膵腸吻合
木村 七菜
12.膵胃吻合
向井 洋介
今回の臨時増刊号では「高難度肝胆膵外科手術アトラス2022」を企画しました。それぞれのエキスパートの先生方に総論7本、各論31本(肝臓14本、胆道5本、膵臓12本)の素晴らしい原稿をご執筆いただきました。
同様の企画を数年ごとに発行してきましたが、今回の各論では低侵襲手術に関する話題が充実しています。高難度手術の多い肝胆膵外科では手術の定型化が難しく、消化管外科と比較し、低侵襲手術の導入が遅れていました。一部施設で生じた手術関連死亡の報道を契機に、わが国独自の安全性に配慮した術前前向き登録制度が関連学会・研究会主導で設立されました。その結果、肝胆膵外科手術における内視鏡外科手術の安全性が示され、現在、多くの高難度肝胆膵外科手術が低侵襲手術により行われています。当初は試行錯誤であった手技も多くの経験により、開腹手術と同様に定型化されつつあります。過去のシリーズで取り上げられた定型手術に加え、腹腔鏡下肝・膵切除も開腹手術とほぼ並列となるようにしました。また、新たに保険収載されたロボット支援下膵切除も加えました。
高難度手術の多い肝胆膵外科手術ですが、総論ではその基礎となる外科解剖および最近の進歩が著しいシミュレーション・ナビゲーションをご解説いただきました。腹腔鏡手術が多く行われるようになり、より細かな外科解剖が必要となりました。日常診療で定着したシミュレーションソフトは、得られた詳細な外科解剖の情報を実際の手術においてどのように活かすか、において非常に重要です。また、その精緻な手術を手術記録に残すことは、外科医が何を考え、どのように手術を行ったかを残す唯一の手段であり、再切除の機会の多い肝胆膵外科における重要な情報となります。わが国の肝胆膵外科領域における手術記録は、文字だけでなく描画(イラストレーション)で伝えることが特徴であり、世界的にも評価されています。そこで、今回は手術記録の達人たちに、総論でその極意をご執筆いただきました。
定番の手術においても使用するデバイスや手術を取りまく周術期治療などの環境により、少しずつ変化があるものです。最新の「高難度肝胆膵外科手術アトラス2022」が皆様の手術の一助になることを期待しています。
2022年3月
「手術」編集委員
齋浦 明夫
順天堂大学肝胆膵外科教授